ダメ会社の2大特徴とは?会議を観れば組織の出来具合が解る
N社は、付加価値の高い製品を加工しており、年商は20億円です。
そのN社長から「会議を見てほしい」との依頼を受けました。
その会議は、月一回の幹部会議であり、部課長から各営業所長まで20名が参加します。
朝9時、N社長の挨拶から始まりました。
それから営業部からの報告があります。
私はその様子と資料を拝見して、隣の記録をとっている女性社員に小声で訊きました。
「これは何時に終わるのですか?」
「早い時で昼前です。通常は昼休みが無くなります。」と小声と笑顔で返されました。
私は切りの良いところで退席をさせて頂きました。
その私をN社長が追ってきます。
「先生、うちの会議の何が悪いのでしょうか?」
組織をつくるため、組織をまともに機能させるためには、次の二つが必要となります。
それは、『図面』と『工程』です。
「自分たちは何をつくるのか」を表した『図面』、
そして、「誰がいつまでに何をするか」という『工程』です。
この二つです。
この二つがあるからこそ、考え方も能力も違う他人同士が協力し、大きな事業を成すことができるのです。
もし、その構成員に、図面が与えられなければ、自分たちが何のためにそこに居るのかが解らなくなります。また、工程が与えられなければ、自分が具体的に何をすればよいのか、そのために、どう協力すればよいのかが解らず、途方に暮れることになります。
図面も工程も無ければ、組織が出来るはずが無く、組織として機能することも無いのです。
その原則を守らないため、世の多くの会社が、まともな組織にならずにいます。
これは、本コラムで何度もお伝えしてきた通りです。
それらが無ければ絶対に組織になりません。逆に、それらが有れば組織になるのです。
そして、組織で働く者は、このどちらかに貢献することになります。
図面づくり、すなわち『設計』か、
それとも、工程をその通り実現する、すなわち『実行』かです。
組織の中では、上に行くほど『設計』への貢献を求められることになります。
「方針を決定する」、「目標を設定する」、「仕組みを改善する」。
逆に、組織の下に行くほど、『実行』への貢献が求められます。
「お客を開拓する」、「製品をつくる」、「入金処理をする」。
この貢献を『時間の配分』と言い換えることができます。
組織の上のほうは、設計に使う時間が多くなります。組織の下のほうは、実行に使う時間が多くなります。
●社長や管理者の仕事(時間の使い方)
設計:検討する、企画する、目標や方針を決める、展示会に視察に行く、コンサルに会う。
実行:計画の進捗を確認する、部下に実行を依頼する、他部門と調整する。
ぜひ、ご自身の手帳を見直してみてください。
そのスケジュールに入れられた項目は、設計色を赤、実行色を青とすると、明確に2色に振り分けができるはずです。やはり社長の手帳は、その多くが「赤」になります。
組織の下に居る作業層である一般社員のそれは、青一色に染まることになります。
毎週、毎日、実行を繰り返しています。
その間にある管理者は、上層に行くほどに「赤」が増えることになります。下層に行くほど、青の割合が高くなります。
会社の中にある会議も、この二つで分けることができます。
『設計のための会議』と『実行のための会議』があります。
前者は、主に「企画会議」や「課題対策会議」と呼ばれるものになります。
それに対し後者は「進捗会議」や「情報共有会議」となります。
組織をつくるためには、図面(設計)と工程(図面)が必要です。
組織が機能するには、設計と実行の役目が在り、それぞれが機能することが必要です。
そして、その組織の目的を達成するためは、設計の会議と実行の会議が在り、それぞれがしっかり運用される必要があります。
ぜひ、この視点で自社のスケジュール(会議)を見直してみてください。
社内に赤の会議、すなわち設計を目的とした会議はあるだろうか?また、しっかり運営されているだろうか。
また、社内に青の会議、すなわち実行のための会議はあるだろうか?それはしっかり運営しているだろうか。
この問いに、自信を持ってYESと答えらえる会社は、組織がしっかり機能しているはずです。それに対し、NOと答えた会社では、組織が機能していないことが予測されます。
冒頭のN社は、やはりここに問題がありました。
10分前に、その月例会議が開かれる会場に通されました。
そこは社内で一番大きな会議室です。
私を紹介するプレートがあり、その机の上には資料が置かれています。
私は、開会の時間まで資料を確認することにしました。
するとありません、「赤」に関する資料が無いのです。
赤に関する資料とは設計です。
何かの企画書であったり、何かの方針書があったり、それらが無いのです。
この会議はN社における「最高の場」のはずです。その場の資料の中に、それらの資料が無いのです。
N社長の冒頭の挨拶があり、主役が営業部に移ります。
営業部長からの報告が終わり、続いて各営業所長からの報告があります。
今の業績の推移が良くないこと、そして、その原因分析と対策らしきことが発表されます。
その報告を手元の資料と照らし合わせながら聞きます。その資料には「数字」が並んでいますが、「文章」がありません。「耳」で拾うしかありません。
その発表に対して、N社長が質問します。そして、指示を出します。
そして、営業部の時間が終わりました。時計を見ると10時を超えていました。
ここまでで十分です、N社が『ダメ会社の典型的な会議』をやっていることが確認できました。
●ダメ会社の典型的な会議、2大特徴
・会議に「設計」に関する資料が無い。・・・企画書、方針書がない
・報告は、売上やKPIの「数字」のみ。分析や対策を文章で記載していない。
上記の2つの事象から、次のことが連想がされます。
- 事前に社長と各管理者で状況確認(報告)も対策も話し合われていない。その会議の場で初めて「報告」を聞く。「今月の売上目標は未達です」というような。
- この会社には、企画書をつくる文化がない。一人も深く考えていない。メンバーでしっかり議論出来ない。そのため、すべてが浅い状態になる。
そして - 実行が弱い。何が決まったのか曖昧である。そして、決まったことはすぐに忘れ去られる。そのうえ、その不実行に何の御咎めも無い。
私はこのタイミングで、退場させていただきました。
ここでこれらを指摘したり、どうすればよいかを言ったりすることはしません。
後日のコンサルティングの場で、上記のことをご説明させていただきました。
そのうえで、根底にあるN社の問題もお伝えさせて頂きました。
N社には「赤」の概念が少ない。
すなわち、設計の機能が弱いであろうと。
この指摘をN社長は、素直に認められました。
「私自身、十分考える時間を取れていません。また、文章にまとめることをしていません。」
そして、管理者にも設計の仕事をさせていないのです。それは、会議に文章がないことで一目瞭然です。N社長は、管理者に「企画書を出せ」、「検討書を作れ」と言っていないのです。
これでは管理者が育つはずがありません。また、管理者が管理者として機能するはずも無いのです。
この状態であれば、若手に「設計の業務」がこぼれ落ちてくることもありません。20代後半になっても、企画書一枚書いたことがない社員ばかりなのです。この状態で仕組みで考えられる社員など現れるはずが無いのです。
上から下までその組織では、スケジュールに「青」ばかりなのです。
会社全体が、実行、実行、実行の毎日です。
「赤」がほとんど無いのです。誰も設計に時間を使っていないのです。
これでまともな組織になるはずがありません。
これで良い業績も、早い成長もできるはずがないのです。
設計の概念を組織に根付かせるために動いてください。
- 経営計画書を正しい作りにする。(設計と実行の二部構成)
- 管理者と見込みのある若手に、設計の仕事を振る(時間をそれに使わせる)
- 社内の会議を設計と実行の目的で再設計する。そして、各部署には設計の資料を出させる。
その前に
- 社長は、設計に向かうこと。
赤の時間をつくること。
1週間のスケジュールの中に、最低でも赤が2つ、3つはありたいものです。
以上。
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