日本とミャンマーの関係からビジネスの原則を見る
ミャンマーからの帰りの飛行機。ヤンゴンの街は、拍子抜けするほどのどかでした。
街の綺麗さ、人の良さ、そして、多くの起業家の想いに触れたせいか、なかなか寝付けずにいました。
隣の彼らも同じように興奮して寝むれない様子です。
「少しお話してもいいですか」と声を掛けます。
彼らは22歳、この国を出て日本に働きに行くとのこと。十分な日本語で返ってきます。
「日本のどこで働くのですか」と訊くと「三重県の麺をつくる会社です。」と教えてくれました。
自分の子供と同じような年齢の彼らが、異国の地でよい人に迎え入れられることを願っています。それと同時に、そのあたりについて私は日本の経営者に対して信頼を持っています。
ビジネスで大きく儲けるためには、次の二つの条件を満たしていることが必要です。
一つは、「顧客に必要とされる」ということ。
その人やその企業が困っていることを解決するためのモノを提供します。
その人やその家族は刺激を求めています、それを満たすためのサービスを提供します。
この状態にある時に、顧客から必要とされるのです。
もう一つは、「競合に勝つ」ということです。
市場には、顧客と競合がいます。
他者よりも、その困っている人やその企業の興味に、いち早くアプローチをします。
刺激を求めているその人やその家族から、比べられて選ばれる必要があります。
何としても、競合に勝たなければなりません。
顧客が困っていることが大きいほど、自社のモノの価値は高まります。
逆に、その困りごとが小さいほど、その価値は下がります。
そして、そのサービスやそのレベルを自社しか提供できなければ、希少性は高まり、価値も高まります。
逆に、それが他者と同等であり、ありふれたレベルであれば価値は下がります。
大きな困りごとを解決する、他者にはない特徴を持つ、これが高付加価値というものです。
これが、「強い値付け」と「早い展開」を実現させます。儲けることができるのです。
逆に、小さな困りごと、他にいくらでもあるモノでは、顧客への刺さりは小さくなります。それは自ずと低付加価値、すなわち儲からない状態に陥ることを意味します。
これがこの世界におけるビジネスの原則です。
ビジネスを「タイル」に例えるとその本質がより理解できます。
古い市場では、その床が多くの他者のタイルで埋められています。そこには大手企業も居ます。そして、そこには少しの隙間しかありません。多くの起業家はその隙間からスタートします。そして、一生懸命にそこにあるタイルを剥がし、自社のものを入れようと頑張ります。
新しい市場では、その床にタイルがありません。昔のインターネット通販のような市場です。そこに一枚一枚タイルが置かれていきます。その過程である会社は自社のタイルをより大きくしていきます。また一方で無くなっていくタイルもあります。その結果、その市場における勝者が決定します。そのようにして、その新しい市場も古い市場になるのです。
ある変化により、次の新しい市場が生まれます。その変化とは、人口構造、人々の思考、技術の進化、法律の改正などによってもたらされます。その変化により、まっさらな床が発生します。その新たな床で陣地取りのゲームが開始され、そして、勝者が移り変わります。
これが、この世界とそのビジネスの構造です。
5年前にミャンマーを訪問した時、急速にその穴が埋まっていくのを目の当たりにしました。
世界中の企業が「車」、「電気」、「不動産」、「建設」という大きな床を取るためにしのぎを削っています。その中に、日本の企業も入っています。
そして、その周辺の小さな市場を狙い中小企業も参入してきています。そして、次の勝者を目指し起業家が会社を興しています。
そこでは、まだ多くの「床」が残っています。殆どの床ではまだまだタイルが不足しており、勝者も決まっていません。成熟国である日本に比べれば、無い物ばかりなのです。
その勝者になるために、各国、各社が全力で戦っています。そこには、他のアセアンの国々で得た知識と資金が投入されていました。ミャンマーは、急激な成長の「入口」に立っていました。
それが、コロナそして国変により止まることになりました。
その床取りゲームがある日突然、止まったのです。多くの大手企業が撤退または一時休止状態に入りました。
それにより、床のタイルが、一気に剝がされることになります。多くの市場では、勝者になりかけた者までもいなくなりました。一部、完全にゼロリセットされた市場もあります。
なんにせよ、膨大なタイルがはがれ、床が開けたのです。
いまのミャンマーでビジネスをすることには、当然、リスクがあります。
インフラ、法、治安。そして、何よりも再度の国変。
しかし、そこで頑張っている起業家がいました。理由はそれぞれですが、彼らはそこに留まる決意をしました。
彼らからは、この4年間の苦労話を聞くことができました。そして、この国の人が好きであること、この国には大きなチャンスがあることを熱く語ってくれました。
ミャンマーが動き出していることを感じる旅となりました。
最終日の視察を終え、飛行場につくとそこは人でごった返していました。沢山の人がミャンマーを行き来し始めていると思いました。
しかし、そうではありませんでした。イミグレーションを通ると、人がまばらに居る程度です。半分以上の店舗が閉まっています。商品の棚卸もスカスカの状態です。
飛行機に入り座席に行くと、彼らは私と目を合わせ、ニコリと笑い、ペコリと頭を下げました。
彼らを含む多くの若者が、自分の国を出る決意をしました。そして、その中の少なくない人が「日本」を選んでくれました。彼らは、三重県の会社で働くことを教えてくれました。
心から、彼らが日本で人間らしい生活ができることを願っています。
そして、できれば夢と希望そして技能を持って、ミャンマーに戻ってこられることを想っています。
日本には労働者不足という大きな『市場』をあります。そして、ミャンマーには国を出なければならない若者がいます。当然、そこにビジネスが興ります。タイル貼りの戦いが起きているのです。
彼らは、そのタイルの恩恵により異国で働くことができます。
また、日本の企業は人を確保し、事業を継続することができます。
そこには大きな市場があり、大きな金が動くことになります。
それゆえに、経営者の理念が問われることになります。
そういう点では、私は日本の経営者とその企業を信頼しているのです。
日本の経営者やその従業員は、その多くが優しいということを知っています。
空港に見送りに来ていた家族の「子を日本に託す」という想いを裏切ることはありません。受け入れた会社は、存分にその想いに答えることでしょう。
世の課題を解決していきましょう。
他者に先んじて自社のサービスを広げましょう。
その結果、大きく儲けましょう、そして、更に大きくして世の中に良い影響を与えていきましょう。能力が高く、理念も持つ皆さんが、そのよいサービスを拡げるのです。
※WAOJEミャンマー支部の皆さん、そして、快く向かい入れてくださいました企業様および飲食店の皆さん、本当にありがとうございました。
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