お客様相談室に電話をしてみたら…その結末
「先生、集客や販売がうまく行っていないのは、やはりマーケティングができていないからですよね」
先日、当社のセミナーに参加された防犯機器メーカーの社長の言葉です。社長はセミナーの質疑応答の時間に、上記のような質問をされました。
「社長、失礼ですが、マーケティングの意味というか、定義をご存じですか?」
このようにお聞きすると社長は「なんでそんな質問するんだ?」といった表情を浮かべながら「ええ~っと、市場調査をして、売れる製品を作って、広告を出して、営業に頑張ってもらう…、でしょうか?」
実は、当社はマーケティングの定義を正確に知りませんし、勉強しようともしません。なぜか?
マーケティングの定義や経営理論を勉強しなくてもコンサルティングに影響はありませんし、勉強しすぎると却って悪い影響を及ぼすと考えているからです。「マーケティングの勉強をして何が悪いの?」とお思いでしょうが、それが実は大いにあるのです。
ここで勘違いしていただきたくないことがあります。マーケティングや経営理論を勉強すること自体はいいことです。しかし、往々にして理論に頼ったビジネスになりかねないので、いけないと言っているのです。
「そうならない!」と言うならば、それはそれで結構なことです。しかし当社がかかわったクライアントのほとんどは、そうなってしまうのです。
それはなぜか? 正解を探した方が楽だからです。理論というのは確立された学問です。学問には正解があります。
例えば、中小企業診断士試験には経営理論の学科があって、正答率60%が合格です。合格するために勉強をしますので、理論を勉強すればするほど実際のビジネスでも正解を探しに行くのです。知らず知らずのうちに、です。
ところがビジネスには正解がありません。しいて言うなら、成功したやり方が正解なのです。したがって、自分のやり方を自分自身で作っていく方が、理論通りにやることよりもずっと難しいし、苦労が多いのです。
マーケティングや経営理論で集客や販売ができるなら、こんな楽なことはありません。ビジネススクールで勉強すればいいですし、その講師にコンサルティングを受ければいいからです。しかし現実的には、それでビジネスが成功したなんて聞いたことがありません。
後日、この会社のお客様相談室に、製品の相談という名目で電話を入れてみました。どのような対応をするか興味があったからです。そうしたところ、電話口にお出になった女性の方と、技術担当の男性の方の話しぶりが「めんどくさい」「つっけんどん」を、ありありと感じ取ることができたのです。
「マーケティングとか経営理論とか、そんなことじゃないでしょ!」と、社長に申し上げたかったのですが、社長とはそれっきりになってしまいましたので、その機会を得ることはできませんでした。
理論を勉強することは大切なことですが、実際のビジネスでは、理論を越えた何かがあります。そうです、人の感情です。
人(お客様)は、感情を持って購買・購入します。いくらいい製品やサービスでも「気に入らない!」「なんかヤダ!」と思われては買ってもらえないことを、経営者なら肝に銘じるべきでしょう。
お互いに顔が見えない電話で、お客様に嫌われたらビジネスはジ・エンドです。そんなことも分からずにマーケティングだの言っているようでは、この会社は永遠に成功しないでしょう。
あなたの会社のお客様相談室は、どんな電話対応をしていますか? あなた自身が電話をして、確かめてみるのも手ですよ。
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