音楽好きの沼【アナログ編】
「アナログレコード人気」で再発
最近、アナログなものが見直されています。特に若い人たちとっては新鮮で、デジタルネイティブの彼らには魅力的なもののようです。デジタルにはない「一期一会」な感覚というか、アナログ特有の「ばらつき」のあるところがかえって好まれているそうです。
今年、山下達郎翁のRCA/AIR時代の8作がレコードとカセットで再発されました。リマスター音源によるもので、レコードは180g重量盤という分厚いやつです。(NO MUSIC, NO LIFE. や NO MUSIC, NO CLOUD. に関連記事があります)オリジナルの発売年代は1976年〜1982年と、そのむかし音楽を聴き始めた頃のものです。アナログレコードには物質的な「所有感」や、聴く行為そのものの「わざわざ感」があります。それを「わずらわしい」と思うか「おごそか」と感じるかは、その人それぞれです。
と、うんちくを語っているということは。そうです。またもや大人買いしてしまいました。執拗に自身のラジオ番組で宣伝する山下達郎翁のトークにまんまとやられてしまったのです。彼はいつも「業務連絡」と称してさらっと且つ、しつこく語りかけます。宣伝上手なのです。
↑山下達郎のリマスター再発アナログ盤(また、かさばってしまいます)
そうして懐かしい音源を当時では考えられないほどクリアな音質で聴いてみるのですが、これがまた一興といいますか、自身の記憶とはずいぶん印象が違う訳です。しかも、アナログレコードでA面B面をいそがしくひっくり返しながら聴くそれは、動作は昔のままなのに聞こえてくる音は別モノ。不思議な体験です。
ついつい、山下達郎以外の他のお気に入りタイトルはどうなのだろう?と「探求の虫」が目を覚まします。何の気なしにネットで洋楽の中古レコードを検索してみると、あるわあるわ。いまや世界中の出品を漁れるのですから、極めて危険です。
2、3枚試してみるか。とポチッとカートに。中古品ですからレコードそのものは比較的安価ですが、実はLPレコードは大きさ的に送料高めです。海外からのものなどは、完全に送料のほうが高くつくものすらあります。(それでも欲しいのです 笑)
洋楽のアナログレコードにも音質のばらつきは甚だしくあります。レコード盤面の無音部分に刻印されている番号(マトリックス番号)が若いほうが元の音に近く、いい音とされています。(これにも落とし穴はありますが。そのカラクリは下のリンク記事をご参照ください)
また、知る人ぞ知るSTERLING刻印やMASTERDISK刻印と言われるものもたまに見かけます。これは、主に米国・カナダなど北米で製造・流通したレコードに刻印されているもので、Sterling Sound社やMASTERDISK STUDIOS社といった独立系のスタジオでマスタリングされたことを表しています。
当時こういったスタジオには優秀なエンジニアがいて、音質にこだわるアーティストやプロデューサーの意向で利用されたようです。わが家のコレクションにも数枚ありましたので、画像で紹介しておきます。これらの刻印を見つけた時には、俄然テンションが上がるわけです。(棒つきアイスの「当たり」みたいなものです)
↑アナログレコードの刻印【STERLING】
↑アナログレコードの刻印【MASTERDISK】
中古レコードの「当たり」パターンは、まだあります。見本(SAMPLE)盤です。見本盤は初回生産のファーストプレスで、多くは試聴が中心であり再生回数が少なく、コンディションが良いものが多いのです。正式発売前に先行してラジオや出版関係、レコード販売店の店内放送用などにアピールするためにファーストプレスの出来立てホヤホヤのレコードが見本盤として配られるのです。
ファーストプレスというといちばん新しいマスター盤からプレスされるので、高音質です。見本盤のため販売・転売禁止のはずですが、中古市場では密かに流通しています。(わがコレクションには3枚ありました!)
↑マニアには貴重な、見本(SAMPLE)盤
アナログレコードは、生産原理的に音質にばらつきが出ます。凹面であるレコード盤をつくる際の凸面のスタンパーがプレスしているうちに徐々に劣化するからです。これは宿命とも言えるもので、大量にプレスされるものほど音質の落差は大きいと思われます。中学生の頃、小遣いをはたいて買った売れっ子アーティストの洋楽レコードには、風船の中で鳴っているようなひどい音質のものがありました。いちばんカスに当たってしまったのでしょうね。
【マニアのかたへ①】アナログレコードの生産上の音質の違いがなぜ発生するのか?とっても分かりやすい記事がありましたのでご紹介しておきます↓
https://ameblo.jp/cottonclubyears/entry-12599210992.html
イイ音に付随する「モノ」たち
アナログ系のものは維持管理の影響を受けやすいものが多いものです。レコード盤もそうです。学生時代はスプレーさえしとけばいいものと思っていましたが、どうやらそうでもないようです。ましてや中古レコードともなると保管状態はさまざまであり、届いた荷姿から開封する前からカビ臭いものすらあります。
中古レコードを手に入れるようになってから、レコード盤のケア用グッズも増えました。クリーニング液Aと保護液Bがセットになったものや、微細な繊維の全てが両端まで連なっていて糸くずが全く発生しないというクロスなどの専用品の面々です。
↑「レコード盤」のケア部隊(レコードコレクターでも高名な山下達郎翁も愛用とのことです)
そして、中古レコード盤によくありがちなのは「反り」です。針圧が低いと針とびしそうなぐらい、レコード針が上下に振られる盤もあります。長らくレコード棚の中で斜めっていたのでしょう。こういうのにもしっかり対応製品がありました。
スタビライザーという「重し」とそれを効果的にするターンテーブルのシート「ゴム」です。使用しているスタビライザーは600gもあり、ぶんちんとしても立派な重量です。ターンテーブルのシートはタングステン(金属)配合のブチルゴム製のもので、真ん中がすり鉢上にくぼんでいます。それにより「重し」による反り矯正効果が高まるという仕掛けです。
↑「レコード盤」の矯正部隊(上がシート、下がスタビライザー)
さらに、レコードプレーヤーのキモとも言えるレコード針もお手入れ大事なデリケートさんです。レコード針の多くはダイヤモンド製だったりして、小さいくせに高価です。また、音質への影響は極めて大なので、日頃のケアは必然です。
古いレコードをかけると、A面だけでもレコード針がホコリだらけになる時もあります。これを取るときに使用するのが針先専用クリーナーで、キャップにブラシが固定されています。針先とレコードの寿命をのばします。レコード盤のほうも演奏前にホコリを取る習慣が大切です。(そう言っておきながら私はあまりやってませんが 笑)
↑「レコード針」のケア部隊(左が針先専用クリーナー、右がレコード盤用ブラシ)
「聴覚」と「視覚」どっちが確かか?
現在使っているレコードプレーヤーは、シンケン時代のお客様から譲り受けたものです。その際にカートリッジ(レコード針ユニット)と交換針をつけてくれました。中学校入学を機に兄貴と共同で購入したレコードプレーヤーはもうとっくにダメになってしまい処分しましたが、使っていたカートリッジだけは取ってありました。
山下達郎の再発レコードを予約してから、待っている間にふと思いました。せっかくの高音質新品レコードをかけるのに「針は大丈夫なのか?」 試しに古い針先をマイクロスコープでチェックしてみました。すると、劣化の度合いが目に見えるぐらい進行していました。
↑45年前のSHUREのカートリッジ(レコード針)
↑(拡大画像)真っ黒です。これはあきませんわ
↑レコードプレーヤーにつけてくれたAudeo-Technica の予備の交換針(拡大画像)先端がミイラ化しています
↑レコードプレーヤーにつけてくれたAudeo-Technica 1974年発売のカートリッジ(拡大画像)意外とこれは生きてます
レコードプレーヤーにつけてくれたAudeo-Technica 1974年発売のカートリッジは、意外にも見たところではいい状態のようでした。でも、山下達郎翁の再発リマスター盤に敬意を表してレコード針は新調することにしました。音にケチがつかないように聴きたい「マニア心」です。
↑新しく購入したAudeo-Technicaのエントリーモデル丸針カートリッジ(拡大画像)
【マニアのかたへ②】レコード針にも様々な形状とグレードがあります。先端形状で何が変わるのか?分かりやすい解説がありましたのでご紹介しておきます↓
https://www.ortofon.jp/analogtaizen/53
永年封印されてきた「音質の沼」。山下達郎翁のせい(おかげ)で、またしても熱が再発してしまいました。しかし、音楽を聴く行為の変遷を幅広く体験できる時代に居合わせたことを幸運として、ともに楽しむのです。
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