業務プロセスと社員定着率の深い関係性
「業務プロセスを可視化してデジタル化計画を立てることで、業務改革ができる」…。これは当社のコンサルティングの主要コンセプトですし、拙著「会社を正しくデジタル化する方法」でも細かく解説しています。一方、現在巷で良く言われている「人材不足、採用難」について、知り合いの人材コンサルの方から興味深い話を聞きました。それは…
採用した従業員の定着率が悪い会社は、大抵の場合業務プロセスがしっかりしていない
という関係性です。要するに、せっかく新人や中途人材を採用できたのに、入社まもなく退職していってしまうことが何回も繰り返されている、という現象の原因が業務プロセスに関係しているというのです。確かに当社のお客様の中にも、特定の職場について採用・退職が繰り返されているケースをよく見かけます。
この現象の背景の多くには、以下の様なことがあります。
・採用した人材を職場に配属し、ベテラン社員に仕事を指導するように指示する
・ベテラン社員に多くの仕事が複雑に属人化している場合(仕事のノウハウや手順がその人の頭に入ってしまっている場合)、それを新人に教えることが非常に難しい
・ベテラン社員が教えることを途中で諦めてしまって「教えた以外のことが起きたら私に相談して!」と片付けてしまった時、頻繁にそのような「教えた以外のこと」が起きてしまい、結局新人が一本立ち出来ない。もしくは一本立ちするまでの道のりを、新人本人が思い描け無い
こうなると、以下の様なモチベーションダウンのスパイラルに陥ります。
新人社員の「会社におけるキャリアアップの道筋」がなかなか見えない
ベテラン社員の細かな指示に基づく単純作業になってしまい、自分の仕事にやりがいを感じられない
作業方法を創意工夫したくても、それをしてしまうことで失敗する可能性があるし、ベテラン社員からそれを許可されない
こんな状態に陥れば、どんなに理想に燃えた人材を採用できたとしても、早晩燃え尽きてしまい、長続きしそうもありませんね。場合によってはメンタル面での問題や人間関係にも発展しかねません。
更に、その人材コンサルはこんなことも言っていました。
ほとんどの場合、現場の業務がそのような状態であることを、社長は「うすうす理解しているものの、実際には何も手を打っていないことが多い」
実際、知り合いの若い人が転職面接でとある会社の最終面接で社長から「うちは退職が多い。仕事が複雑なことが原因だが、あなたは粘り強く続けられますか?」という質問を受け、躊躇した結果内定を辞退した、という話も聞いたことがあります。
ここまで話を聞けば、社長が、業務が複雑怪奇になっていてそれが退職の原因になっていることを把握しつつも、きちんとした対策が打てておらず、結果的に「採用->入社->即退職」の悪いサイクルがいつまでも続いてしまっていることは容易に想像できます。またこの状態のままでは、同一労働同一賃金の原則や、ジョブディスクリプションによるジョブ型人材採用への障壁にもなってしまい、今後更に進行する人材採用難の激化にも対応できない可能性が出てきてしまいます。
このようなことが発生している、あるいは、発生しているかもしれない会社の場合、業務プロセスを可視化して属人化している業務や複雑すぎる業務を洗い出し、業務改革を進めるしか対処方法はありません。その進め方や手法については、拙著や過去に書いたコラムなどを参照頂きたいですが、
業務プロセス可視化と改革の作業は、IT化目的だけではない、
ことをご理解いただき、是非人材採用難に備えていただければと思います。
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