ノーコードツールを「うまく使う」とは?
前回のコラムでノーコードツールの有効性を解説しました。大きなお金をかけられない中小企業にとっては、これをうまく使うことで小規模でも上手にデジタル化を推進できる可能性があり、大いに注目するべきものであることは間違いありません。しかし、この「うまく使う」ということが実は難しい…。今回のコラムではその難しさをざっと解説します。
まず、会社全体の業務をシステム化しようとすると、だいたいの場合は大規模なソフトウェアが必要になってきます。それが中小企業であっても、複数の担当者にまたがる仕事を全部統括する機能が必要になるので、どうしても会社規模に釣り合わない機能数が必要となってしまいます。そんな困りごとを持つ企業がノーコードツールに出会った場合、まず間違いなく以下のようなことが発生します。
全業務をデジタル化するのは大変だから、この業務をなんとかしよう
->ノーコードツールで作ってみる
ー>意外にもうまくすんなり作れて動くものができあがる
->現場で使ってみても便利でみんな喜ぶ
->「では次にこれもノーコードツールでデジタル化しよう」
・・・・・・・・・・・・・
このような試行錯誤が何回か連続します。途中までは、
なんだ、こんなに簡単ならどんどんやれば良いね
という意識になるはずです。ところが、問題はここからです。たいてい3つぐらいの業務をデジタル化したころから、様子がおかしくなってきます。例えばこのようなものです。
Aの業務ツールで入力したデータをBの業務ツールで使おうとすると、データのフォーマットが異なり変換が必要となってしまう
AのツールのデータをBに持っていかないといけないが、タイムリーに持っていかないとBを使った仕事が開始できない
BのツールのデータをAに戻す必要があるが、Aにはその入れ先が無い
こんな具合です。この事態に突入すると、担当者は調整と検討に忙殺され、素早く開発するこができなくなり、周囲から「なんだか初期のころと違ってなかなか対応してくれないね」という悪評判までたち始めます。しかし、このような状態に陥ることは当たり前なのです。なぜなら、このコラムで何回も説いている「業務の可視化」をやっていないからです。全体の業務を可視化した上で部分的な業務からデジタル化に着手するのが正しい姿ですが、ノーコードツールの利便性を目の当たりにした人は大抵「じゃぁ、試しにこれを作ってみよう」という思考に陥りがちなのです。そうなると可視化など面倒な作業をすっ飛ばしてソフトを作ってしまいます。最初はうまく行っても、業務と業務の関係性を整理していませんので、複数の業務にまたがることをやろうとすると、とたんにつまずくわけです。
これが冒頭申し上げた「うまく使う」ための高いハードルなのです。結局急がば回れ式に、業務可視化を先行させて、「どの機能からどのようにデジタル化するべきか」といったグランドデザインを先に作ることが正攻法なのです。
良いツールを見つけると、社長も担当も飛びつきがちですが、そこでぐっと立ち止まって全体を見回す必要がある。これが正しく会社をデジタル化する方法の根本的な考え方なのです。
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