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深刻化する人材不足のなかで中小企業が考えなければいけないこと

SPECIAL

マインドポジション経営コンサルタント

株式会社アトリオン

代表取締役 

マインドポジション経営コンサルタント。社員と顧客の心に占める貴社の位置づけ―「マインドポジション」をアップし、業績向上を目指す仕組み構築のスペシャリスト。30年にわたる中小企業のブランディングと組織開発の経験を背景に、マインドポジション経営実践プログラムをオリジナル開発。時代に合わせて組織を刷新したい経営者や、2代目、3代目社長、社員の力を引き出して社内の体制を再構築したい経営者に高く評価されている。新しい切り口に基づく事業の見直しと組織の再開発を通して業績の2ケタ成長を実現するなど、持続可能な企業の成長に向けた力強い支援に定評。株式会社マインドポジション経営研究所代表取締役

「タクシーが本当につかまらなくなりましたね」と、ある会合でご一緒した社長。タクシーや路線バスの運転手不足は全国どこでも深刻で、2024年に到来する運送業の残業規制と相まって、物の移動にも人の移動にも、思わぬ障害が生じることになりそうです。

人材採用の問題は何もいまに始まったわけではなく、その一因は明らかに人口減少、特に労働人口の減少にあります。他方、以前から言われていることですが、人材不足の一因には「ミスマッチ」という現実があります。数が足りていないわけではなく、求人側の企業と求職側の人材のニーズがあっていないのです。

すごくわかりやすい例で言うと、求人側の企業は、どんな商品でもバンバン売ってくれる優秀な営業パーソンが欲しい。でも、そんな優秀な営業パーソンはどの会社でも欲しいわけですから、転職市場には出てきません。それでヘッドハンティングなどの人材サービス会社が動いて、密かに転職をお薦めする。でも、現状の仕事にやりがいを感じ、今の職場に愛着を感じているのであれば、転職の勧誘にそんなに簡単になびくことはないでしょう。

もしかしたら「ヘッドハンティングのお声がかかった」という事実が、自分の価値を改めて見直す機会となり、次なるステップを模索する人もいるかもしれません。が、大方の場合、転職にはリスクが伴います。仮に給料が今より良くなったとしても、職場環境や転職先の人間関係が今より良くなるという保証もありません。

転職を考える人には二通りあります。一つは現状に不満がある。もう一つは、より高い成長のステージを目指している。モチベーション理論で有名な「動機付け・衛生要因」にぴったり重なる二つの要因です。このうち衛生要因のほうは、常識的には整っているべき条件が整っていないことで不満を引き起こすものです。たとえば給料が業界平均より低いとか、職場が暑すぎる、トイレが汚い、人間関係が悪いなど。これらは改善されたとしても動機付け要因にはなりえませんが、転職したいと思わせるに十分な要因となります。

動機付け要因のほうは、今より成長機会がある、今より賞賛される、なりたい自分になれるなど、明るい未来に向かう可能性を感じさせるものです。光あるものに人は惹かれます。

イマドキの若者たちは著しく二極化していて、ワークライフバランス最優先の「ぬるま湯大好き派」が多数いる反面、同期よりも素早く活躍の場を得たい「成長最優先派」もいます。「成長最優先派」を惹きつけるには、動機付け要因を強化する必要がありますが、たとえ転職をしたとしても、新天地に自分を成長させる余地がないと感じた瞬間、次の成長のステージを目指す可能性がある。つまり、仮に首尾よく御社に転職をしてきたとしても、さらなる転職で会社を去るリスクを抱えている人材ということになります。

そう考えると、成長意欲の高い人材は会社に対する愛着を持ちにくいとも言えます。フォーカスしているのは自分の成長であって、会社の成長ではないからです。かといって「ぬるま湯大好き派」ばかりが集まってしまっても、これはこれで、会社に現状維持の圧力がかかり、社長がどんなに望む方向に引っ張ろうとしても微動だにしない事態となります。

社員にどういう人材を置くかの判断は、会社の器を左右します。一人の力には限界があることを知っている社長は、自分より優れた人材を採用して、活躍の場を与えます。人にはそれぞれに適性がありますから、できるだけ異なる適性の人を集めて、全体としてバランスよくスキルや能力を補完し合うのがいいのです。

これを実現するのに必要なことは二つ。一つは互いを知ることです。互いを知れば、自分の立ち位置も決められます。もう一つは、目指すゴールを共有するということです。実のところゴールが共有できなければ立ち位置も決められません。立ち位置が決まらないと、会社における自分の存在意義がわからず、居場所が見つからない。ここは結構重要な観点です。

そして一番大きなところで高所から采配を振るう人が欲しい。

人間の身体は60兆個の細胞が誰に命じられることなく自律的に各々の役割を果たしています。最近はこうしたオーガニックな組織を志向する動きもありますが、中小企業においてはまだまだ全体最適を念頭においた優秀な指揮者が必要です。そして今後いっそうの人材不足が避けられないのなら、一人の社員ができるだけたくさんの能力を発揮できる仕組みが必要です。さて、貴社はどのように取り組んでいるでしょうか。

 

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