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経営者が備えるべきこと

SPECIAL

「信託」活用コンサルタント

株式会社日本トラストコンサルティング

代表取締役 

オーナー社長を対象に、「信託」を活用した事業承継や財産保全、さまざまな金融的打ち手を指南する専門家。経営的な意向と社長個人の意向をくみ取り、信託ならではの手法を駆使して安心と安全の体制をさずけてくれる…と定評。

経営者が備えるべきこと

夜中にハッと飛び起きる。
得体のしれない息苦しさと焦燥感。
一度は経験したことがあると思います。華やかな表舞台だけでは窺い知れない、裏側の世界が気になりました。

 

◾️華やかさの裏側

時の権力者といえども、夢にうなされることがあります。

大河ドラマ「光る君へ」の放送で面白いシーンがありました。

安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)に帝の妃を呪詛するように命じた藤原兼家(段田安則​​さん)が夢にうなされて飛び起きます。

兼家は「こわいよー」と隣で寝ていた妻、藤原道綱(​​上地雄輔さん)の母(ドラマでは寧子:財前直見さん​​)に訴えたのでした。

すると、寧子が「道綱、道綱、大丈夫」と自分の子供の名前を入れながら囁きます。

それを聞いた兼家の表情が何とも可笑しく、演技上手なのでした。

実のところ、寧子は兼家の妻の一人でしたが、藤原道長(柄本佑​​さん)の母である藤原時姫(三石琴乃​さん)​に正妻レースで敗れていたのです。

「蜻蛉日記」を世に残し、才色兼備の寧子が、なぜ妻レースに敗れたのでしょうか?

答えは、娘が生まれなかったから、です。

摂関政治に必要なのは天皇家に嫁がせる娘です。その点、時姫は娘を2人産んでいます(さらに、藤原道隆、道兼、道長と出来の良い後継者3兄弟も)。

しかも、この二人の娘が共に天皇の女御となり皇子を生みました。

このため、兼家は時姫を東三条殿に迎えて同居して正妻と位置付けます。

このため、兼家が寧子の家に通い婚となり、いつ来るか分からないという不安定な状況が確定するのでした。

同じ藤原でも寧子も時姫も受領層というランク下の貴族でしたので、公卿層の兼家との結婚は玉の輿です(ちなみに紫式部の父親も受領層です)。

徐々に、摂関家の正式な妻は同階層になっていきますので、時代の変わり目でした。

ギリギリ間に合った玉の輿ですが、セレブの兼家が終生面倒を見てくれるわけではありません。

その後、兼家が家に来なくなり、自然と離婚となります。

というのは離婚届を役所に提出したわけではなく、ただ単に、夫が家に来なくなっただけで離婚となるためです。

離婚となったあとは、実家の父親の元に身を寄せることになったようですが、晩年のことははっきりしません。

上流貴族の妻となりながらも、必ずしも満足できなかった人生を振り返って書かれたのが「蜻蛉日記」でした(いわゆる「セレブの暴露本」と言えなくもないのですが)。

もっとも、満たされぬ思いがパワーになったからこそ「蜻蛉日記」が生まれたのかもしれません。

 

◾️後継者育成と母子問題

藤原兼家の後継者は、時姫の産んだ藤原3兄弟の道隆、道兼、道長です。

時姫、恐るべし。娘、息子、共に完璧です。

この優秀な3兄弟に対して、道隆はあまり評価されていません。

藤原実資(秋山竜次さん)は、道綱のことを「何も知らない奴」とか、「40代になっても自分の名前に使われている漢字しか読めなかった」と日記に書いています。

夫との関係が今ひとつとなると、母親の愛情は一人息子の道綱にだけ注がれることになります。

才気煥発、才色兼備の母親の期待を一身に背負う道綱は大変だったことが日記から読み取れます。

幸いなことに、この時代の子育ては乳母が行いますので、母子密着の度合いは緩和されるものの、それでも母親に振り回されることに違いはありません。

夫婦喧嘩に巻き込まれたり、母親の滝籠りに付き合わされながらも、道綱は成長していきます。

後継者ではない道綱の元服(成人)式であっても、兼家はそれなりに段取りを整えて、お役目終了です。

そして寧子は書きます。

「しかしながら、あの方(兼家)の訪れも今夜(元服式)が最後ではないかと心の片隅で思った」

そして、その通りになるのでした。

 

◾️現代に置き換えてみると

明治の頃であれば妾は珍しくもなく、7月に新紙幣で登場する渋沢栄一もすごい家族構成です。

そもそも、明治初期の日本は世界一の離婚大国でした(民法の施行により減少します)。

当時の民法では、家業も財産の承継も家長が相続することが決められているため、妾がいようが、離婚していようが、相続で揉めることは少なかったのです。

現代の日本で考えてみますと、黙って通わなくなると離婚というようなこともありませんし、妻を3人持つということも出来ません。

だから大丈夫か、というと違うのです。

日本の相続法は構造的な問題を抱えています(理由は色々とあります)。

戸籍、登記、印鑑証明などの行政インフラが相続手続きを支えてきましたが、制度の限界が取り沙汰されています。

江戸時代ほどじゃないにしても離婚、再婚も珍しくありません。自分が離婚しなくても、子供が離婚する可能性だってありえます。

ですので、オーナー経営者の場合、家業の承継者と財産の承継をよくよく考えて、家業の承継と、財産の流れ道を整理しておくのは大切なことではないでしょうか。

以前、旦那さんが亡くなられたので戸籍を集めてみたら、結婚歴があり、しかも前妻との間に子供がいたことが発覚して大騒ぎになってことがありました。

本人が墓場まで持って行っても、バレるものはバレるのです。

地味なことではありますが、経営者として必ず備えておかなければならないのが、相続対策なのです。

 

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