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出来る奴がリスクになる、組織の病いに打ち勝つ!

SPECIAL

組織の成長加速コンサルタント

株式会社グロースサポート

代表取締役 

組織の成長加速を促し、業績躍進を実現させる辣腕コンサルタント。これまで130社以上の企業において、経営者のコンサルティング、経営幹部、経営リーダーの育成に携わる。組織とリーダーの成長段階を知り尽くし、経営者と同じ目線で語ることのできる希有なコンサルタントとして活躍中。

社会の構造変化に合わせて、その会社は急速に業績を拡大していました。ところが、その事業の核がたった一人の社員に委ねられていたのです。

ある日、その事業の担当取締役であるMさんが「木村先生、Yが辞めたいって言ってきまして。」とオロオロしながら話し始めました。Yさんというのが、その事業の核を握る30代の男性でした。

M取締役は、そのYさんのことをとても買っていて、「次の期には部長にしたい、部長になれば、社内で最年少部長です。」とまで言っていたのです。「Yにだけにしかできない。」「Yは、そのことに気がつく。」「Yがやると、精度が違う。」「Yみたいなとても社員が増えるといい。」と、Yさんの話になる度に、M取締役からは、Yさんを大絶賛していました。

 


 

初回の面談時に、M取締役から組織構成、事業内容の共有を受けていた時に、Yさんの役割も聞きました。

私は、M取締役に「Yさんお一人でやっているのですか?」と確認しました。M取締役は、「これは、Yにしかできないのですよ。」と涼しい顔でした。

私は、M取締役に図を書きながら、如何にYさん一人でやることに、リスクがあるかを説明していきました。そして、対処法として、2つのステップでシステム化することを提案したのです。

ところが、M取締役は意に介しませんでした。「木村先生、Yなら大丈夫です。彼女ほど信頼できる人にはあったことがありません。責任感があるんです。ある時なんか、38度もあるのに、午後から会社に出てきて、2日分の仕事、3時間でやってのけました。」と。

 


 

業種業態を超えて、Yさんのような役割をする社員が会社にいます。社内では、なかなかこのできる社員のリスクに気づくことがないのです。

伸びる会社ほど、このリスクを抱えるわけですが、昨日と今日で、売上げが2倍になるわけではないので、このリスクが顕在化してこないのです。しかし、これは当に、言葉通り、病気のように、徐々に確実に組織の未来を蝕んでいくのです。

この点は、社長は認識していて、M取締役にも対処をするように促しているとのことでしたが、2年たっても変わっていなかったのです。

 


 

そして、冒頭のやりとりです。

私はM取締役に、今こそ対処の時として、2ステップで対処することを実行することを提案しました。Yさんの前任者は沢山いたのですが、全員退職していました。Yさんの業務内容を一番理解している人は、M取締役でした。

M取締役は、この事業が始まって間もなく、Yさんの業務を5年ほど担当していたのです。M取締役がこの業務から離れる時、売上は現在の半分以下の15億円程度でした。当時40億を超えていました。

M取締役も、「(自分では)絶対にYと同じことはできない。」と念仏のように言っていましたが、風雲急を告げているため、M取締役にはプロジェクトリーダーになってもらいました。

まず、社内で適任者となり得る人を3人集めることにしました。2ステップでシステム化に向かって動き出しました。

1.3ヶ月でYさんを作業から離れてもらい、監督業務に徹してもらうこと。

2.同時並行で、システムの設計に取り組み1年後からシステムの導入に踏み切ること。

当時は、AIがなくて苦労しましたが、今なら、AI使えば、半年でシステムは組めたかもしれません。

 


 

その後、会社の業績は、更に倍となり、80億円を優に超えています。上場に向かってひた走っています。

M取締役は後日、教えてくれました。“Yさん一人に委ねてはまずい、今すぐ変えなければならない。”と覚悟を決めたのは、私からの問いかけだったそうです。

「今、これを変えなければ、上場するにあたって、最大の障害をMさん自身が創ることになる。それでもいいのですか?」と問われた時に、我に返ったとのことでした。

M取締役には夢があったのです。M取締役は、8年前のある日、この会社にアルバイトとして入社して、半年後に社員となりました。

会社の事業の急拡大に合わせて、多くの仲間との出会いと別れがあったそうです。大変な時期を乗り越えて、一緒に頑張ってきた仲間が誇れる会社を作りたい。というのがM取締役の夢でした。

M取締役の覚悟が決まって、“出来る奴がリスクになる、組織の病い”に打ち勝つことができました。

 


 

かつて、経営の神様と称されたジャック・ウェルチが「経営とは、中長期の目標と短期的な目標の相反することを実現することだ。」という旨の発言をしています。裏を返せば、多くの経営者が知らず知らず、どちらか一方に傾きがちということでもあります。

もし、あの時に、中長期の目標を見ないまま、小手先の対応をしたならば、今の時点で、この業績はありません。大きな周り道をすることになっていたはずです。経営の中枢にいる者は、長期も短期もどちらも見ることを常に忘れてはならない。

当たり前のことですが、常に確認したい視点です。

 

 

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