多くの社長が越えられていないマネジメントの壁を、自分だけ超えるには?
「覆面パトカーの見分け方」
如何わしい、この表題。
正しく生きている人達にとっては無縁で、口にすることさえ憚(はばか)られるワード。
しかし驚くことに、これはかつてある企業で実際に行われた社内会議の議題だったのです。
そして発表者は、そのエリアのトップという異常さ。
その日は猛暑日が続く夏の繁忙期の真っただ中で、エリアの全社員が一堂に会することなど、この日以外には無かったのでは?というほど貴重な日。
連日の疲れが溜まってきているであろう社員達に、一時の和みを提供したいという彼なりの親心だったのでしょう。
さてそんな如何わしい、ウケ狙いの会議はどうだったのか?
結果は、彼のねらいが当たったからなのか?
はたまた上司には絶対服従の企業だからなのか?
社員達からは、どっと笑いが得られる一幕となったのでした。
しかし、正直言って私はドン引き。
「これが多くの社員を指導する立場にある人間のやることか?」
いくらウケ狙いだとしても、非常識すぎる内容に耐えられませんでした。
誰もが笑っている中、私だけ顔に表れてはマズイとその場を去ろうとしたのです。
そこで
「いや待てよ」
「もしかしたら、私と同じように感じている人がいるんじゃないか?」
全体を見渡してみました。
しかし、残念ながらそんな人の姿が私の目に入ってくることはありませんでした。
この一件、他の人からの見方によっては、「部下想いのリーダーによる、ユーモア溢れる粋な計らい」かもしれません。
しかし確実に言える事は、「経営者は、こんな結束は望んでいない」です。
なぜなら、そもそもコンプライアンス的にアウトだからです。
そして大事な事がもう一つ。
貴重な時間とお金を無駄にしてしまっていること。
この事例には「人を雇う立場の人の心理」が欠如しています。
今現在、人を雇って働いてもらっている方であれば、何も言わずともおわかりのことでしょう。
経営者とは、決して安くはない人件費を刻一刻と、常に払い続けている立場の人です。
常に「血が流れている」という認識を抱いている、と表現してもいいのではないでしょうか。
実際に人件費を払う立場になってみればわかりますが、たとえ数分、いや数秒であっても、結果につながりそうもない無駄な行為を目の当たりにしますと
「まぁ、そのくらいはいいだろう」
「羽を伸ばしてもいいんだよ」
とは・・・、なかなか思えないものです。
すると、こんな意見をいただくかもしれません。
「ケチだな~」
「そのくらい、いいじゃないか」
「たかが数分なんだから」
「息抜きくらいさせてあげたら?」
しかしそのたかが数分が、どのタイミングの数分なのかが重要なのです。
この事例は、毎日営業が繰り返されている、とある1日のうちの数分ではありません。
多くの社員が一堂に会する貴重なタイミングという数分なのです。
業績を上げていきたい経営者であれば、そんな時だからこそ、社員、スタッフ達には「前進」という選択をしてもらいたいところです。
そんな時だからこそ、各リーダーからは「ズバーン」と結果につながる華麗な一手を繰り出してもらいたい、と願っていることでしょう。
よって、そんな貴重かつ、大事なタイミングを潰してまで「ウケ狙いの発信をする」など、お話になりません。
更に、そのウケ狙いの表題が非常識すぎて、全社員に悪い影響を与えるかもしれないとなってしまっていますと、
「一体誰だ!」
「そんなことを発表したのは」
など、怒り狂う社長が現れてもおかしくないでしょう。
さて前置きが長くなりましたが、この事例のエリアのトップのように、多店舗型ビジネスのマネジメントにおいて
「社長の望まない方向に突っ走られるという人の問題」
は、残念ながら発生しやすいものです。
なぜなら多店舗型ビジネスは他業態と比べて、各地に営業所や店舗が点在しているという特徴があるからです。
社長の目の届かないところが多くなればなるほど、望まぬ脱線は起きてしまいやすくなるものです。
いかに、社長の望まない方向に突っ走られるという人の問題を無くせるか・・・?
実は、この問題には共通点があります。
それは比較的「優しい系の社長」の下で多発してしまっているということ。
しかしここで私はただ単に
「社長は優しくてはいけない」
「鬼になれ!」
などと言いたいわけではありません。
社長個人の特徴とは、言い換えれば誰にも真似ができない強みです。
そんな強みは無くすべきではありません。
強みは無理に変えようとせず、磨き上げた方が会社の業績を上げていけるからです。
この問題で注目したいのは、同じ優しい系の社長でも、業績を上げていける方と下がっていってしまう方とに別れてしまう点です。
なぜ同じ優しい系社長でも、業績に差が出てくるのか?
その違いを今回のコラムで、1つ挙げますと
「社長が、自己発信しているかどうか」
があります。
まず先に言っておきたいのは、これは
「発信しているかどうか」
ではありません。
「自己発信しているかどうか」
です。
ただ発信するという事は、例えば誰か有名な人の言葉を借りて
「〇〇はこう言った。■■■■だと」
と言っても、これも「発信している」という事になります。
努力は、さほど必要ありません。
ところが、自己発信するというアクションは、ただ「発信する」と比較すると全然違います。
誰かの言葉を引用するのではなく、100%自分自身の主張を発信するという事です。
当り前ですが、自分の主張は全て自ら生み出さなければなりません。
この生み出すというアクションが大変なのです。
試しに自分の主張を形にして、世に掲げてみようとしたらわかりますがそう簡単にできません。
その理由はいくつかありますが、ネックとなるのは2点。
1.時間がかかる
2.恐怖を感じる
ここで、2がどういうものか?
それは、例えば
「誰かに否定されたらどうしよう」
です。
昔に比べて今は
「多様化の時代だ」
「考え方は人それぞれ」
そんなフレーズが目立つようになってきました。
ところが、実際に発信してみたらどうでしょう。
「え?」
「誰も賛同してくれないぞ」
「それどころか、否定されたんだけど・・・」
これが現実です。
思わず
「誰だよ、多様化の時代だって言ってたのは?」
と突っ込みたくなる程です。
中にはこれでもか、と厳しく批判してくる人もいますし、
更には
「お~い、みんな~」
「コイツ、こんな変な事言ってやがるぞ~」
と、多くの人の前にわざわざ吊るし上げようとしてくる人まで現れます。
社内において、社長から従業員に発信するという形であれば
「社長が変な事言ってやがるぞ~」
などと、なることはまずありませんが、
発信内容がズレていた場合に、上記のような悪い反応が従業員サイドにくすぶり始める・・・と捉えても大差ないと思った方が良いでしょう。
社長が自己発信をする
これは一見
・時間の無駄
・ストレスが溜まる
という行為に見えます。
日頃、いかに会社の業績を上げていくか?
一分一秒が大事な経営者にとって、時間の無駄を感じ、しかもストレスが溜まる行為ほど嫌な事はありません。
その為か、多くの社長が自己発信するという行為から距離を置こうとしています。
中には「発信さえしない社長」もいらっしゃいます。
しかし、それでも私は言い切ります。
「社長は自己発信をし続けるべきである!」
その理由は1つ。
自己発信は、社長の必殺技だからです。
社長である貴方に一つ質問です。
「〇〇社長、貴方は何の為に『誰にも雇われない道』を選んだのですか?」
貴方が「誰にも雇われない道」を選んだということは
「違う違う違うそうじゃない」
「こうあるべきなんだ!」
そんな自己主張があるからではないですか?
当り前ですが人間にはテレバシー能力はありません。
自分の言いたい事は、発信しなければ相手に伝わることなどありません。
たまに
「一緒に仕事をしていればわかってくれるだろう」
「君は一体何年私と仕事をしてるんだ?」
「いい加減わかれ!」
というマネジメントを目の当たりにすることがあります。
はっきり言いますが、これでは社長の想いは伝わりません。
自分の主張を発信していなければ、いくら長年一緒に働いていようが、
貴方の本心をわかってくれる人など、ほんの一握りです。
社長が会社の業績を上げていきたいのであれば、いつまでもそのほんの一握りに頼っているわけにはいきません。
社長はどんなに苦しくても、辛くても、自分の主張を掲げ続けるべきなのです。
社長は、これまで世の中に無かった主張を内に秘めているはずです。
その社長の本心を知っているのは社長ご本人だけです。
そしてそれを歪みなく、正しく発信できるのも本人だけなのです。
厳しい言い方になってしまいますが
・誰かの言葉を借りて発信する
・そもそも発信などしない
などは、誰かに雇われている人でもできることです。
誰にも雇われていない、そして結果を出せる社長とは
・自己主張をこれでもか!と発信し続け
・その熱意はやがて伝わり、「そうだそうだ 社長のおっしゃる通りだ!」という共感を得られ、仲間が増えていき
・やがては社長がうっかりしてても、「社長、それはもう私がやっておきましたから」となり、
・「そうそうそう、それなんだよ、君は私のやりたい事がよくわかったね!」となっていくのです。
貴方はいかがでしょうか?
・自己の主張を発信していますか?
・その発信は誰かの言葉を借りていませんか?
・これまで世の中に無かった、貴方ご自身の言いたい事を発信できているでしょうか?
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