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大きな勘違いがなおらない!「システムとソフト」は違うもの

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

私の著書「アナログな会社を劇的に変える中小企業のための会社を正しくデジタル化する方法」にも書いたところ、ある読者さんから共感のコメントを頂いたことがあります。それは「システムとソフトを曖昧に混同している人が多い」ということです。

当社にお問い合わせを頂く社長さんからも「良いシステムを導入したいのです」というキーワードを多く聞きます。また業務ソフトウェアの導入で失敗した会社から「システムの導入に失敗しました」という言葉も聞きます。しかしこれらの多くの方々が「ソフト」と「システム」の違いを正しく理解しておらず、混同してしまっていると思われます。この誤解を放置したまま多額の投資判断をしてしまうことは経営的に大問題です。

そもそも、「システム」とは「多数の要素が集まってまとまりを持った組織や体系」のことを意味します。企業の「システム化」という文脈で言い直せば「ソフトウェアと従業員がまとまりをもって活動する姿」と言うべきものです。

私が「システム」という単語を初めて聞いたのは、1960年代のアメリカのジェミニ計画・アポロ計画のころの解説記事でした。宇宙開発は様々な立場の組織や人、そしてロケットや宇宙船といったハードウェアやその中で動いている(当時は原始的な)ソフトウェア、それに様々な手順や環境など、ありとあらゆるものが一体となって整然と動く必要があり、その姿のことを「システム」と呼ぶという考え方です。宇宙船の場合、たとえ一つの要素であっても想定通りに動かなければ計画失敗・飛行士の生命にかかわる事故に発展、という事態につながりますので、かなり綿密なシステム設計をされていました。それがゆえに、宇宙開発当初では失敗や痛ましい事故の連続だったのだと記憶しています。

企業の「業務のシステム化」という、宇宙開発に比べればずっと規模の小さなものであっても、そこには「社員」、「手順やルール」、「ソフトウェア」などという要素が存在し、それらが一体となって動かないと業務は進みません。つまり「システムとは会社の業務活動そのもの」を意味しているといっても過言は無いのです。それは買ってくれば良いものではないことは自明の理です。「会社の仕組みを買ってくれば良い」と思っている人はいないですよね?会社の仕組みは社長のリーダーシップのもとに組み立てられるものであり、それを手助けしてくれるのが業務ソフトです。

もう少し解説してみましょう。コピー機を買ってくる、伝票印刷機を買ってくる、ワープロソフトを買ってくるというレベルのことを誰も「システム導入」とは呼びません。ところが在庫管理ソフトや生産管理ソフトを導入しようとすると、とたんに「システムを買ってくる」という表現を使い始める人が多くなる・・・売る方も買う方も、です。

これらのソフトは、使い手の使い方や手順とうまく適合しないとまともに動きませんので、確かに「システム」であることは事実なのですが、問題はそれを「買ってくる」と表現している点です。社員の操作方法や手順は買ってくることはできません。ソフトウェアに合わせて手順がどうなるのかをきちんととらえ、それを社内マニュアル化してだれでもできるように標準化することは最低限必要です。この作業を省いてしまうと当然「運用できない」とか「思ったような効果がでない」といった失敗に直結することになります。単にソフトを買ってくるだけではすまないことがお判りいただけるかと思います。

ここまで書いて考えましたが、「システム導入」という単語はやめ「ソフトウェアの導入と、社内システムの構築」という二つの文節を必ずペアで使うようにするべきなのでしょう。

決して混同してはならない「ソフト」と「システム」。皆さんの周りでも混同したり誤解したりしている方が多いのではないかと思います。そのような場面を見たら、是非混同を解消するようにアドバイスしてあげて頂きたいと思います。

 

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