経営戦略を考えるときの手掛かり
経営戦略を考えるときの常道として、たとえばSWOT分析をしてみるといった取り組みは広く知られているところだと思います。さまざまな公的支援の応募用紙には、またかと言いたくなるほどSWOT分析が求められるため、中にはいささか食傷気味だという経営者の方もいるかもしれません。
手の込んだ分析をいちいち行わずとも、経営者が戦略に関する考え方をまとめるためのプロセスは大きく分けて二つしかありませんので、今日はまずそこから話を始めたいと思います。それは「攻」と「守」、攻めと守りのいずれかだ、ということなのです。
攻めの戦略を取るべきと判断するために、絶対必要となるのは「そこにチャンスがあること」です。そのチャンスをどうモノにするのかを考える中で、自社の強みを生かせればそれに越したことはありませんが、適切な強みがないなら外から持ってくる、という意思決定も普通にあってしかるべきなのです。
環境ビジネスを想定して具体的な例を挙げれば、「脱炭素」は間違いなく大きなチャンスと言えるでしょう。でも、そのチャンスを生かすための強みがないとすれば、投資をしてでも何か強みを持ってくるしかないわけです。
逆に守りの戦略について考えるのは、「何か懸念を感じたとき」となります。守りの戦略では競合先などの「脅威」、そして自社の「弱み」に目配りしつつ、懸念の中身を丁寧に分析してみます。弱みの克服を外からの資源に頼るのは、これまたごく普通の対応だということができます。
カーボンニュートラルは、進捗が遅れればその分だけ脅威になると感じる、という方は少なくないはずです。だったらその脅威にはどう対応するのか、そのためのシミュレーションをしっかり考えておくことは大変有用なアタマの体操だと言えます。
攻めでも守りでも、戦略によって実現が期待される成果についてはこの段階でしっかりと確認するべきです。「要はここまでできれば良しとする」という、勝利を判断するための客観的な基準みたいなものを可視化しておくようにします。さもないと、予想外の成功に酔ってつい深入りしすぎてしまったり、何とか危機を凌げているのにまだ守りの手を増やそうとするなどの判断ミスにつながりかねないからです。
取るべき戦略と、得るべき成果をきちんと整理したら、そこから先は社内の担当者にバトンを渡すことになります。後は成果を確認するための社内コミュニケーションを怠らないように。経営戦略と経営判断は、経営者のアタマの中でそんなふうに回転してゆくのです。
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