スムーズな事業承継のために取り組むべきこと
事業承継を考えるタイミングは、人それぞれです。ですが、残された社員や家族、後継社長のことを思うならば、早いタイミングから準備することをおすすめします。
事業承継の準備の中で、最も重要かつ、時間のかかるものは、「財務」を中心とした会社づくりです。なぜなら、「財務」の実務は、時間が経てば経つほど、効果が大きくなるからです。
例えば、財務中心の会社づくりをして、毎年1,000万円の現金が増えていく状態になったとします。その場合、3年経てば3,000万円、5年経てば5,000万円、10年経てば1億円といった具合に、時間の経過とともに、お金や利益を積み増すことができるからです。
多くの社長は、引退間際の60歳くらいになってから、事業承継のことを考えます。ですが、それでは遅いのです。
できれば、40代、50代のうちから事業承継を見据えた、財務中心の会社づくりをするべきです。なぜなら、自身の年齢と引退時期から逆算して、財務の実務に取り組むことで、将来の可能性を大きく広げることができるからです。
今、事業承継を考えている同族会社の社長の多くは、景気が良かった時代を経験しています。そのため、多くの社長が「売上」を増やすことが経営の安定につながると考えます。
ですが、今は「失われた30年」と言われるように、バブルや高度経済成長期のような時代とは、全く違う状況です。売上を増やすことは、ものすごく難しい時代になっています。
また、売上を追いかけている社長ほど、お金のことを人任せにしていることが多いです。経理や税理士に「財務」を丸投げし、売上だけ追い求めます。
その結果、いつまでたっても、正しい財務の考え方を知らないまま、経営のかじ取りを続けます。そのため、「お金が足りなくなったら、銀行から借りればいい」と短絡的に考えて、銀行依存の会社になるのです。
財務を知らない社長ほど、銀行からお金を借りる時に、連帯保証人に入っているケースが多いです。連帯保証は、会社で借金が返せなくなれば、社長個人が自分の財産をもって借金を返す、大変重い契約です。そしてこれが、事業承継の時に、ネックになります。
もし、あなたが社長に就任する時、いきなり多額の借金の連帯保証人になったら、どんな気分でしょうか?後継社長に最初から、そのような境遇を味あわせてしまうのは、酷な話です。
社長の価値観は、会社の価値観とイコールです。そのため、先代社長が間違った価値観で経営していれば、当然、後継社長もその価値観を引き継ぐことになります。
だからこそ、スムーズに事業承継を進めたいなら、まずは先代社長が「売上至上主義」から脱却して、「財務至上主義」の経営にシフトすることが大事なのです。
事業承継はもちろん、会社を存続させるために重要なのは、「会社にお金を残すこと」です。お金さえあれば、会社は倒産しません。
しかし、銀行借入に依存していたり、そもそも資金不足・赤字体質の状態だったりすれば、これは「財務」を理解した経営ができていない、というシグナルです。
このシグナルを無視したまま、後継社長に引き継いでも、根本的な問題は残ったままです。その結果、後継社長は、「借入依存」「資金不足」「赤字体質」でのスタートを余儀なくされるのです。
大切なことなので、あえて繰り返しますが、事業承継をスムーズに行うためには、「財務」こそが重要なのです。「財務」なくして、事業承継の成功はあり得ないのです。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。
あなたは今、社長としてどんな未来をつくりたいですか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
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