ビジネスにおける「優しさ」のメリット
久しぶりに本コラムのアクセス解析を覗いてみたら、突出してよく読まれている掲載回があることに気付きました。それが、昨年2月に書いた「人に恵まれている人の共通点」。
推測するところ、どなたかがリンクを貼ってくださったか、ウエブ上で話題にしてくださったか、検索頻度の高いキーワードが含まれているかが理由かと思います。
このコラムを書いたのは、当時、私の周囲に来られる方たちが口をそろえて「自分は人に恵まれている」と言われていたからで、その理由を掘り下げてみたくなったからです。この時の結論は、「どんな人間関係も双方向性を持っているので、人に恵まれているという人は、意図してか意図せずしてか、人に何かを与えている」のではないかというものでした。
先日お会いした社長も見るからに「人に恵まれている」オーラをお持ちの方で、頭がとても切れるので一見怖い印象を与えるのですが、他人に対する配慮や優しさがハンパじゃない。話しているだけで勇気づけられます。こういう人が夢のあるビジョンを次から次へと語るわけですから、「この人と一緒に働きたい」と思う人が何人も現れるのも納得できます。
ところで、昨日とあるところで聞いた講演で「優しさは優れていること」という言葉が出てきて、なるほど、と思いました。確かに「優しい」と「優れている」は同じ漢字を書きます。なぜ?と思いますよね。でも同じことを指していると考えれば合点がいきます。
私は今まで起業をしようという人たち1000人以上と話をしてきましたが、その中の半分以上の人が、「自分の優しさ」を「ハンデ」だと感じていました。「優しい」がゆえに、お客さんに対して何かを提案したり、営業したりすることが、お客さんにとって迷惑ではないかと思ってしまう。「営業力」は「押しの強さ」だと勘違いして、自分が本来持っている「優しさ」はその対角にあるから、仕事がとれない、という理屈です。
実際のところ「優しさ」が仕事に結び付くには時間がかかります。でも「押しの強さ」でとってきた仕事は長続きすることはありません。逆に恨みを買うことになる。だからやめた方がいい。
では「優しさ」とはどういうことなのか。もう少し掘り下げてみたいと思います。
「優しさ」とは「甘やかす」ことではないでしょう。無防備に甘やかすとだいたい状況はグタグタになります。だからそれじゃない。
「優しさ」とは相手の望みや行きたい方向を汲み取って、後ろから押してあげるような力だと思います。誰でもできることではない。だから「優れた」能力なのです。
会社が人を採用するときも、組織の中で人を活かしていくときも、相手の望みや行きたい方向を汲み取って、時には提案して、後ろから押してあげるのが「優しさ」なのでしょう。でも社員がみんな同じ方向を向いているわけではないので、まずは会社がビジョンや方向性を決めておく必要があります。関わる人の意思を束ねていくための基軸のようなものを明文化しておく必要がある。
最近、私、山登りをしているのですが、もともと体力がないので、上り坂に差し掛かると一気にペースが落ちてしまう。見かねた同行者が後ろから押してくれるのですが、この押し方がうまい。背中を押すのではなくて、腰のあたりを後ろから押してもらえると、上り坂でもなぜか足が前に出ます。
多分、他人に対するポジティブな影響力のある人というのは、こういう勘所をよくわきまえているのでしょう。天性、と言ってしまうとそれで終わってしまうので、これをスキルとして身につけましょうというのが私の提案です。このスキルには裏付けとなるマインド、すなわち他人に対する優しさが必要です。
さて、貴社ではどんな「優しさ」が大切にされているでしょうか。培われているでしょうか。
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。