下請けのランクアップ!建設業で成功を収める5つのステップ
建設業の下請け脱却を考える際には、建設業特有の何層にもなっている「ピラミッド構造」を考えておかなければなりません。スーパーゼネコンと呼ばれる5社を頂点に、全国展開する大手ゼネコンが50社程度、中小規模の地方ゼネコン2万社がそれに続きます。
それらゼネコンの下請けとして、内装・電気・屋根・塗装・鉄筋といった施設を管理する専門工事業者があり、さらにその下請けとして実際の設備工事を施工する協力業者がいるといったピラミッド型の下請け構造になっているのです。
また、建設業に必要となる免許も、「業種別の許可」と「一般建設業の許可」「特定建設業の許可」があり、営業所の設置が2つ以上の都道府県にある場合には国土交通大臣の許可を得なければなりません。
このため、一気に元請けになるのではなく、協力業社(ひ孫請け→孫請け、孫請け→下請け)→専門工事業社、専門工事業社→地方ゼネコン、といったかたちで、川上に守備範囲を広げていくというのが現実的であり、方向性として正しいのです。
例えば、協力業者として3〜6百万円程度の工事が中心であったものが、専門工事業者となるのであれば1億円前後の工事が中心になってきます。もちろん、企業としてのビジネスモデルや組織がある程度できていることが前提となり、これらが十分でない場合には、それ以前の前提を整えることが必須となります。より川上の専門業者として機能するには、設備投資だけでなく営業、企画、設計、積算、施工、調達、事務・管理対応・・・というようにそれぞれのプロセスを各担当責任者がキチンと管理していく必要があります。
このため、社長が全てをカバーすることはできないですし、万一カバーできたとしても、ゼネコンから専門工事業者として受注することはできません。協力業社から専門工事業社にランクアップする場合、これまでは協力業者ということでしたので「早く・安く」が求められていましたが、ゼネコンが専門工事業者に求めているものは「安全・安心の施工だけでなく、現場管理や各種打ち合わせなども含めて、きっちりとした仕事をしてもらう」ことであり、全く求められることが違うのです。これらをきちんとこなしていく体制を整えなければなりません・・・
現状認識として、(協力業者のままでは)利益率が低くなってきており、収益を確保するためにも川上である「専門工事業者」に守備範囲を広げることで、対象顧客を専門工事業者から大手・中堅ゼネコンに変更する。そうすることで、工事単価は3〜6百万円程度から1億円程度にと大幅に増加するため、労働生産性が大幅に向上。
また、対象顧客を変更するために、顧客に提供する商品・サービスの価値も、これまでの「早く・安く」から「安全・安心の施工だけでなく、現場管理や各種打ち合わせなども含めて、きっちりとした仕事」と大きく変えるとともに、この会社ならではの特徴・特色を打ち出すことで、顧客満足度を向上させる。
そのために必要となる「社内体制」を早期につくりあげることができれば、これまで頑張っても数億円しかいかなかった売上を20〜30億円にすることが可能になるだけでなく、付加価値を大幅に増やすことで利益率も大幅UPが見込めます。売上高が倍増以上、更に利益率が大幅UPして掛け算するのですから、最終的な利益は数倍になることもあります。
建設業の下請け企業がランクアップを実現するためには、どのようなアプローチが必要なのでしょうか?本コラムでは、これらの課題を解決し、下請け企業が一歩前へ進むための具体的なステップなどをお伝えしていきます。
1. 建設業での下請けのメリット・デメリット
建設業界における下請けビジネスは、安定した受注とリスクの分散というメリットを享受しています。大手ゼネコンからのプロジェクト提供により、安定したキャッシュフローを確保し、複数の元請先やプロジェクトを持つことで、一つのプロジェクトの失敗が会社全体に与える影響を軽減できます。
また、業界標準やベストプラクティスを学ぶ機会も増えます。しかし、これらのメリットは、利益の抑制、情報アクセスの非対称性、技術革新の遅れ、ビジネスモデルの制約といったデメリットとセットです。価格交渉の余地が狭まり、市場情報へのアクセスが制限され、技術開発への投資が難しくなります。これらのデメリットが、下請け企業がさらなる成長を遂げる上でのハードルとなっています。
1.1. 建設業での下請けのメリット
①安定した受注
- 大手からの連続した仕事提供により、安定した収入を享受
- 一定の作業量を保証され、雇用の安定化を図る
②リスク分散
- 複数の元請先やプロジェクトを持つことで、単一プロジェクトの失敗が全体に与える影響を抑える
- 元請先の多様化により、市場変動の影響を緩和
③業界標準の遵守
- 大手企業との取引を通じて、業界の新しいトレンドや標準を把握
- ベストプラクティスの実践を通じて、企業のサービス品質を向上
1.2. 建設業での下請けのデメリット
①利益の抑制
- 大手企業に価格を押さえられ、利益率が低くなる可能性
- コストを削減するための施策が必要となり、品質に影響を与える可能性
②情報の非対称性
- 大手企業が持つ市場情報やプロジェクト詳細に十分にアクセスできない
- 新しいビジネスチャンスを見逃す可能性
③技術革新の遅れ
- 利益の抑制により、新しい技術への投資が難しい
- 競合他社との技術的な差別化が図りにくくなる
④ビジネスモデルの制約
- 大手企業の要求に応じたビジネスモデルを強いられる
- 自社の強みを最大限に活かせない場合がある
2. 下請けのランクアップ!建設業で成功を収める5つのステップ
建設業界における下請け企業が次のレベルへとステップアップするためには、単に現状を維持するのではなく、積極的な変革と戦略的なアプローチが必要です。下請けのランクアップは、単なるビジネスの拡大だけでなく、企業文化、オペレーション、そして関係性の再定義を含む多面的なプロセスを意味します。
ここでは、その過程を5つの具体的なステップに分け、各ステップでどのようなアクションを取り、どのようなポイントに注意を払うべきかをお伝えしていきます。
これらのステップは、あなたの企業が業界内での位置を強化し、より大きなプロジェクトを獲得し、そして最終的にはビジネスの持続可能な成長を実現するための道しるべとなります。
2.1. 独自のノウハウや技術の整理、工事内容の見直しによる利益確保
建設業界では、独自のノウハウと技術力が企業の競争力を大きく左右します。まず、自社が保有する技術やノウハウを整理し、それがどのような形で工事に活かせるかを詳細に検討します。次に、これまでの工事内容を見直し、どの部分で自社のノウハウや技術を最大限に活かすことができるかを分析します。
このプロセスでは、過去の工事で得た知見やフィードバックも大切に活用しましょう。どの工程でコストがかかっているか、どこで時間を最適化できるかなど、工事の各フェーズを詳細に分析します。そして、それぞれのフェーズで自社の強みをどう活かし、また弱みをどうカバーするかを計画に落とし込みます。
さらに、利益を確保するためには、コスト管理も欠かせません。材料費や人件費、機械費など、工事にかかるコストを正確に把握し、無駄を省きながらも品質を保つバランスを取ることが重要です。これにより、工事の品質を落とすことなく利益を確保し、企業の持続的な成長をサポートします。
2.2. 下請けのランクアップのために、社内体制整備・社内方針決定
下請けから一歩進んで、業界内での地位を向上させるためには、社内体制の整備と明確な社内方針の決定が不可欠です。これは、企業の将来像を明確にし、その目標に向かって組織全体が一丸となって動くための基盤を築くプロセスとなります。
①社内体制整備
まず、社内体制整備では、組織の役割分担を明確にし、業務プロセスを最適化します。これには、各部門やチームが担当する業務領域を明確に定義し、情報共有の仕組みを構築することが含まれます。
②社員教育・トレーニング
また、スキルや専門知識を高めるための教育・トレーニングプログラムを実施し、社員一人ひとりが自身の役割を理解し、高いパフォーマンスを発揮できる環境を作ります。
③社内方針の決定
次に、社内方針の決定では、企業のミッション、ビジョン、および中長期的な戦略を明文化し、それを社員全員と共有します。この方針が、企業の行動指針となり、どのような意思決定を行うべきか、どのようなアクションを取るべきかの基準を提供します。
④コミュニケーションの醸成
また、定期的なコミュニケーションを通じて、方針が浸透し、社員の行動と結びつくよう努めます。このステップでは、リーダーシップが極めて重要となります。経営陣は、方針を明確に伝え、その実現のためにどのようなアクションを取るかをリードし、社員をインスパイアする必要があります。
これらのステップを通じて、社内体制の整備と方針が明確になり、全員が目標に向かって協力し合う文化を築くことができます。そして、それぞれが責任を持ってアクションを起こすことで、下請けのランクアップを実現します。
2.3. ランクアップ新規元請先リストでのアプローチ開始
新規元請先の開拓は、企業の成長とランクアップにおいて極めて重要なステップです。ここでは、潜在的な元請先を見極め、効果的なアプローチを計画し、実行に移すプロセスを詳細に検討します。
①ターゲットの特定
まず、新規元請先としてターゲットにする企業や顧客を明確に特定します。これには、自社のサービスや商品が解決できる課題を持つ企業、または自社の強みを最大限に活かせる企業を選定します。市場調査を行い、業界のトレンド、競合他社の動向、潜在顧客のニーズなどを把握しましょう。
②リストアップと情報収集
次に、ターゲットとなる元請先をリストアップし、それぞれに関する情報を収集します。これには、企業の規模、業界、過去の取引履歴、課題やニーズなど、アプローチの際に役立つ情報を含みます。
③アプローチ計画の策定
情報収集を基に、各元請先に対するアプローチ計画を策定します。どのようなメッセージでアプローチするか、どのポイントを強調するか、どの商品やサービスを提案するかなど、具体的な計画を立てます。
④コンタクトの取り方
アプローチの方法も重要なポイントです。メール、電話、訪問など、元請先の特性や自社の強みに合わせたコンタクト方法を選びます。また、初回のコンタクトではなく、フォローアップも計画に含め、関係構築を戦略的に進めます。
⑤フィードバックの活用
アプローチから得られたフィードバックは、今後の営業活動に活かします。どのポイントが良かったのか、どこを改善すべきかを分析し、次のアクションにフィードバックします。
このプロセスを通じて、新規元請先との関係を築き、持続可能なビジネスを構築していきましょう。
2.4. 新規元請先のクロージング&契約締結、その後営業紹介依頼
①クロージングのアプローチ
新規元請先とのクロージングは、営業プロセスの中で非常に重要なステップです。ここで大切なのは、提案が元請先の課題を解決するものであることを明示し、自社の価値を強く打ち出すことです。クロージングの際は、元請先の懸念を丁寧に解消し、契約に至る道をスムーズに進めることが必要です。
②契約締結のプロセス
契約締結には、提案内容の最終確認、契約条件の調整、契約書の作成といったプロセスが含まれます。この段階で重要なのは、双方の期待値を明確にし、契約内容が双方にとってフェアであることを確認することです。また、契約後の業務フロー、連絡体制などもこの時点で確認しておくとスムーズなプロジェクトスタートが期待できます。
③営業紹介依頼とネットワーク拡大
契約締結後、プロジェクトがスムーズに進行し、元請先が満足している状態を確認した上で、営業紹介を依頼するのが一般的です。ここで大切なのは、紹介依頼が元請先にとって負担にならない形であること。また、紹介してもらった新規元請先に対しても、同様の価値を提供し、さらなる紹介を生むサイクルを作ることが理想です。
④長期的な関係性の構築
新規元請先との関係は、契約締結後も継続的なフォローを通じて深化させていきます。定期的なミーティングやレポートを通じて、プロジェクトの進捗を共有し、元請先が抱える新たな課題に対しても柔軟に対応します。これにより、一度築いた関係を長期的なものに発展させ、将来的なビジネスチャンスにつなげていきます。
これらのポイントを踏まえ、新規元請先との関係構築を進めることで、企業としての信頼と実績を積み上げ、ビジネスを拡大していくことが可能となります。
2.5. 新規営業の仕組み構築&共有化後、新規元請先を増やすことで下請けのランクアップを図る
新規営業の成功体験を基に、その仕組みを組織全体で共有し、スケールさせることが、持続的な成長への道です。まず、成功した営業戦略やアプローチを分析し、その要因を明確にします。次に、そのノウハウを体系化し、営業マニュアルやガイドラインを作成します。これを基に、社員のトレーニングを実施し、全員が新しい営業の仕組みを理解し、実践できるようにします。
新規元請先を増やすことで、企業は安定した収益基盤を築くことができます。そして、これにより、企業は下請けのポジションから脱却し、より多くのプロジェクトを直接取り扱うことが可能となります。これは、企業が一つ上のランクへとステップアップすることを意味し、結果として、利益の増加とビジネスの拡大を実現します。
このプロセスでは、新しい元請先との関係構築だけでなく、既存の元請先との関係も深化させ、リピートビジネスや紹介を増やすことも念頭に置くことが重要です。信頼と実績を基に、持続可能なビジネスモデルを構築し、企業の成長を加速させましょう。
3. なぜ下請けをランクアップするステップを知ることが重要なのか?
下請けとしてのビジネスは、上位の企業に依存する部分が多く、ビジネスの安定性や拡大の可能性に制約が生じることがあります。ランクアップすることで、これらの制約を減少させ、企業の持続可能な成長を実現することができます。以下、詳細なポイントを挙げます。
3.1. 収益の安定化
ランクアップにより、これまでと異なる元請先との取引が増え、収益源が多様化します。これにより、一つの元請先やプロジェクトの変動に左右されにくい、安定した経営基盤を築くことができます。
3.2. 利益率の向上
これまでの元請先を介さず、その上の元請先と直接取引を行うことで、利益率を向上させることが可能となります。これは、企業の利益を確保し、さらなる投資や拡大の基盤となります。
3.3. ビジネスチャンスの拡大
ランクアップすることで、新しい市場や元請先、プロジェクトにアプローチするチャンスが拡がります。これにより、企業は新しいビジネスチャンスを掴み、事業を多角化・拡大することができます。
3.4. 企業ブランドの向上
直接元請先との取引を増やすことで、企業のブランドや評価が向上します。これは、リクルーティングや新規ビジネスの取得、パートナーシップ形成においてもポジティブな影響をもたらします。
3.5. 自社の技術・サービスの価値の最大化
ランクアップにより、自社の技術やサービスの価値を直接元請先に伝え、最大化することができます。これは、企業の競争力を高め、市場でのポジションを強化します。
3.6. リスクの分散
依存する元請先や市場が多様化することで、ビジネスリスクを分散させることができます。一つの市場や元請先に依存するリスクを減少させ、企業の安定した運営をサポートします。
これらのポイントからも分かる通り、下請けをランクアップするステップを理解し、実行することは、企業の持続的な成長と安定した経営に直結します。したがって、これらのステップを知り、計画的に実行に移すことが極めて重要となります。
4. まとめ
建設業界での下請けからのランクアップは、企業の持続可能な成長と自立への重要な一歩となります。このプロセスは、単なるビジネスの拡大ではなく、企業文化、チームワーク、および戦略的な計画に根ざしたものでなければなりません。
①ランクアップの重要性の再確認
ビジネスの持続可能性と自立は、特に現在の競争の激しい市場において、中小企業にとって不可欠です。下請けとして安定した受注を得ることは利点である一方で、自社の成長と発展を制限する可能性もあります。したがって、自社の強みを理解し、それを基盤にビジネスを拡大することが重要です。
②アクションプランの提案
本コラムでお伝えした5つのステップを実行するための具体的なアクションプランとタイムラインを設定しましょう。リソースの適切な配分も計画に含め、各ステップに必要な時間、人材、および財政を考慮します。
③エンゲージメントとフォローアップの重要性
チーム全体で目標を共有し、定期的なレビューとフィードバックのプロセスを通じて計画を調整しましょう。これにより、計画は常に現状に適したものとなり、チームも目標に向かって一致団結します。
④継続的な学習と改善
業界の最新の動向を把握して、成功事例を学び、ビジネスに適用しましょう。持続可能な成長は、継続的な学習と改善から生まれます。
建設業界は、常に変化とチャンスに満ちています。そして、これまでの下請けとしての立ち位置から、より高いところへランクアップすることは、多くの中小企業経営者の夢であり、目標でもあります。今回、当社が共有した5つのステップは、その夢を現実にするための具体的な行動計画としての役割を果たすことを期待しています。
しかし、最も大切なのは、自らのビジョンを持ち、それに向かって行動することです。情報収集や計画だけでなく、実際に行動に移すことが、真のランクアップへの鍵となります。
最後に、下請けのランクアップは一夜にして達成されるものではありません。しかし、確固たる意志と継続的な努力を持ち続けることで、その目標は確実に近づいてくることでしょう。皆様の成功を心よりお祈りしております。
【ご参考】
一般論としての下請け脱却についてはこちらをご参照ください。
「経営者が実践すべき下請け脱却に必須の仕組み構築法」
https://www.musubu-consulting.jp/column138/
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