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どんなに素晴らしいサービスもインターフェースが悪いと伝わらないという問題をどうするか

SPECIAL

マインドポジション経営コンサルタント

株式会社アトリオン

代表取締役 

マインドポジション経営コンサルタント。社員と顧客の心に占める貴社の位置づけ―「マインドポジション」をアップし、業績向上を目指す仕組み構築のスペシャリスト。30年にわたる中小企業のブランディングと組織開発の経験を背景に、マインドポジション経営実践プログラムをオリジナル開発。時代に合わせて組織を刷新したい経営者や、2代目、3代目社長、社員の力を引き出して社内の体制を再構築したい経営者に高く評価されている。新しい切り口に基づく事業の見直しと組織の再開発を通して業績の2ケタ成長を実現するなど、持続可能な企業の成長に向けた力強い支援に定評。株式会社マインドポジション経営研究所代表取締役

先日、とあるスポーツジムの受付で、一人のお客さんが声を荒げて怒っておられるのを耳にしました。聞き耳を立ててみると「スマホ持ってない人はどうすればいいんだよ?」という声。どうもここでは、何かの特典を享受するためにはLineを通して予約をしなければいけないということになったらしい。受付の女性が答えに窮している様子が見えます。

ああ、日本国挙げて促進しているDX化に取り残された方がお一人ここにおられるな、と思いました。過渡期だから仕方がないのか、DXが正義になってしまっている昨今だから行き場のない怒りをためておられるのか、こういう光景、過去にも見たことがありました。そしてその頃は、まだDXに取り残された方たちの方が怒りを顕わにしたり、知っている人に「何とかしてくれい」と助けを求めたりしていたのですが、DXがご神託になったかのような昨今では、「取り残された」ということを口に出すこと自体にためらいを覚えておられるようにも見えます。

なので、なおさら、このスポーツジムの受付の怒声には、溜めに溜まってしまったDXへのうっぷんが噴き出すかのごとき勢いを感じてしまい、それを受け止める立場に思いもよらず立たされてしまった受付の女性に深く同情した次第です。

かくいう私もLineを使うのには随分と抵抗したものでしたが、今となっては一番簡単な連絡手段として誰もが使う道具になってしまったために、使わざるを得ないという状況に追い込まれています。だから、冒頭の男性の気持ちも若干わからないわけではありません。

こういう風に利用者が増えれば増えるほど社会におけるポジションが上がっていくシロモノというのはたくさんあって、SNSなどはその最たるものと言えます。ガソリン車に代わるEVもそう。登場したての頃は、充電しても100キロしか走らないんじゃ使い物にならないなどと敬遠されていたものでしたが、いまや利用者は対前年150%の勢いで伸びているとか。背景に脱炭素というこれもまた別のご神託があることは誰もが納得するところです。

世の中には「アマノジャク」と呼ばれる人たちがいて、昔のアンチジャイアンツのように世の中の主流には与しないというポリシーを持つ頑固な方もおられるわけですが、このDXという流れだけはどうにも抗いがたく私たちの生活に深く染み入ってくるようです。

ビジネスをやっていれば、ネットバンクなどを使うことも多々あるのですが、金融機関によってログインや振込の仕方が違っていて、ややこしいことこの上ありません。わからなくなったからとコールセンターに電話すれば、延々と話し中。メールで状況を説明しようにも、話がややこしくて、相手にわかってもらえるような文章を仕上げるにも一苦労。多少なりともITに慣れている私でもこんな状況ですから、ITもDXも見たくも近寄りたくもないという方にとっては、「触らぬ神に祟りなし」状態になるのも無理はありません。

考えてみると、この状況を引き起こしているのは、ITとかDXが張本人ではなく、実は、新しい技術と人との接点にあるインターフェースデザインが稚拙だというところに帰結します。強固なセキュリティを備えたネットバンクの機能自体はよくできているのだけれど、利用者との接点にある画面のデザインや画面遷移そのものが直感的に理解しがたかったり、説明を求めようとしても答えを知っている相手にたどり着かない、というところに問題があります。

逆に言えばLineがここまで普及した背景には、誰でも直感的に使えるわかりやすいインターフェースが奏功したともいえるわけで、冒頭の怒声を上げた男性などはもしかしたらアンチジャイアンツ的なスピリットが災いして「取り残されて」しまっているのかもしれません。

それはさておき、ITやらDXやらのインターフェースが悪いために使ってもらえないという状況を会社組織に当てはめてみると、どんなに良い商品、サービスを開発していても、利用者や顧客との接点にあるインターフェースが悪いと絶対に使ってもらえないということになります。インターフェースとは商品自体の使い勝手の良さやサービスへのアクセスのしやすさなどもありますが、外部との接点で橋渡しをする貴社の人材も大きな役割を果たします。広告や広報の見せ方や潜在顧客に届ける道筋の選択も要因となります。

インターフェースの良し悪しは、外部からのフィードバックで気づくことができます。問題はそのフィードバックを受け止める仕組みや文化があるかどうかということです。

冒頭の怒声を上げた男性のようにわかりやすいネガティブフィードバックもありますが、不満を抱えた客は何も言わずに去ることの方が圧倒的に多いと言います。その人たちの声なき声をどういう風に見つけ出すか、ここは当事者の知恵の出しどころです。

さて、貴社ではどんな風にされているでしょうか。

 

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