正しい節税、間違った節税
会社に利益が出たとき、多くの社長が考えるのが節税です。
「税金は喜んで払う」という社長も中にはいらっしゃいますが、現実問題としてそんなに多くはいないものです。
必死に試行錯誤して、売上や利益を作り出したわけですから、自社の発展のため、自分や家族、従業員のためだけにお金を使いたいと思うのは、当然のことです。
しかし、「税金を払いたくないから…」という理由での節税対策は、会社を倒産させる間違った節税対策です。
「経費を増やすような節税対策」は、特に注意が必要です。なぜなら、言うまでもなく「会社のお金が大きく減るから」です。
例えば、節税のために、保険などの節税商品や車、接待交際費などの経費を増やす社長がいます。意図的にお金を使って赤字を作り出す行為です。
会社のお金を使えば、キャッシュが目減りします。利益も圧縮されますので、結果的に財務体質は弱くなります。財務体質が弱くなれば、銀行の格付けも落ちます。
売上が下がって資金繰りが苦しい時、事業の成長のための投資をしたい時など「本当にお金が必要な時」にお金を貸してもらえなくなるのです。
資金繰りが苦しくなる会社は、目先の税金を逃れるための節税をした結果、経営状態がどんどん悪くなってしまう…という悪循環に陥るのです。
会社の存続には、お金が必要です。お金が無くなったら、資金ショートして倒産してしまいます。
とはいえ、無駄な税金を支払う必要はないので、節税対策は必要です。いかにお金を増やすか、お金を手元に残すのか?と考えることは経営の本質です。
節税の知識よりも、もっと大切で本質的な「財務」の実務をしっかりと理解すること。これが最も重要です。
正しい節税は、会社にお金を残して、資金を増やすことにつながります。知らないだけで、無駄に税金を払う、ということはあってはなりません。税務署は、税金が少ない場合は厳しいですが、多く支払った場合は何も言ってくれません。
そして、同族会社の場合、法人税だけではなく、社長個人の所得税や、オーナー一族の相続税のことも考えて、節税対策をする必要があります。
つまり、同族会社の社長こそ、税金についての正しい知識、財務についての正しい知識を誰よりも身につける必要があるのです。
多くの社長は「節税対策をした結果、会社のお金が減っていく…」という状態に陥ってしまいます。その結果、どんどん経営状態が悪くなってしまいます。
原因は、「節税対策とは、節税のためにお金を使うことだ」と考えてしまっているからです。もっと言えば、節税のために購入する商品はなんでもよくて、「お金を使って利益を減らす」ことと勘違いしていたりします。
確かにお金を使えば、利益が少なくなるので、結果的に税金の支払いを減らすことができます。しかし同時に、会社のお金も減ってしまいます。
最も悩ましいのが、この時点では、社長自身が犯してしまった過ちに気付けないということ。誤った経営判断を下してしまったツケが、翌年以降、ジワリジワリとやってきます。
しばらく経った頃、なぜかお金が残らない、経費が増えているということに違和感を持ちます。中には、ずっと気付かない社長もいますが、大抵の場合は明らかに資金が不足していくので遅かれ早かれ気づきます。
気付いたタイミングでよくよく調べてみると節税のために購入した商品が原因で、資金繰りがひっ迫している、足りない資金を金融機関からの資金調達で補っている…という状態になるのです。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。
あなたは今、社長としてどんな未来をつくりたいですか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
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