結局、強い会社とはどのような会社なのか?その会社の社長がやっていることとは?
この日は設備開発業Y社長との面談です。
事前に頂いた課題一覧表には、『人』に関するものがずらっと並んでいます。
Y社長は最近あったエピソードを話し始めました。
「その社員は、私が注意した後に机に戻り、そのまま会社を出ていきました。そして、それ以来連絡が取れなくなりました。」
私は、「それはそれは・・」と返します。
Y社長は、そのまま次のエピソードに移ります。
「先生、こんな社員もいました・・・」
私は、手元でY社のホームページを確認します。
どうやらY社は、「ダメな人間」が集まる会社のようです。
人は、二つの大きな欲を持っています。
一つは「人間的な欲」、もう一つは「動物的な欲」です。
人間的な欲とは、その言葉の通り「人間」だけが持つ欲のことです。
自分はもっと成長したい、困っている人を助けたい、世の中に貢献したい、
その結果、自分は充実した人生を送りたいと思っています。
これが人間的な欲です。
それに対し、動物的な欲とは、「動物」が本来持つ欲のことを指します。
自分は楽をしたい(エネルギーの消耗を抑える)、リスクを冒したくない(危険を回避する)。
また、「人に何かする」というよりも、「自分に何かしてほしい」という志向性です。
このような欲が動物的な欲となります。
この欲のどちらかが悪いということはありません。
どんな人もこの両方の欲をもっており、どちらも必要な欲になります。
動物的な欲を持つからこそ「生きること」ができるのです。また、人間的な欲を持つから「活きること」ができるのです。
また、人間的な欲ばかりであればどこかで疲れ切ってしまいます。逆に動物的な欲ばかりでは成長することができません。そして、この社会の発展はなくなってしまいます。
個々の人間として、大切になるのは「この欲との付き合い方」だと言えます。
自分の欲のコントロールの仕方を覚える必要があります。
自分の持つ欲を、行動や幸せに活かせるかどうかなのです。
この会社組織においては、何としても「コントロール」してもらう必要があります。
もし会社にいる全員が「動物的な欲」を優先すれば、その会社は成り立たなくなります。
ある社員は、「体調が悪い」という理由で頻繁に休みを取ります。
ある社員は、手を動かしながら「面倒くさい」と思っています。
ある社員は、業務中に隠れてゲームをしています。
ある社員は、図面の間違いに気づいても、自分には関係ないとその担当者に伝えません。
ある社員は、指示されていないことは一切やりません。
ある社員は、仕事を増やすと「給与増えますか」と訊いてきます。
こんな会社がよくなるはずが無いのです。
くどい様ですが、動物的な欲が悪いわけではありません。あくまでも、会社組織という場所において、それを優先されては困ると言っているのです。
結局、会社の強さとは、「人間的な欲」で動く人間の数で決まるということです。
規律・論理性・向上心・自己評価・貢献によって動きます。
そして、優秀な社員とは、その「人間的な欲」と「自頭」を併せ持った者と言えます。
(「たちが悪い」のは、「動物的な欲」と「自頭」を持った社員)
我々の会社は、沢山の「人間的な欲の強い社員」と、一部の「人間的な欲が強く自頭が良い社員」によって、構成されることを理想とします。
どうやら冒頭の設備開発業Y社は、「動物的な欲」が強い人間が多いようです。
私は、Y社長のエピソードを聴きながら、Y社のホームページを確認します。それも特に採用に関するコンテンツを見ます。
通常、「動物的な欲」が強い人間の多い会社では、ホームページがそのような作りをしています。そういう人間を集めるように出来ているのです。
やはりY社のそれは、そのように出来ています。
やたら「職場の雰囲気」や「チームワーク」の良さを売りにしています。また、経営理念的な内容が多くあります。そこには「人を大切にする」とあります。
こういう内容が悪いのではありません。しかし、強く打ち出し過ぎると望まない人を集めてしまうことになります。それを実行実現する人というよりは、それに「依存する人」を集めることになるのです。
そして、私は、Y社長に質問します。
「仕組みの出来はどうですか?」
Y社長も私の本を読んでこられています。仕組みとは何か、ある程度のイメージがあるはずです。そして、その必要性を感じているはずです。
しかし、返ってきた答えは違いました。
「彼らに仕組みの発想はありません。どうしたら仕組みに向かうようにできるのでしょうか?」
この発言からY社が仕組みの無い会社であることが予測できます。
これは、このコラムで何度もお伝えしてきたことですが、「社員を仕組みに載せる」のが先なのです。「載せる」から社員は仕組みに向かうようになるのです。
ここから、もう一つの予測が浮かんできます。
それは、Y社が「動物的な欲を強くする会社である」ということです。
仕組みの無い会社では、人は「動物的な欲」を強くすることになります。
そこには、多くのものがありません。会社がどの方向に向かっているのかが解りません。業務のやり方やどうしてそのやり方をしているのかを知るすべがありません。お互いの案件や仕事の状況がわかりません。定期的な部署のコミュニケーションの機会も少ないのです。
そこでは、チームワークが成立しにくい状況なのです。また、お互いに助け合いにくい環境なのです。そして、自分が何かしたいと思っても動きにくい条件が揃っているのです。
そこは、「人間的な欲」を抑えこまざるを得ない力が働いているのです。
そして、逆に「動物的な欲」を強く出させることになります。
そこはまるで「あなたは動くな」「余計なことを考えるな」と言われているような状況です。
その状況に「動物的な欲」が強い社員はより居心地が良くなり、欲が拮抗していた社員は「動物的な欲」が勝るようになり、「人間的な欲」を強く持っている社員は会社を去ることになります。
その結果、出来上がるのが「動物的な欲」を持った社員ばかりの会社なのです。
あの面談から4年が経っています。
Y社長は、見事に変革をやり遂げ、会社を変貌させることに成功しました。
今は「ある分野の専門設備メーカー」になり、全国の大手企業から問い合わせが絶えない毎日です。そして、会社も駅前のビルディングに移転しました。
当時の年商は3億、今期は10億を超える予定です。
そして、そこでは、社員がしっかり働いています。彼らの手によって、顧客の信頼を勝ち取り、彼らの手によって仕組みが改善されて行っています。
会社とは、システムです。
人間をある方向に向かわせるシステムそのものなのです。
そのシステムの出来がよければ、人はその通りになっていきます。
そこでは「人間的な欲」を強め、「人間的な欲」を発揮するようになります。
そのシステムの出来が悪ければ、それなりになっていきます。
そこでは、「動物的な欲」を強め、「動物的な欲」が蔓延することになります。
最後は、ストレートに表現をしましょう。
御社は、ダメな人間を集めていませんか?
御社は、ダメな社員を生み出していませんか?
システムを変えることです。
そのために会社をつくり変えるのです。
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