新しい組織を作るときに
会社を大きくしてゆく中で、必要に迫られて新しい組織を作る。多くの経営者が経験するプロセスですが、その方法論は必ずしも広く共有されているわけではありません。
社内組織には大雑把に言って、①どの会社でもある程度の共通性を持つ組織(機能別組織:経理部や人事部など)と、②会社固有の理由や背景によって設立される組織(目的別組織:技術開発部やプロジェクト企画部、マーケティング戦略部など)という属性があります。
機能別組織は会社の成長とともに半ば必然的に整備される部署で、管掌業務もある程度標準化されていて、転職エージェントにも経験値があるので経験者の中途採用も比較的スムースに進みます。
他方で目的別組織は各社特有のニーズに基づくものなので、それがどのような組織であるべきなのかを社内でしっかり確認するプロセスを経ないと、組織を作って人を雇ったが、課題解決に必要な知見や能力を獲得できなかった、というようなことにもなりかねないリスクがあります。
技術開発であれば、求められる能力(たとえばPythonかC++か)や経験値(同じく開発エンジニアかプロジェクト管理者か)はどのようなものかといった仕様がはっきりしていることが求められます。
そもそも何のためにその組織を作るのか、達成すべきタスクは何で、具体的な達成要件はどうなっているのかについても、目的別組織の場合には関係者全員がしっかりと理解しておくことが必要です。
そこで重要なのが、経営者がその問題意識を可視化して関係者と共有するというプロセスです。「〇〇部設立に関わる趣意書」と言ったタイトルで、経営者がその思いや問題意識、解決のための方向性、具体的に取るべきアクション、担当者、新規採用に当たって臨むこと、予算、執行期限などを文章化したもの、と言えばおおよそ想像いただけるでしょうか。経営者は何より先にこのような情報を作って関係者と共有するプロセスを踏みます。
そのうえであれば、人事担当者も経営者の問題意識を論拠として、採用のための求人票を作成することができるのです。
そもそも中途採用市場に出てくる人材は、すでにある程度の実務経験を有しており、能力的にも即戦力としての資格要件や経験値を十分に持っている場合が多いのです。募集要項を詳しく書き込むことで、採用時のミスマッチを回避することができ、新人と比べて高い人件費単価に見合った人材を間違いなく採用することができるようになります。
これが人件費単価の安い新人であれば、募集要項がやや大雑把でも、訓練期間や適性診断などの名目で入社後にいくつかの業務を担当させることも可能だと思いますが、こと予算も期限も明示された目的別組織に関わる採用であれば話は全く違います。業務計画的にも採用初日から成果を挙げてもらう、くらいの勢いで即戦力人材を当てにするケースがほとんどだろうと思います。
その意味からも、目的別組織の設立に関する求人票は、なるべく詳しく書き込めたほうが良いのです。担当者が明確な理解に基づいてクリアな求人票を作ることができるよう、経営者としては「趣意書」をしっかりと作成することに重点を置いて下さい。新しく目的別組織を作るときの、それが成功要因なのです。
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