組織作りの落とし穴
先日、とある事業主の方からのご相談を受けた際に、組織図を提出してもらうことがありました。典型的な中小企業なのですが、営業と書かれたハコの中には所属するスタッフの名前がいくつか無造作に記されていました。相互の関係を示す線は示されず、誰がリーダーなのかもはっきりしません。
これまでもそのようにやってきたから、ということだったのですが、成果を生み出す組織作りを考えるなら、そのような組織作りはすべきでないことを申し上げたいと思います。
何もないところからのスタートで、「君たち3人が営業部だから、あとは3人で上手くやってね。」と言って任せるだけで仕事が上手く進むなら、経営者は不要です。
確かに、最新の組織論ではティール組織と呼ばれる先進的な事例が報告されていて、スタッフが自分たちで考えて最適な結論を出すことも望めなくはないのですが、むしろそれはティール組織を作るんだという強固な理念の下、スタッフとのコミュニケーションや人材育成も含めて手を尽くしたうえでの話です。
戦略も、いわんや理念もない中で、単に「これまでのやり方に従った」スタッフのグルーピングは組織作りとは言えません。ただそこにあったグループがそのまま仕事に持ち込まれただけ、のような人間関係では、明示的な業務指示すら通りにくくなる懸念があるからです。
このような関係性は、ドイツのフェルディナンド・テンニースによって自然発生的な組織(ゲマインシャフト)と呼ばれ、人工的な組織(ゲゼルシャフト)と区別されています。会社という人工的な組織の中で、業務目的という人工的な理由に基づいて明示的に仕事をこなすという目的のためには、ゲマインシャフト的な組織形態はいかにも相性が良くないのです。
とりあえず組織の目標を明示的に決め、スタッフ間の関係性をきちんと定義すること。具体的には職場のリーダーを選任し、スタッフ各人の責任範囲を明確化するところから始めます。そして、できれば業務成果のモニタリングをするための指標を設けること。そこまでやれば、いわゆるPDCAサイクルを通じて組織の成果を追求することができるようになり、スタッフ間のコミュニケーションもすっきりと整理されるようになります。
他方で、ゲマインシャフト的な良さ(家族的な暖かさなど)を生かす組織作りという考え方も存在します。とはいえ会社組織として最低限の決め事、具体的には連絡体系や責任の所在などを決めないことには、PDCAサイクルを使って業務を進めるための組織とは言えないことは明らかです。
新しい組織を立ち上げる際には、是非参考にしていただきたい考え方です。あなたのカイシャでは、上手くPDCAサイクルが機能していますか?
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