「洗濯物」が喜ぶバルコニー
「お洗濯好き」の家
妻は洗濯大好きです。洗濯物はどんなに多くても文句は言われません。むしろ、少なすぎるてブツブツ言っているのをよく見かけます。現在の自宅に住み始めた頃は、洗濯物を干す場所で良く揉めたものです。
「せっかくのシンケンの家なのに、窓からの美しい景観を邪魔するな!」
という私と、
「どんな設計であろうと、洗濯物が最もよく乾くポジションに干すのが当然!」
という妻が真っ向から対立した訳です。
妻の言い分はまだありました。
「火山灰や雨が降ってきたら、すぐに取り込める場所であること」
「取り込んだ室内にも外と同じ量の洗濯物を掛ける場所があること」
確かに鹿児島市内では桜島の火山灰がいつ降ってくるか分かりません。天気予報を見ていても分かるのは風向きだけで、いつ噴火するかは予測できないからです。
妻に言われて、最初は
「そんなに洗濯物のことばかり優先して家の設計などできるか!」
と思っていました。しかし、言ってることは理にかなっていますし、毎日のことですから家事労働としても重要なことです。このような条件が有るか無いか、一生涯となれば「チリつも」で大変な違いになるはずです。
しかし、このような条件はほとんどの住宅では満たされていない条件ですし、普通の住宅での難易度は高いように思えました。
思いがけない「恩恵」
つい最近、この夏のことです。いつも洗濯物を干している2階のバルコニーで日中熱風が降り注いでいることに気がつきました。南側の屋根の先から空気式ソーラーシステム「そよ風」の排気が出ているからです。
↑空気式ソーラーシステム「そよ風」のたつの昼間の空気の動き(屋根裏の空気が屋根面を通っていく間に加熱されるのです)
《そよ風》の詳しい仕組み・特徴は環境創機さんのウェブサイトをご参照ください↓
環境創機株式会社
https://www.kankyosouki.co.jp
このように、自宅で南側の屋根の先から排気が出るようになったのは2020年からのことです。それまでは旧式のOMソーラーであったのですが、環境創機さんに教えていただいて新型の「そよ風」に改造したからです。(改造の経緯の詳しくは 夏のための、『変身』をご覧ください)
それでも3年目にしてようやく気づいた訳で、のんびりした話です。夏場にこの南側の窓を開放していたら、暖房状態になってすぐに気がついたはずです。しかし、最近の夏は「体に危険な暑さ」と言われるぐらいなので、エアコンの使用期間が長くなっていてなかなか気づけなかったようです。そういえば、私もほとんど朝夕しかここから出入りしていませんでした。
↑【2008年ごろ】視界を遮らないよう低めに干したりしていましたが…
↑【2023年】空気式ソーラーシステム「そよ風」の秘技『熱風逆噴射』を発見してから高めのポジションに
↑矢印部分が屋根面への空気の出入口になっています
↑熱風が吹き出してくる出入口周辺は高温になっています
↑ティッシュの動きに注目(熱風が吹き出している様子です)
今回、空気式ソーラーシステム「そよ風」の秘技「熱風逆噴射」に気がついてから、妻は早速残材で置いてあった細い木の棒を持ってきて、洗濯物をより高いポジションに干せるよう工夫していました。洗濯物の乾燥にこだわる姿勢には感心してしまいます。背が低いのに、見上げた根性です。「お洗濯好き」の生き様を見た感すらあります。
ふたり住まいの大空間主義
2008年ごろといえば、もう15年も前です。その頃は子供もふたりいて洗濯物も多かった時期です。現在は夫婦ふたりになりましたから洗濯物は少なくなりましたが、妻が趣味の洋服づくりをしていて出来上がった作品を掛けて置く場所が必要になってきました。
発表の日が近づいてくるとコツコツと作りためた作品がどんどん増えてくるので、掛ける場所はいくらあっても多すぎることはありません。1階の和室を仕事場にしていますが、床の間の落とし掛けには容赦なく作品が増えていきます。油断しているとzoom時のグリーンバック用に取り付けたワイヤーまでが洋服かけにされてしまいます。
↑床の間がどんどん作品ストッカーになっていきます
↑zoomのグリーンバック用に取り付けたワイヤーまでが餌食になっています
洋服づくりの作業は主に2階のリビングで行われます。手元がよーく見えるよう、ミシン作業は日中いちばん明るい場所が陣取られるのです。結果として、自宅のリビングは洗濯物も作品もいっしょくたに掛けられます。制作時期が佳境に入ると、大量の洋服が「空いているところに掛ける状態」になるのです。
住んでいる家族の人数は半分になりましたが、掛ける洋服は何倍にもなるのが、わが家の特殊事情です。一時的とはいえその都度対応しているうちに、2階のリビングにも掛けられる場所が増えました。一時的のつもりが常設になってしまったものもあります。(剪定用の超ロングノコギリの柄までもが利用されています)
↑【2008年ごろ】室内干しも視界を遮らぬよう、テーブルの上に載って高いところに干していました
↑【2008年ごろ】屋根裏から見たところ(吹き抜けは風の通り道なので、良く乾くのです)
↑【2023年】ところかまわず作品を掛けまくる様子(すごい創作意欲です)
そうこうしているうちに、気がついたらいつの間にか洗濯物に対する「妻の要求」は全て満たされていました。これだけ作品を掛けられるということは、洗濯物にとっても十分な量になっていますので。
■洗濯物が最もよく乾くポジションに干すのが当然
■火山灰や雨が降ってきたら、すぐに取り込める場所であること
■取り込んだ室内にも外と同じ量の洗濯物を掛ける場所があること
難題と思われた「妻の要求」の解決策には、どうやら空間を兼用して使うことにヒントがあったようです。そもそも、小さな住まいで場所の役割を限定すること自体が愚策だったのかもしれません。
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