音楽好きの沼【デジタルワイヤレス編】
音楽好きの沼【アナログ編】 から続く
驚愕のノイズキャンセリングイヤホン
最初のノイズキャンセリング機能の初体験は10年前。
それはワイヤレスタイプのヘッドホンで、小さい音量でも没入できる音楽体験は大変魅力的なものでした。フランスのメーカー製のそれには、音質調整や残響時間、左右の音源位置なども変えられる機能が付いていました。そのヘッドホンは有線でも使用できるのですが、それらの機能はワイヤレス接続時のみ利用できる仕様になっています。なので、もっぱらワイヤレスでの使用をしていました。
有線よりもワイヤレスのほうがイイ音がするので気に入ってたのですが、でかいし重いし長時間使用には向かないものでした。それを持って出掛けてみるのですが、かさばるので段々持ち出さなくなりました。ワイヤレスでノイズキャンセリングつきは、飛行機や電車の移動が長い出張時にこそ欲しいのですが、持ち運ぶのには重たいのは致命的でした。(はりきって大変立派な専用ケースも買ったのですが…)
↑初めて試したノイズキャンセリング機能つきのワイヤレスヘッドホンParrot Zic(真ん中のまるいのはケーブル類のケース)
5年程前、初めてノイズキャンセリング機能つきのワイヤレスイヤホンを購入しました。イヤホンですから小さくて、出掛けるときに軽量でかさばりません。「待ってました」という感じです。ノイズキャンセリング機能は、簡単に言うとマイクで拾った騒音と逆位相の音をスピーカーから出すことで騒音を打ち消す仕組みです。
購入したワイヤレスイヤホンはノイズキャンセリング用のマイクと別に、電話で会話するためのマイクも付いていました。音楽を聴いている最中に電話がかかってきても、そのまま通話もできるわけです。これはありがたい。お客様からの電話が、いつかかってきてもハンズフリーでサッと取れるのです。
当時は携帯電話専用のイヤホンマイクを愛用していましたが、片耳用で騒音が大きい場所だと聞き取れないこともよくありました。また、音質も悪くて、決して音楽を聴くようなものではありませんでした。首掛け式で耳から外した際にも落としにくいのも、外出することの多かった私には嬉しいデザインでした。
↑外出時も持ち出せるようになったノイキャンイヤホンBose QuietControl 30
2年前に二子玉川の蔦屋家電で新製品をいろいろ試聴していたら「おおっ!」と思う音がするのがありました。自分の携帯電話に接続して、いつも聴いている曲を鳴らしてみると今まで聴こえてなかった音が聴こえるのです。
年齢とともに聴力は落ちてきて、特に高い周波数を聴こえなくなっていくそうです。そろそろ、そうなってくる年代ですから聴こえてなかった音が聴こえると、とりわけ興奮する訳です。聴こえなくなる前に楽しもうと、すぐさま買ってしまうのでした。
↑蔦屋家電で視聴して「ぶっ飛んだ」一世代前のノイキャンイヤホンSONY WF-1000XM4
あくなき「音質」と「没入感」の追求
秋葉原にeイヤホンというヘッドホン・イヤホン専門店があります。そこは、エントリーからハイエンドモデルまで、すばらしく品揃えが良くて何でも試聴ができるのです。(誠に危険なお店です)また、秋葉原ということもあってマニアックな店員さんばかりでとにかく詳しい。店員さん達はYouTubeでも新製品レビューをガンガンに発信しています。時代ですね。
そのお店に行ったのは、お目当てがあってのことでした。画期的なノイズキャンセリング機能つきワイヤレスイヤホンが出ているとの情報を得ての事でした。DENON PerL Proというやつです。医療技術を応用したパーソナライズ機能で自動的に聴こえ方を測定、あなたに最適なリスニング・プロファイルを作成、音楽を本来のあるべき姿でお届けするというのです。
小一時間もの試聴の上、驚愕の音質にまたまた購入してしまいました。(もう、いっぱい持っとるやん!)店頭でも早速、自らの聴覚を測定して自分用のプロファイルを作成してみました。測定結果はアプリでビジュアル化してくれるのです。これによると、私の耳はどうやら低音がよく聴こえるようで、気になっていた高音の聴力はそこまで落ちていなかったようです。
↑ユーザーの左右それぞれの耳に合わせて音質調整する究極のノイキャンイヤホンDENON PerL Pro
↑私の両耳のプロファイルをビジュアル化したものです(12時の方向かた時計回りに低音から高音になっているそうです。左右でちょっとだけ違います)
しばらく悦に入って聴いていましたら、左右で音が揃わなくなってくるのに気づきました。右の耳の機密性が失われるからです。私の耳の穴は右側の方が大きいようなのでイヤーピースのサイズを替えて対応していますが長らくつけていると、どうしても右側だけ隙間があいてくるようです。
YouTubeを見ていたら、交換用イヤーピースのおすすめ動画が出てきました。ここのところワイヤレスイヤホンの動画ばかり見ていたからでしょう。YouTubeのAIが勝手に勧めてくるのです。その中に良さそうなのがありました。Amazonなら返品可なのでポチッとしてみました。(これがまた危ない)
このイヤーピースは、医療グレードのシリコンとウレタンフォームを組み合わせた製品です。ウレタンフォームの追随性と医療グレードのシリコンの肌触りで、気密性と自然なつけ心地を両立しているそうです。確かにウレタンフォーム製のイヤーピースはフィット感はいいのですが、じきに耳がかゆくなります。シリコン製のイヤーピースは着け心地はいいのですが、なかなかフィットしません。開発者はヘビーユーザーの心持ちをよーく知っています。
届いたイヤーピースをDENON PerL Proの純正イヤーピースと交換して着けてみると、なかなかイイ具合になりました。長時間聴いていても右耳だけ低音が薄れていくことがなくなりました。音楽を聴いた後、耳から外すとイヤーピースが変形していて、私の耳の形になっていました。
イヤホンが高性能化したことで、性能発揮のためにどんどん要求される気密性がシビアになっていた訳です。なんだか最近の住宅と似ています。
↑DENON PerL Pro用にゲットしたハイブリッド型高級イヤーピース(半透明の外側部分は医療グレードのシリコン、オレンジ色の内側部分はウレタンフォーム)
↑DENON PerL Proにハイブリッド型高級イヤーピースsymbio eartipsを装着したところ(本体がでかいので矢印の部分とイヤーピース両方で耳に安定させるデザイン)
そうしてYouTube情報で購買意欲をかき立てられる中、先代イヤホンである「SONY WF-1000XM4に相性バッチリの神イヤーピース!」みたいなのも紹介されていました。実は新しいイヤホンが来たらSONYのは中古として売ってしまおうと思っていたのですが「所有しているうちについでに『神イヤーピース』とやらを試してからでもいいかな」と思って、またまたポチッと。「どうせAmazonだし返品できるし」と気軽にお試し購入してしまうのでした。(結果としてこれが良くないのですが)
ユーチューバーの中にも色々な人がいます。無名時代は自腹で買ってきたもので試してレビューしているのですが、だんだんフォロワーが増えてくるとメーカーさんが新製品を貸してくれるようになるのです。そうなると次第に忖度して批評の切れ味が目に見えて悪くなってきます。マニアにとっては、こういう人のユーチューバーとしての価値は終わりです。
YouTubeでは、最初にフォロワーが多く忖度上手な有名ユーチューバーばかりが出てきますが、同じジャンルをたくさん見ているうちに徐々に無名どころも登場するようになってきます。YouTubeのAIといい感じでつきあうためには、それなりの閲覧量が要求されるようです。
WF-1000XM4用の『神イヤーピース』は真鍮製のパイプが挿入されたもので、高域が変化します。実際にはハイハットやシンバルの音がよりリアルに近づいて聞こえます。真鍮製パイプに高域が反響することでそのような効果があるのでしょう。
素材の粘着力はすごいものがあり密着度は抜群、機密性が確実に保たれます。耳から外すとイヤーピースだけが耳の中に残っていたりします。よって汚れも付きやすいです。結局この音も気に入ってしまい、SONYのイヤホンは結局売るのをやめてしまいました。(ぜんぜんお試しちゃうやんか。笑)
↑信頼できるユーチューバーが手持ちのSONY WF-1000XM4向けに絶賛していたイヤーピース日本ディックスCOREIR
↑純正イヤーピースよりかなり出っ張るため、充電ケース内部に余裕がある機種でないとケースに収まりません
「コーデック」の新しき沼
コーデックとは、「音声データを圧縮する方式」のことです。スマホやPCからワイヤレスイヤホンなどに音声データをBluetoothで送る場合、データ量が大きく時間がかかり遅れが出てしまいます。特に動画やeスポーツなどのゲームでは動画と音声のズレは大きな課題です。圧縮技術にはさまざまな方式があり、それぞれ遅延・圧縮効率・音質などが異なります。その圧縮方式の総称を「コーデック」と呼びます。
最近奮発したワイヤレスイヤホンDENON PerL Proでは、aptX Adaptiveという最近のコーデックに対応しているのが分かりました。ちなみiphoneなどApple製品はAACというコーデックです。AACも十分音はいいように思うのですが、せっかくなのでaptX Adaptiveも試してみたくなってくるのが人情です。
↑様々なBluetoothコーデックの一覧(音質と遅延がポイントみたいです)
※ちなみにCDの信号は16bit 48khzです。簡単に言うと量子化ビット数bitは音の大小の幅、サンプリング周波数khzは音に周波数の幅に影響します。
そうこうしていると、またまたYouTubeにaptX Adaptiveコーデックで接続できるトランスミッター(信号形式変換・送信機)が登場するようになってきました。(どうやらYouTubeのAIに見透かされているようです)
スマホやパソコンに差し込むだけで、高音質で伝送時に遅延の少ないaptX Adaptiveコーデックで接続できるというのです。またもや「返品可」ということでAmazonでポチッと。「どうせ大して違わないだろうけど」と思いつつ、届いたトランスミッターを差し込んでDENON PerL ProをaptX Adaptiveコーデックで接続してみました。
すると、これがまた劇的に音質がいい。ただでさえ良かったのに、さらに良くなる訳です。もはや有線ヘッドホンのハイエンド機種並みです。びっくりしてしまい返品せずに愛用することに。しかも確かに音の遅延も少なく、動画を見ている時の微妙な違和感が解消されました。
対戦ゲームなどでは「音の遅延」は大問題ですから、この分野はまだまだ発展するものと思われます。「こんなに小さなパーツ(半導体チップ)で音質が変わるのならば、最初から入れとけばいいのに」と思うぐらいでしたが、色々と大人の事情もあるのでしょうね。
↑パソコンやスマホとaptX Adaptiveコーデックで接続できるトランスミッター(左側のはUSB-C変換アダプター)
↑手持ちのiPhoneはコネクタがLightning仕様なので、このようにアダプターだらけになります(でも音はかなり良くなります)
デジタルになってしまえば「音質追求もおしまい」と思っていましたが、なんのなんの。またしても「音質熱」に火がついてしまいました。悪い音質で聴いていた懐かしい曲を、改めて高音質で聴き直します。「学生時代の音楽仲間たちにも聴かせてやりたい。」いろんな顔が浮かんできます。
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