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「ひとり情シス」の放置が招く、企業の停滞

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

「ひとり情シス」・・・この単語はIT系の人であれば良く聞く単語ですが、それ以外の方にはあまり馴染みのない言葉かもしれません。まぁ、読んで字のごとくで「社員一人で企業の情報システムの一切を担当している」という姿を現したものです。中小企業では良くこの様な「ひとり情シス」を見ます。孤軍奮闘している姿を見かけるにつけ、なんとか応援したいと思うことが多いのですが、今回はこのひとり情シスの成り立ちから弊害までを論じてみたいと思います。

社員数が数名~30名ぐらいの中小企業の場合は当然のことながら情報システム担当者を置くような余裕はありません。ただ、これを上回ってくると、社内で使われているPCが増え、プリンターも増えます。更にネットワーク機器も増えてきて、「誰かが面倒をみないといけない状態」が生まれます。この時、社内で半ば押し付け合いだったり、パソコンが個人的に得意な人が立候補したり、社長が一人を指名するなど、その瞬間はケースバイケースですが、誰かひとりがその面倒を買って出ます。これが「ひとり情シス」誕生の瞬間です。会社の規模がその大きさのままであれば、おそらくその担当者は社員みんなに頼りにされることも多く、自分の承認欲求を満足させることができ、ある程度充実した仕事ができるでしょう。

しかし、会社の規模が徐々に拡大したり、複数の事業に幅を広げたりする中で、徐々にその担当者への負担も増えてきます。ここで多くの場合悲しい出来事がおきます。そのひとり情シス担当者が何らかの仕事と兼務していた場合、情シス仕事の負担の大きさを気にしてくれる人が少ないため、過重労働ぎみになるのです。当然残業や休日出勤も増え、情シス以外の「本業」が疎かになったりで、本人の精神的負担は急拡大します。もちろん、そのような負担に気がつく上司や社長もきちんと居て、人の補充や応援を出すなどの対応をしてくれる会社も多いと思います。しかし、問題は・・・

負担が増えた = その分の人を増やせば良い

という単純な増員しかされないことが多いことです。一見それはそれで正しい判断に見えることでしょう。しかし、「情シス仕事」そのものが「ひとり情シス」をやっていた人に属人化してしまっていることがほとんどなので、以下の様な問題を抱えたまま単純に増員されることになります。

情シス仕事がきちんと整理されていない

情シスのあり方が考えられておらず、経営の考え方と合致していない

一人が二人に増えたところで、今までの仕事(つまりIT系の裏方仕事)しかできない

この様な問題を抱えたままなので、人を増やしたところで「デジタル化が進んだ企業」にはなれません。しかも、方針や業務内容が整理されていないので、非効率であったり力のかけ方が偏っていたりしたままで、まともなIT化が進む状態ではありません。

さらに、やっている本人にしても、一人で試行錯誤しながら始めた仕事のやり方や考え方が正しいものなのか、果たして会社の経営に貢献しているのかも議論できず、そのまま増員されて足回りの仕事を教えたとしても「一緒に悩んでくれる人が増える」だけに終わります。

こうなってしまうと、情シス担当者のモチベーションが維持できるわけもなく、転職していってしまったり、「現状仕事をそのまま継続すれば給与はもらえる。新しいことには挑戦しない。」という停滞人材になってしまいます。

このような「ひとり情シス」が生じる原因は、ひとえに「社長の無関心」にあることは間違いありません。情シスを間接部門と断じがちなので、今流行りのDXにも乗り遅れます。「当社には専任の情シス担当がいるから、DXは進められるはずだ」などと考えるのは、現実とは乖離し、幻想に過ぎないことに気がついていないのです。

もちろん、ひとり情シスに指名された人材が、バイタリティー溢れ理想に燃える様な人だった場合には社長にも戦略的なデジタル活用を提言することでしょうし、更に戦略的な人や資金の使い方も提案することでしょう。しかし当然そのような人材は非常に稀です。多くの場合はひとり情シス(二人、三人になったとしても)はその殻の中に閉じこもるしか無く、企業のデジタル化を引っ張るところまでは到達できない、ということになって停滞を招きます。

社長はこういった情シス停滞を避けるために、情シス担当を一人でも任命する際には「経営とデジタル化」の考え方をその社員とともに考えるなど、積極的に経営に貢献させることを考えるべきなのです。

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