経営者が熟考すべきとき
DX時代、経営者が対峙すべき情報は日々その総量を増しているようなところがあります。意思決定に使える時間がどんどん短くなっており、次から次へと即断即決が求められるようになっていないでしょうか。
もし御社もそうだとすると、それは間違いなく危険な状態へと近づいているかもしれない症状です。対応すべき情報の供給チャネルばかりが高度化され、自らの周辺がそれについて行けていない状況を示しているからです。
浅い思考で物事を決める癖がついてしまうと、周りが自己防衛の仕組みを作り始めます。それは経営者の目配りが全方位的になされない中で、何か不具合が起きたときに責任を取らされることへの事前予防策なのです。人間だれしも自分が一番可愛いので、社員のだれもがこの仕組み作りに最優先で取り組み始めます。そしていったんそれが定着してしまうと、組織はどんどん不活性な色合いを強め、やがては言ったことしかやらない人たちの集まりへと変質してゆきます。
それを予防するために、経営者は重要な意思決定の場面において、時に熟考できる体制を確保しておかなくてはなりません。いつもでなくても良いのですが、「これは重要だ」と思った課題については、多面的思考を巡らし、壁打ち相手に相談し、自らの信条と照らし合わせた反芻を行い、組織のあらゆる部署と人に目配りをする。
そうするためには、このコラムでも何度も申し上げていますが、社長がヒマでなくてはいけないのです。なかでも即断即決できる課題は組織に投げ、熟考すべき課題に集中できるよう環境整備を進めておくのはイロハのイだと言えます。
でも、気を付けてくださいね。そのような仕組み作りや組織作りは「明日からこうしよう」と言えばすぐにそうなる、という性格のものではありません。むしろ、新しいシステムの稼働時期には、事細かな指導と情熱的な反省が不可欠なのです。
「やってみて、言って聞かせて、やらせてみて、褒めてやらねば人は動かじ。」とは山本五十六のコトバと伝えられていますが、まさにこの通りなのです。それを克服して、経営者は初めて自分の時間を持てるようになるのです。そうやって確保した時間を、ここぞという時に使って熟考し、社員のだれもが思わずナルホド感を共有するような意思決定を見せてください。そうすることでしか組織の活性化や能力向上は図れないのですから。
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