ダイバーシティの時代に人を測るモノサシが一つであることのリスクについて
先日、クライアントと人材系の話をしているとき、「数年前に入社した社員よりも、後から入ってきた社員の方が優秀で、もとからいる社員たちが目には見えないプレッシャーを感じ始めている」という話題になりました。
この話し、別のクライアントでも聞いたことがあります。人材採用の体制を整えて、欲しい人材が採れるようになってくると、それ以前に入社した社員と資質や能力面で差がついてきてしまう。で、前からいる人材が新人と比べて見劣りしてしまったり、当の本人たちもそこはかとなく肩身の狭い思いをしてしまったり。
あるある…と思われている経営者の方、多いのではないでしょうか。
この現象が起こってしまう大きな理由は、人材の能力を測るモノサシは一つしかないと思い込んでいるところにあります。
学校時代を通して培われたテストの順位への意識や、「大企業に入ると人生の成功者になる」みたいな「常識的」な価値判断、つまりはモノサシが深く浸透してしまっていることに驚きます。人ってそんなに単純に測れるものじゃないのに。
「企業に所属するからには、企業の評価モノサシに従うべき」というご意見もあろうかと思いますが、企業の中の人材が、一つのモノサシで測れるほど単一化してしまっていたとしたら、これはこれで問題です。
昨今はやりのダイバーシティを持ち出すまでもなく、地球上の生命も会社の中の構成メンバーも多様だからこそ生き残れます。環境が変化したときに同じ思考、同じ行動しかとれない人が集まっているとしたら、かなり危ない。特に、何が起こるかわからない昨今の世の中では、複数の視点が必要です。なのに、人材を測るモノサシは一つしかないというのは、どう考えてもおかしい。
漫才だって、ボケとツッコミがあるから面白いし、落語だって一人で何役もやっているから聴衆を惹きつけるストーリーが生まれます。
日本のスタートアップ育成の最先端を行く田所雅之さんは「人材ゴレンジャー論」を唱えておられ、特に短期間でゴールを狙わなければいけないスタートアップにおいては、人材の多様性が重要と説きます。ちなみにゴレンジャーの5色にはそれぞれのキャラが割り当てられています。この5つのキャラが揃うと、抜けなくもれなく、しかもスピーディに事業を進めやすいということで、私も大いに納得するところです。
「そんないろいろな人がいたら、まとめるのが大変じゃないですか?」
こういうご指摘ももっともです。
だからこそ、理念やビジョンなどを使って、全員の考え方をまとめていく手間が必要なのです。
先進的な企業ではその重要性を深く理解して、本来であれば実務や客対応に割きたい時間を敢えて社員の方向性をまとめる時間に当てています。短期的な機会損失はあるかもしれないけれど、長い目で見ればそちらの方がよほど効果があるし、働いている人の満足感にもつながります。
冒頭のクライアントですが、私が今年の春、出版させていただいた「マインドポジション経営の実践」という書籍の1章を割いて、採用ブランディングの成功事例として紹介させていただきました。出版後も順調に業績を伸ばしておられ、その後人材採用も上手に進められています。これからの発展が楽しみです。
さて、貴社も同じ発展の道筋をたどってみませんか?
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