営業、企画、コンサル、施工管理など、どのように応用性が高い業務を社員がこなせるようにするのか?
マーケティング関連サービスを展開するH社は、「コンサルタントの量産」のための仕組化を進めていました。
H社長は、言いました。
「先生、当社の社員には、今までかなり難しいことを要求してきたことが解りました。」
これは多くの社長が持つ感想です。色々なものが整備されてくると、「いままでこれら無しで、よくやってきたものだ」と気づくのです。
続けて、H社長は、ここに来て湧いてきた疑問をぶつけます。
「先生、仕組みを整備すれば、どんな社員でもコンサルタントの業務がこなせるようになるのでしょうか?」
私は少し間を置き答えました。
「それは無理でしょうね。仕組みを整備したとしても、今の御社のメンバーの半分はコンサルティング業務をこなせないでしょう。」
年商数億から10億に進むときに、会社は分業を取り入れます。
そして、規模の拡大と共に、分業化を更に進めていきます。
その分業には、「横」と「縦」があります。
横とは、営業、企画、製作、管理という機能の分業を指します。
そして、縦とは、下から作業層、判断層、管理者層、経営層と大きく四階層の機能の分業を指します。
其々の業務を「分ける」ことにより、その業務の『特徴』がより見えるようになります。
営業とはどのような業務か、製作とはどのような業務か、そして、管理部とは。
それは、そこにどのような人が必要かを、明確にすることになります。
営業部署の社員には、明るさ、共感性、〇〇の知識
製作部署の社員には、正確さ、論理性、そして、▢▢のスキル。
また、それぞれの業務の難易度付けが可能になります。
営業業務の難易度は中、企画の難易度は高、製作の現場の難易度は低。
ここまで来ると、適材適所が可能になります。
能力の高い人材を、それを必要とする部署に優先的に回すことができます。また、新人や短時間労働者でも出来る業務を作り出します。そして、その育成期間も短くなるのです。また、外注業者の活用の幅が広がることになります。
結果的に、適材適所により総人件費を抑える効果があります。
優秀な人材に重要な業務を与え、高い生産性を上げてもらいます。そして、十分な給与で報います。
一方で、並みの社員を一般的な業務に付け、それなりの生産性を上げてもらいます。そして、それなりの報酬を支払います。
それは、人材調達の難易度に関することになり、採用費総額も抑えることになります。
ここにあげた分業のメリットの一部だけでも、すごい効用があることが解ります。
正しく仕組みを整備することで、どんな企業もこれを得ることができるのです。
この分業の獲得に向かわなければ、社内は混乱に見舞われることになります。
・部署間の引継ぎが上手くいっていません。納期遅れが発生します。そのくせ、其々の部署の権利主張が強くなってきます。
・現場でジャッジできず、頻繁に判断を仰ぐ連絡が入ります。任命した管理者は、いままでと同じように現場に入り作業をしています。
そして、
・優秀な社員の時間の多くが、誰でもできるようなレベルの業務に使われることになります。
・採用した社員の戦力化に時間がかかります。そして、退職率も高いのです。
結果的には、生産性も上がらなければ、総人件費も高くつくことになります。
マーケティング関連サービスを展開するH社は、事業モデルの変革と仕組みの整備により、月商800万が1200万円になりました。この期間7カ月です。
それと合わせ、分業を機能させていきます。
事務部門を整備増強することで、よりコンサルタントがコンサルタント業務に時間を割ける状況を作り出しました。
また、コンサルティングの場で使う資料やそのためのマニュアルなども整備しました。
H社長は、感想を言いました。
「当社の社員には、かなり難しいことを要求してきたことが解りました。反省します。」
これは多くの社長がこの取組みの中で気づかれることです。
自分を基準としてその業務を考えてしまうのです。そのため、仕組化が進まないのです。
その結果、多くの社員が成果を出せずに会社を去っていきました。
H社長は、矢田に質問をしました。
「先生、仕組みを整備すれば、どんな社員でもコンサルタントの業務がこなせるようになるのでしょうか?」
この時、H社には、6名のコンサルタントがいました。
その内、十分に活躍できており売上目標を達成しているのは2名だけです。他の2名はもう少し足りません。そして、もう2名は目標の半分もいっていません。
この取組みによって、売上げを立てられるコンサルタントは社長のみだったのが、社員から2名のコンサルタントを育てることができました。
しかし、他の4名は、向上はしているものの、十分な成果となっていません。
私は、H社長にお聞きしました。
「社長は、この4人が、コンサルタント業務をこなせるようになると思いますか?」
H社長は少し考え、答えました。
「いいえ、正直、彼ら全員がコンサルタントとして活躍するイメージが出来ません。特にこの2名については。」
仕組化が進むと、良くも悪くもその社員の評価が明確になります。
いままでは仕組みが無いので、一部の本当に優秀な社員だけが活躍でき、他全員が活躍できない状態でした。それが、仕組みが整備されると、活躍できる社員の割合が高まるのです。その一方で出来ない社員がより浮き出てくることになります。
仕組みが彼らを活かすのです。
彼らの能力が上がったからではありません。仕組みが彼らを底上げすることになったのです。
しかし、それでもそれらの業務をこなすためには、ある程度の『素養』が必要になります。
自頭の良さ、論理性、品性という雰囲気、そして、コミュニケーション能力。
それらが作業性の高い業務であれば、素養の必要性は低くなります。真面目で、正確性があれば十分にその業務をこなすことはできます。一方で、応用性が高い業務では、どうしても素養が必要になります。
応用性の高い業務では、いくら仕組化しても、そこには限界があります。
もともとの能力、もともとのマインドが必要になるのです。
H社長も、それに気づいていたのです。
視線を上げ、H社長は訊きました。
「それでは先生、次は何をすればいいでしょうか?」
私は答えました。
「採用の仕組みです。」
コンサルタントの量産のためには、採用の仕組みが必要になります。
それも素養のある人材を採る必要があります。
そのためには彼らに選ばれるだけの会社になる、また、それだけの会社にみせる必要があります。優秀な人が集まる仕組み、優秀な人が定着する会社にするのです。
いよいよH社は、改革最後の取組みに移ることになります。
このコラムでも書籍でも、何度もお伝えしてきました。
変革で重要なことは、『順番』であり、『全部を繋げて構築すること』です。
まずは、事業モデルを大きく伸びるものに作り変えます。
その増える売上げに合わせ、仕組みを整備します。
その仕組みづくりに社員を巻き込み、その過程で組織を作っていきます。
そして、採用の仕組みにより、レベルの高い人材を入れていきその飛躍を本物にします。
事業モデル→仕組化→組織化(分業化)そして採用の順番なのです。
それにより年商数億円企業は、数年で年商10億円のステージに駆け上がることになります。そこでは、社員が活躍し、社員の手で仕組みの改善がされるようになるのです。
企画、提案、相手合わせなどの応用性の高い業務は、事業モデルの変革により、それ自体を無くせることが理想ではあります。
しかし、世の多くの中小企業、とりわけ粗利率の高いビジネス(販促業、工事業、コンサル業など)では、それこそが売りになります。
また、それを他社では「社員化」できていません。
出来ていたとしても、それは非常にレベルの低いものになっています。
大きなチャンスがそこにあることも間違いないのです。
応用性の高い業務を社員がこなせるようにする
そこで、多くの社員が活躍できるようにする
それは十分トライする価値のあるものです。
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