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組織をつくるために、社長が最初にするべきこととは?

SPECIAL

年商10億事業構築コンサルタント

株式会社ワイズサービス・コンサルティング

代表取締役 

指導暦18年、これまでに200社以上の実務コンサルティング実績を持つ経営コンサルタント。「10億円事業構築」に強みを持ち、直近5年では、導入後数年で年商数億が10億越えをした企業は20社以上と驚くべき成果を出している。

「先生、店長2名が辞めると言ってきました。」
美容系店舗ビジネスを展開するH社長は言いました。その声と表情に困ったというニュアンスはありません。
私は答えました。
「そうでしたか、ある程度予測通りですね。」

先日H社長は、店長を集めての勉強会を開催していました。
そこで「店長の役目と態度」について説明をしたのでした。

H社長は、続けて言われます。
「接点が全くない二人です。その二人からその勉強会の二日後に申し出がありました。その理由も一緒で親の介護を挙げてきました。そっちの側の人は同じ思考パターンということでしょうか。」


社長は、『群れの統制』を覚える必要があります。
群れとは「沢山の人や生物の集まり」を指します。その統制です。

人の集まりである群れを、どう動かすのか、どう規律を守らせるのか、その力を行使することで、狙い通りの成果を得ることが出来ます。

これは、私がゼネコン時代に学んだことの一つです。
現場では、毎日、十数社の業者と数百名の作業員が働いていました。その作業員の「ばらつき」は当然大きく、中にはゴロツキも少なくない数が混じっています。
その群れを統制し、工事を計画通りに進めるのもゼネコン職員の大きな役目です。

そのための手法はいくつかあります。

・全員揃った状態で説明する
ようは朝礼です。全員が整列した状態で、主に安全・整理整頓について、大きな音量で伝えます。「動かしたカラーコーンは必ず戻してください。」、「足場上では安全帯を着用してください。」毎日毎日何かしらを伝えます。

・込み入った話(難易度高い・重要度高い)は、班単位で行う
新しい作業や危険を伴う作業など、しっかり理解してもらう必要がある場合には、会議室に集め説明をします。その人数は、その「重さ」により調整します。その事柄が重要であるほど一回の人数を減らすことになります。

・紙も用いて説明する
そして、その際には、紙を配ります。目と耳、両方から内容を注ぎ込みます。

・至るところに看板を貼る
「整理整頓」、「安全帯を使用せよ」、「荷の下に入るな」などを現場の至る所に貼ります。作業中も休憩中も、何かしらの看板が目に入るようにします。

こうして群れの統制を行うのです。
このやり方は、会社組織やオフィスワーカーにも適用できます。また、そのポイントも同じなのです。

群れの統制のポイントは、大きく二つあります。
「全員集めて説明する」と「文章(文字)」です。

全員一緒に集めて説明することで、その通りに行っている人は正義で、行っていない人は悪という空気を作り出すことができます。人の多いその場で反論できる人などいません。
それにより、その事柄を「皆が知っている。皆が認めている」という状態を作るのです。

また、人間は「文字に弱い」性質を持っています。文字になっていると無意識に「正しいこと」「信じよう」というようになるのです。

この手法は、一つのマインドコントロールと言えます。
手法というだけあって、正しい目的で使えば「良し」となり、悪い目的で使えば「悪し」となります。
(国とマスコミは、この手法を総動員し、コロナ騒動を作り出し国民を二分化したことは、まだ記憶に新しいことです。)

年商数億円から年商十億円に進むときに、人数が急激に増えることになります。
この移行の段階で、社長はこの群れの統制を覚える必要があります。

これを覚えることなく、いままで通りのやり方を通せば、徐々に社員の心は離れ、離脱者がでることになります。

  • 思いついたことをすぐに口に出してしまう。それは事業アイディアであったり、人事施策であったり。
  • 経営者の勉強会や企業視察で知った良いことを、翌日すぐに導入しようとする。
  • 指示は口頭。事業や値決めなどの重要なことも口頭。そこに文章作成時に起きる熟考はなく、社員はその「思い付き」を見抜いている。
  • 大人数が参加する会議で「議論」を始めてしまう。多くの参加者は「自分に関係なく」しらけている。またそこには資料もなく空中戦であり、何が決まったかも不明瞭。
  • 全社員を集めて説明する機会は無い。社員は、今後の方針や努力してほしいことなど、社長が考えていることを知るすべは無い。
  • 新入社員に対して、オリエンテーションの資料が無い。そして、基本的な職場のルールや、守ってほしい態度の説明もない。

 

この状態で、まともな組織運営が成されるはずがありません。
もし上記のようなゼネコンの現場があれば、そこがまともに回っていないことは容易に想像ができることでしょう。そこでは、整理整頓もルールも乱れ、いつか事故が起きることになります。

いままでの社員十数名のやり方を続けてはいけません。社長は、社員数十名を動かす、群れの統制を覚える必要があります。


美容系店舗ビジネスを展開するH社長からご相談を受けたのは、いまから4カ月前です。
私の赤い本を読んで当社に来られました。
「スタッフの育成の仕組みは出来ています。しかし、退職率は高い状態にありました。その原因が解りました。」

拝見すると、確かにスタッフを短期に育成する仕組みはしっかり出来ていました。
しかし、肝心な視点が抜け落ちていました。
それは、「育成の主人公は上司である」ということです。

スタッフの直属の上司にあたる店長に関する仕組みが何も出来ていなかったのです。
そのため、ある店長は、スタッフに高圧的な態度をとっていました。また、ある店長はスタッフの顔色を見すぎ注意をしていません。

その店長の質のばらつきが、店舗ごとの差を生んでいました。ある店舗では、スタッフの離職が続きます。またある店舗では、接客が悪くリピート率が下がっています。

その原因は、「店長」にあることに気づいたのでした。いえ、「店長を育成する仕組み」が無いことに気づいたのでした。

H社長は、すぐに店長の育成の仕組みの整備に取り掛かりました。
店長の役目は何か、店長の日常業務は何か、そして、店長の態度はどうあるべきか。
それらを成文化したのでした。

その完成を確認し、私は「それを使って説明会を開いてはどうか」と提案をしました。
説明会をすることで「群れの統制」を発動することができます。その効果は非常に大きいのです。

店長や新米店長は、自分の行動と成長に指針を持つことになります。
その指針が、店長が部下を指導する際の根拠と後ろ盾になります。

また、店舗スタッフからも「良い店長」、「悪い店長」が解るようなります。その視線を店長も感じ取ることになります。

そして何よりも、次の店長の成り手の育成に繋がります。やる気も能力もあるスタッフに、店長の正しいイメージを持たせることになるのです。

H社長は、その紙を手に持ち言いました。
「これを発表することで、何人か辞めるかもしれませんね。」
私は、黙って頷きました。

まずは本部の幹部と20数名いる店長を集め、勉強会という形で開催をすることにしました。

その二日後です。二人の店長から退職の意向が伝えられたのです。これにはH社長も驚きました。

この二人は接点も面識も全くないのです。その二人から「勉強会の二日後」に申し出が来たのです。そして、その理由も一緒でした。「親の体調が悪く・・・」と。

H社長は、言いました。
「実は、その二人が問題の店長でした。二人とも高圧的で、スタッフに強く当たっていました。離職の多い二店舗でした。」
群れの統制が発動した瞬間です。

その一方で複数の店長から次のような感想が寄せられました。
「ありがとうございます。これで業務がやりやすくなります。」
やはり、この一枚が彼女達の後ろ盾になったようです。また、彼女達の迷いを吹っ切ることになったのです。

H社長は、この件での私との意見交換を終えると、言いました。
「今回の件で、私も反省をしました。良い社長とはどうあるべきか、その役目、その仕事、その態度を考える良い機会になりました。」
H社長は、良い社長の定義を一枚の紙にまとめ、常に持ち歩くようにしました。

自分への統制をかけたH社長でした。

(まとめ)

  • 群れの統制を覚える必要がある。
  • その群れの統制のポイントは、大きく二つ。「全員集めて説明する」と「文章(文字)」。
  • 「会社としての良い〇〇」を文章として定義し、それを社員と共有する。〇〇には、「サービス」、「品質」、「社員」、「態度」などの言葉が入る。
  • それを定めることこそが組織化の第一歩となる。

 

 

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