「社長に指摘されたら直せばいいや」そんなチェーンばかりだから勝っていける
「どうせ役員周りがあるからじゃないの?」
「・・・あ、バレちゃいました?」
あるチェーンにおいて、本来店舗の運営に踏み込んではいけない担当者が
「手伝ってもいいですか?」
と提案したところ、ベテラン店主にその本心を見破られ、返された言葉です。
このやりとりはどういうことなのか?
それは
・役員達は、「各店舗は会社の方針通りになっていて当たり前」というスタンスで見回る
・しかし実際は、それが実現できている店舗はほとんど存在しない
・現実は企業の方針から脱線している店舗が横行している
・それは役員達も承知の上
・「それでもちゃんとできているんだろうね?」という目線で現場の人達を突き回したい
・現場の人達は、役員周りの日までに店舗の状態を何とかしないと、改善指示が出されて仕事が増えてしまう
・それだけは避けたい
・でも店舗運営には踏み込めない・・・
・そうだ、こうしよう
・「お手伝いしましょうか?」
ということです。
つまりこのやりとりで問題なのは、仕事の目的がお客様の満足ではなく、経営陣の満足の為の仕事になってしまっていること。
そして最悪なのは、このやりとり自体が過去からその時まで、何度も何度も同じような事が繰り返されていなければあり得ないということです。
このように多店舗型ビジネスが厄介なのは、他の事業と比べると「経営者の意志が全員に浸透しづらい」点が挙げられます。
このせいか、恐ろしい事に多くの企業が冒頭の企業のように
「社長の意志が浸透しないのは当たり前」
「浸透しない上でどうするのか?」
と動かれてしまっています。
原因を改善しないまま、対策を練っているというほど危険な状態はありません。
例えれば「素人の掃除」と同じ事です。
いつまでも悪臭の原因を断とうとせずに、どの消臭スプレーがいいのか?と探し回り、
「あれもダメ、これもダメ」と使ってみては買い替えるという浪費浪費のループです。
いくらお金と時間をかけても足りません。
しかし、これは一部の企業だけの問題ではありません。
私の経験上ではありますが、こういった「社長の意志が全員に浸透していないままの状態」という問題が、とても多くの企業で放置されています。
社長の知らないところで、社員や店員は、それぞれがその場その場で独自に判断をしているのです。
例えば
・自分とウマが合うお客様だけを優遇し、気に食わない客は冷遇する
・会社として売り込んで欲しい商品、サービスを無視して、気に入った商品、サービスばかり販売している
・本部が提供した機械、設備を故障したまま、あるいは使用不可にする、勝手に設定を変える
・本部が推奨する清掃の度合い、回数、時期を勝手に自己解釈し、ブランドイメージを下げられる
・会社が掲げた計画を無視し、目先の利益追求に走られる
など
そして社長は後々こうなるのです。
「一体どうなってるんだ?」
「いつからだ?」
「なぜ今まで誰も気が付かなかったんだ」
「何回言ったらわかるんだ!」
私は、そういった末路が見える場面を目撃する度にこう思います。
「貴方が今判断し、実行したその行為は、本当に御社の社長の思惑通りですか?」
「組織のリーダーの思惑を無視して、勝手に判断していませんか?」
私は単に何でもかんでも組織の人達は必ずリーダーの言う事に従いなさい、と言いたいわけではありません。
大きな結果を得るには、自ら考え、行動することが大切だからです。
よって重要なのは、
・組織のメンバーそれぞれの行動が、リーダーの意志に沿っている
・組織のメンバー達は、自ら考え、行動できる
この両立を目指すべきなのです。
一見、リーダーの意志に沿わず、それぞれが好き勝手に判断し行動している会社は、自由な社風で風通しが良く、皆が生き生きと働ける会社・・・と、見えなくもありません。
しかし、それは逆にこうも言えるのではないでしょうか?
社長の目の届かないところで好き勝手に動き回れる会社
野球で例えれば、監督が送りバントのサインを出しているのに
バッターはかっ飛ばす気が満々。
サッカーで例えれば、監督の戦略である「パスで回していけ」を無視して
1人の目立ちたがり屋が、ドリブルで華麗に抜こうと必死になっている。
このような組織が結果を出して行けるわけがありません。
また、「うちはフランチャイズチェーンだから、全店が徹底できていないのはしょうがない」という声を耳にすることもあります。
しかしこの問題は、直営店、加盟店だからなどは関係ありません。
なぜなら、
「貴方の会社の加盟店や従業員は、社長の意志に賛同したから今一緒に仕事をしているのではないですか?」
「加盟店や従業員が共に歩んでくれているのは、『私はこの社長の考えを支持したい』となってくれたからではありませんか?」
組織とは、誰もがリーダーの意志に沿って行動できてこそ、ベクトルを重ねられ、爆発的エネルギーを生み出せるのです。
それぞれが独自に判断し、好き勝手に行動していては、せっかくの熱いエネルギーであっても、お互いに打ち消し合わされて大きな結果を出すことができなくなります。
よって、業績を上げていける多店舗型ビジネス企業では、
たとえ地方にポツンと1店だけあるフランチャイズ加盟店であっても、本部直轄の直営店と遜色無い店づくりができていて当たり前ですし、
たとえ店主と滅多に会えない深夜アルバイトでも、店主の掲げる方針通りの接客、販売、清掃ができていて当たり前なのです。
しかし、このリーダーの意志に反してそれぞれが勝手に判断、行動されるという問題。
一見厄介極まりない課題・・・とも捉えられますが、これを逆に考えれば経営者にとって、とても好都合な事でもあります。
なぜなら、どの多店舗型ビジネス企業も、経営者の意志が浸透しないまま、日々
「一体どうなってる!」
「何度言ったらわかるんだ」
が当り前になっているということだからです。
他社よりも業績を伸ばせている、ある多店舗型ビジネスの社長はおっしゃいました。
「どのチェーンの店舗を見ても、『あれもこれも全然できていないじゃないか』が当り前」
「そんな会社なんて敵でもなんでもない」
「私が見本を見せてやりますよ」
「だから私は多店舗型ビジネスを始めたんです」
多店舗型ビジネスの魅力。
それは、「未だどの企業もリーダーの意志が徹底されてなく、自社だけが躍進していけるというチャンスが丸見えの、とても魅力的なビジネス」と言えるのではないでしょうか?
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