「シフトを増やしたい」、次々にスタッフからの要望が上がり始めた企業の社長が厳命した事とは?
「だったら、お前がレジに立て!」
エリアのトップからの怒鳴り声が、あるチェーンの事務所内に響きました。
その理由は店舗の状態が酷かったことと、すぐ改善できない理由を人手不足のせいにしたから。
いつもはモデル店として参考にされるほどの直営店を利用したところ、その時に限ってあれもこれもできていなかったのです。
周りでデスクワークをしていた社員達は絶句。
空気を読んでか、その直営店は一時的にスーツ姿の店員でひしめきあう異様な光景となったのです。
他の人からすると、こんな疑問を抱くのではないでしょうか。
「いつもはできていた店舗が、急にダメになることなんてあるの?」
実はその直営店は、常に「背伸び状態」だったのです。
店長としては、「当店はモデル店でなければならない。モデル店の状態をキープする為には、全員で協力し合う必要がある。だからこそ皆が手を取り合って、参考にされる店舗をつくりましょう。」と掲げていたのですが、うまくマネジメントすることができず、店舗内では「誰かがやってくれるだろう」という意識が横行してしまい、その状態から抜け出せないままでした。
そこで店長が選択した運営方法は苦肉の策。
店長自らと副店長、そして2人の優秀なスタッフ達だけで頑張ろう、です。
彼らは日夜限界まで働きづくめて、良い状態を長くキープしようと汗を流していました。
しかし些細なイレギュラーが発生するだけで、均衡が崩れグチャグチャに。
その度に残業を重ねて元に戻すという地獄のループを繰り返していたのです。
当然そんな状態では、良い接客も、販売もできません。
蓄積している連日の疲れが、彼らの無理矢理作った笑顔にも現れてしまい、漂う悲壮感がお客様に伝わってしまっていました。
もはやモデルとなる直営店とは名ばかり。
その中身は素人の集団と大差ない、「外見だけはモデル店」です。
そしてお気づきの方もいらっしゃることでしょう。
「誰かがやってくれるだろう」という意識が横行している店舗なのに「数人だけで何とかしよう」というやり方は、解決どころかその真逆の「傷口に塩」なだけ、ということを。
ただ、会社としてもそんな状態を「全て現場の責任だ」と捉えているわけではありませんでした。
チェーンビジネスの要とも言える「店舗」が酷い状態なんだから、これは会社全体の問題だ、何とかしなければとあれこれ対策をうってきていたのです。
しかし残念な事に、長い間有効な一手がうてないまま。
結局はどの店舗も、数人だけしか本気を出せない店舗。それが当り前のチェーンとなってしまって、常に人手不足状態となってしまっていました。
多店舗型ビジネスほど人手不足に弱いビジネスはありません。
なぜならその要は「人」だからです。
人が足りなければ、業務遂行が追いつかなくなります。
そのしわ寄せを誰かが背負わなければなりません。
その為、接客や販売がおろそかになってしまいます。
会社として有効な一手がうてないままだと、「スタッフ募集中をいつまでも掲げてる」、「急募」、「時給上げました」など、求人の安売り化が当り前となってしまい、それでもなんとか採用にまで至ると、ほっと一安心といきたいところですが肝心の採用された人には「来てやったぞ」といった姿勢の人が多くなります。
そんな人達には各店長からビシッと指導してもらいたいところですが、期待も虚しく各店長には「やっと来てくれたんですね」の低姿勢が目立つようになり、期待通りのマネジメントがなされず。
そして手抜きも目立つようになり、しわよせが更に増加。
一部の人達がダラダラ楽をして、一部の人達が苦しみ続けるという沼にハマってしまい、なかなか抜け出せなくなってしまうのです。
社長にとって問題なのは、「人手不足なので・・・」と言えば会社は許してくれる、という風潮が定着してしまう事。
「だからなんだ」と切り返したいところではありますが、すでに求人費に多額のコストをかけているのに結果が出ていないとなると、強くも言えません。
さて、そんな沼にどっぷりとハマってた、多店舗型ビジネスのある企業は、うまく脱出を果たすことができました。
最初に現れた変化はスタッフからの「シフトをもっと増やしたい」という声です。
「〇曜日の何時は、私が入っていいですか?」
「店長、土曜は私が隔週で入れますよ」
「子供に手を掛ける事が少なくなってきたので、日曜のシフトに私を入れて下さい」
各店のスタッフから、次々にシフトを増やしたいという要望が増えたため、会社としてはスタッフ不足対策として計上していた求人コストが激減。
店長、副店長が抱えていた業務はスタッフ達に次々に奪われていき、複数店見れる店長も誕生。
最終的には利益を倍以上にまでできました。
そこの社長がうった一手の中にこんな事があります。
「逃げ得の撲滅」
社長はこのワードを高らかに掲げ、徹底させました。
「ミスの尻拭いを他人にさせるな!」
実は多店舗型ビジネスは、社員やスタッフ達にとって「逃げ得天国のビジネス」と見られても過言ではありません。
なぜなら
・各店舗が本部から離れている
・仲間たちと勤務曜日が合わない
・勤務時間も違う
といった特徴があるからです。
その為、危険なのは
「あ、やること忘れてた」
「お?誰かがやってくれてたみたい。」
「あれ?・・・ということは、そんなに頑張らなくてもいいのでは?」
会社として何か手をうっておかなければ、ただの逃げ得天国事業のままです。
しかし、良い一手などそうそう出てくるものではありません。
さて、・・・どうしたらいいか?と頭を抱えていますと、近くにはとても楽な道が見えてきます。
その道とは、「部下に任せればいいや」
「人が居なくて、できない?」
「だったら君がレジに立て!」
一見、厳しくも有効なマネジメントの1つに見えますが、これこそ会社の業績を上げていけない一手なのです。
なぜなら、見えない未来への道の先頭を部下に走らせようとしているからです。
成長する組織とは、見えない未来への道を、いち早くリーダーが突き進み「みんな~こっちだ!」と力強く引っ張っていけるからこそ成立します。
多店舗型ビジネスにおいて、その役目は社長です。
社長が先陣を切っているからこそ
「違う、そっちじゃない」
「こっちに進みなさい」
あるいは
「そこはどうやって渡るべきか? よく考えてみなさい」
「そうそうそう、やればできるじゃないか!」
などと導けるようになり
「さすが社長だ」
となるのです。
また、どのライバル企業も未来への道が見えずに右往左往している中、自社の社長だけが次へとつながる未来への道をすでに突き進んでいるからこそ
・自社だけの強みとなり
・社員やスタッフもマネができません
・よって、その情報は他社へも流出されません
・また、社内に社長を脅かす強い勢力の派閥ができあがることもありません
一方、組織のリーダーが次なる良い一手をうとうともせず、部下にやらせよう、走らせようというアクションを続けている組織は衰退していくだけです。
・ついてこれない従業員が続出し
・奇跡的に新たな道を発見できた社員は周りから浮き、異端だと迫害を受け、追放され
・せっかく社内で生まれた強みは流出し、自社には何も残らず、
・もしくは、新たな道を発見できた社員は、社長よりも指導力を備えていき反対派勢力が拡大されていったり・・・
さて、ここで疑問なのは、見えない未来への道を発見、開拓できた社長達は、なぜ部下に丸投げしようという楽な道を選ぼうとせず、自ら開拓するといういばらの道を進めたのか?
ある社長はこうおっしゃいました。
「それは私が、『人が好きだから』・・・などとかっこよく決めたいところですが、正直言いますとただムカついていたからです。」
「いい加減な人が楽をしていて、がんばっている人達が苦しむ、そんな会社には絶対にしたくない。」
「つまり私の原動力は、イライラなんです」
「他の人から見ると、まるで子供じゃないかと笑われるだけですよ」
多店舗型ビジネスの御社はいかがでしょうか?
いい加減な人が楽をしていて、がんばっている人達が苦しむ。
そんな環境になっていませんか?
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