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利益の源泉を追い求める

SPECIAL

親子経営コンサルタント

ビジネス・イノベーション・サービス株式会社

代表取締役 

オーナー社長と後継者のための、「親子経営」を指導するコンサルタント。みずから100億円企業を築くも、同族企業ならではの難しさや舵取りの大変さで苦しんだ実体験を指導。親から子へ失敗しない経営継承の極意として「親子経営」を伝授する。

私は以前建設資材販売会社を経営していた。建設資材メーカーや商社から仕入れ建設会社に販売するのがメインの商社ビジネスだった。建設会社の値下げ要求の厳しさ、商社間の競争などにより薄利であることが当たり前なビジネスだった。よって会社の利益を上げるには売り上げを上げていくしかないと思っていた。

また、建設業界の商慣習として建設会社からの支払いは大手建設会社、中小建設会社に限らずほとんどが手形によるものだった。手形の期間は短くて3か月、多くは4か月先の手形、中には5か月先の手形まであった。当然のこととして自社の支払いも4か月の手形で支払っていた。

当時は経営が安定していたこともあり金融機関との取引に余裕があった。手持ち手形は銀行で低金利で割り引かれ現金化されていた。運転資金が不足すれば短期貸付を簡単に利用させてもらっていた。よってそのころは売り上げが安定しておれば運転資金を心配することなどなかった。

このような運転資金の形態、流れであると売り上げが右上がりを続けると持ち手形がどんどん増えることになる。ある月などは持ち手形が十数億円もあるので驚いたことがある。逆に売り上げが右下がりを続けると持ち手形が無くなり途端に資金不足に陥ることになる。その都度金融機関の短期貸し付けで賄っていた。

私が父親から30才で経営を引き継いだころはこのような状況だった。建設資材販売商社ということで薄利多売が常であり、売掛の多くが手形で回収されていたことも併せると利益を上げていくには売り上げを上げていくしかないと考えていた。利益率を上げることが難しいなら、粗利総額を上げるにはまず売り上げ拡大していくしかない。

そして売り上げ拡大をしながら利益率が高い商品、ビジネスを探していこう。そう決めてから全国を市場と考え全国各地に営業所、支店を開設していった。ときは公共工事悪玉論などがはやし立てられ建設不況真っ只中だったが順調に売り上げは右上がりを続けていた。いつしか売り上げが100億円を超し115億円をピークとして右下がりに転じることになる。

先に記したように売掛、買掛ともに手形であったため手持ち手形は無くなり資金不足に陥る。売り上げが多くなっていたため仕入金額が増え支払手形も金額が多くなっていた。自振の支払手形を落とすため毎月多くの資金が必要となった。メインバンクとの信頼が薄らぎ借り入れが出来ずあえなく不渡りを出すことになった。

以上私が会社を潰すに至った簡単な経緯だ。利益率が低い建設資材以外の商品やビジネスにいくつか出会うことができていた。なかにはこれから面白い展開になると考えていたビジネスモデルにも出会えていた。しかし万事休すであった。自らのビジネスモデルを大きく変えるところまで行きつけなかった。

このような経験をした私が経営コンサルタントとして顧客を持たせてもらっている。他の経営コンサルタントと違い経営者としての実体験、実経験を数多くしているので客先の経営状況を見る場合、見る視点が違っている。「会社を決して潰さない経営」という視点で私は顧客の経営を見させてもらっている。

1.余裕のある現金を持っているか

1.資金繰り表を作成しているか

1.キャッシュフロー計算書を重視しているか

1.各金融機関との取引状況は適正か

1.営業利益がでているか

1.売上総利益の内訳を精査しているか

以上のような点を重視し見続けている。

先日、不動産エージェントをしている私の次女が私に意見を求めてきた。現在次女は売買の仲介をメインとしている。先々は自分で不動産物件を持ちたいと思っている。次に手掛ける事業として不動産物件を買い取りリフォームしたうえで売却することをやりたいと言う。彼女なりのセンスで価値を上げ売るのだという。

お父さんどう思うと聞くので「それでいくら儲かるのや」と聞いてみる。娘が言うのに10%くらいかなと。「そりゃあかんわ。30%儲かるくらいでないとやめとき」と言うと顔を赤らめて怒ってしまった。そのあとなぜ30%最低でも利益がないと事業として面白くないのかを説説と話ししぶしぶ納得してもらった。

また、先日かつての後継者経営塾の塾生が経営者となって久しぶりに訪ねてきた。父親の跡を継ぎ2年半が経っていた。久々の再会ということで近況をいろいろ話してくれた。新しい取り組みとして本社事務所横の土地にカフェを併設した店舗を1億円で建設したのだという。渋る金融機関から1億円融資を受けてのことらしい。

写真を見せながら建設にかけた彼の想いを熱く語ってくれた。そこで私は彼に「ところでその施設でどれだけ儲かるのや」と聞いてみた。そんなことを聞かれるとは思っていなかったのかしばらく考えているようだった。「近くにこのような施設がないのでやってみたかったのです。正直どれだけ儲かるのかと考えてなかったです」と言う。

彼の会社は父親が残した事業がかつては大当たりをして大儲けをしていた。その後その事業に陰りが見え始め早急に次の柱となる事業をこしらえなければならない状況にある。そんななかでの新しい取り組みということで彼なりに努力していることは理解できる。何かしなかればという気持ちが焦りを生じさせているのかもしれない。

そんな彼に帰り際、帰ったら決算書の売り上げ総利益の段をよく見て欲しいと言った。ようするに1年かけてみんなでどれだけの粗利益を上げたかがそこに載っている。その粗利益をよく詳細に精査し分析してほしい。どの商品、どの事業がそれぞれどれだけ利益を上げているのかをじっくり見て欲しい。そうすれば自ずとこれからどうすればいいのかが見えてくるからと。

私も同じであったが後継者はえてして利益に鈍感なところがある。既存のビジネスモデルを引き継ぐということもあるのだろうが儲ける、稼ぐということへの意識が希薄な気来がする。後継者には特に利益がどのようにして上がっているのかその利益の源泉を追求、探求してほしいものだと思っている。

 

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