バックキャスト思考で考える人材採用のメリット
「将来的には会社を大きくして、自分は新しい事業に関わり、既存事業は誰かに任せたい」。こんな話を何人かの経営者から聞いたことがあります。
今やっている事業も面白いけれど、実は自分にはもっとやりたい事業があって、いずれそちらに行こうと思っている。でも、せっかく育ててきた今の事業の行く末も見てみたい。だから信頼できる人を見つけて、経営のパートナーとしてやってもらいたい、と。
「そういう右腕になってくれるような人、いるんですか?」と言うと、だいたいの場合「これから探します」というお答えが返ってきます。
そして、そこが一番難しいところだったりするわけです。
人を採用するときには長期と短期の視点が必要です。それは経営計画や市場開拓に長期と短期の視点が必要なのと同じように、当面のニーズを満たすことと、将来のビジョンに至る道筋を同時に考えて、できれば、この2つを同じ基軸の上に置いておきたい。
つまり、当座のニーズを満たす人材を採用するのだけれど、その人がいずれは、経営者自身のビジョンの実現に貢献する人材へと成長してくれることを考える必要があるということです。
もちろん当座のニーズを満たす人材と、会社の将来を一緒に築く人材が同じでなくても構いません。働く側にしてみても、当面の食い扶持が稼げればどんな仕事でもOKという人もいるわけで、こういった人に対して「当社の未来を一緒に作っていこう」といったところで、「何の話をされているかさっぱりわからない」という顔をされても仕方ありません。
人材採用や育成に短期と長期の2つの視点を持ち込んで、本当に一緒に仕事をしたい人と仕事をしたいのなら、バックキャスト思考で人材採用を考えるべきだと思います。
バックキャスト思考とは、将来向かいたい方向を描いて、そこに至るために必要な手段を考えて実行することです。現在のニーズから発想するのではなく、将来のニーズから発想します。これができれば、当面の人材ニーズだけにとらわれることなく、ポテンシャルも含めて、経営者の夢を実現する人材の採用ができるはず、というわけです。
かの有名な「ビジョナリーカンパニー」という書籍には、人材採用を「誰をバスに乗せるか」に例えた記述が掲載されています。
「偉大な企業は、適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから下ろし、次に向かう場所を決める」と。
会社の行方は「誰が仲間になったかによって変わる」。これはすごく意味深いメッセージだと思います。
たとえば私のクライアントでも、同業他社から優秀な営業経験者を採用できたのがきっかけで、今まで考えられなかったような新規市場の開拓に成功した企業があります。会社の進む方向は経営者の意志によって大体のところ決まっているのですが、そこに乗り込んだメンバーの素質や経験やアイデアによって、思いもよらない飛躍を手に入れることができるのです。
コロナ禍からの急激な回復で、どこの業界も人材採用を強化しています。いま、もう一度、人材採用について考え直してみるタイミングなのかもしれません。
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