サブスクリプションに学ぶこと
「南澤さん、顧客を囲い込むのって難しいですよね…」最近、このような相談を受けました。あるクライアント企業が新規の顧客をリピーターに変える方法を模索している最中でした。
顧客の囲い込みと一口に言っても、実にさまざまな方法があります。伝統的な人間関係によるものから、商品の魅力、パッケージされた商品自体での囲い込み、ポイントカードや特典、さらには地域ぐるみによる取り組み、ビジネスモデル、販売方法・販売形態などによる囲い込みまで、選択肢は豊富です。
特に近年、注目をされているのが「サブスクリプションモデル」です。サブスクリプションは、一度の取引ではなく、継続的なサービス提供を通じて顧客との関係を深める方式を指します。このモデルの魅力は、顧客にとっても企業にとってもメリットが大きいことにあります。
私が経験した自動車販売でも、保険や整備代金が組み込まれたサブスクリプション方式での販売があります。ちなみに、主流となっている「残価設定型ローン」には保険は含まれていませんが、顧客を囲い込むという考え方自体はサブスクリプションに似ています。
顧客側の立場では、一定の製品やサービスを定額で利用できるため、初期費用を抑えつつ最新のサービスを享受できる点が魅力です。特に技術の進歩が早いソフトウェアなどの分野では、このメリットは大きく、常に最先端のサービスを受けられることになります。他にも、支出が予測可能であることや、簡易なアップグレードプロセスなどもあげられます。
しかし、使わない期間も料金が発生することや、解約時の手間と費用が発生する可能性など、注意すべき点も存在します。
企業側のメリットとしては、継続的な収入源を確保できること、顧客との長期的な関係を構築できることが挙げられます。これが「顧客の囲い込み」の本質と言えるでしょう。
毎月定額が基本ですが、1年契約を基準として、2年、3年契約で、さらに安くするような価格設定をするような方法もあり、自由度が高い点もあげられます。
しかし、デメリットとしては、売り切り型のように一度に大きな売上を望めないこと、自由度が高いことによる、初期段階の価格設定・サービス設計の難しさがあげられます。
ここを間違えてしまうと、顧客の囲い込みどころではなく顧客が獲得できない、顧客が獲得できても収益が上がらないという状況に追い込まれてしまいます。
このような難しさはありますが、技術革新が早く環境の変化が激しい時代に合った販売方法・販売形態であることは間違いありません。現代の所有から使用への消費者行動の変化にも合っています。
企業側としては、いかに顧客の生活にどのように溶け込ませるか、定期的な支出が顧客にとってどのようなメリットをもたらすかを意識して考える必要があります。
サブスクリプションモデルの成功の鍵は、顧客が継続して価値を感じるサービスの提供です。サービスが顧客の日常に溶け込み、継続的に利用されることが重要であり、それには独自性のあるサービス設計も必要です。
そして、顧客との長期的な関係を築くためには、ただサービスを提供するだけでなく、顧客の満足度を高め、定期的なコミュニケーションを通じて信頼関係を深めていくことが求められます。
さらに、サブスクリプションモデルでは、定期的な製品・サービスの質の向上が必要です。顧客がサービスを継続して利用し続けるためには、「常に新鮮さと価値を提供し続ける」必要があります。顧客ニーズの正確な把握も必要になります。このあたりが、サブスクリプションに学ぶべき重要な点です。
さらに重要な点は、「顧客との間に中長期的な関係性を築く」という視点が初めからあるということであり、どんな業種・業界でも大変参考になる学ぶべき点です。顧客との継続的な関係を築くことは、単に経済的利益を超えた価値を生み出します。
一年ごとの契約や複数年による契約、随時退会可能な契約までさまざまですが、そもそも商品やサービスを使い続けていただくためには、自社の商品・サービスを磨き続けなければならないことには変わりありません。
いくらサブスクリプション方式を採用しても、このあたりを理解していないと単なる解約の引き伸ばしにすぎず、長い目で見て継続課金といっても決して有利とは言い切れません。それこそ支払い方式が、ただの定額月払いということになります。
結局は、自社の商品・サービスを磨き続ける必要があり、顧客もそれを望んでおり、顧客の要求に応える必要があります。その要求に応えられなければ、継続してもらえません。
特に、成熟した市場では企業間競争によるシェアの奪い合いです。そのような状況においては、顧客の囲い込みができない企業が真っ先に消えていきます。そのためには、やはりさまざまな方法で顧客を囲い込む必要があります。
サブスクリプションモデルは、時代の変化に対応した新たなビジネスの形態です。とは言ってもビジネスの本質として、常に新鮮さと価値を提供し続けること、顧客との間に中長期的な関係性を築くということは、どんな業種・業界でも学ぶべき点です。
これらを具現化し、顧客から選ばれ続けるために、営業担当者、営業チーム、店舗、企業が必死に努力する必要があります。
当社が推進する「ストック型営業」も先行受注による次回購入、継続購入が前提という考え方です。それを可能にするための、全員が自発的に協力する組織風土の醸成、顧客満足度を向上させる仕組みや、人材を育成する仕組みにより構成されています。新規の顧客獲得はもちろん、既存顧客との関係性を強化する戦略から成り立っています。
貴社では、顧客を囲い込む戦略をどのように考えていますか?中長期的な視点で顧客との関係性を強化する戦略をとっていますか?
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