企業のIT化はいつ始めるべきなのか?
「今でしょう!」と言うのは某予備校の先生だけで、企業のIT化の着手はなかなか判断できるものではありません。大勢の経営者と話をしましたが、その大半は、「社内がアナログで旧態依然としている。IT化?確かに必要だ。しかし・・・」という反応で、その「しかし」の後が続きません。結局のところ、たいていの場合は「社長は困っていない」から、IT化に着手する必要性を感じていないのではないかと思っています。しかも、相手は得体のしれない(?)ソフトウェア投資です。もともと何をどうすれば良いのかわからない社長にとって、投資判断はかなり難しいものなので、「いつ?」についての判断が付きにくいのは理解し難くはありません。
これについては、3つの着眼点があります。順番に解説してみましょう。
1.事業の継続性に問題は無いか?
いわゆるBCP問題です。この単語を中小企業の社長さんに話をすると、多くの場合「うちは何かあってもなんとかなるから」とおっしゃいます。その「何か」については大体は自然災害を想定していらっしゃるご様子。建屋が災害に配慮したものになっている場合、社長は自信を持って「うちは大丈夫」とおっしゃいます。さらに、何も対応できていない会社の場合でも、「何かあったら業務を止めざるを得ない。そうなったらそうなったときのことだ。」と開き直っている方も見かけます。さすがに従業員を露頭に迷わすわけにはいかないでしょうから、最低限の対策はとっていらっしゃると思いますが、いずれにせよ前提とされているのは自然災害がほとんどです。
私がここで敢えて主張するのは、「属人性の塊による事業停止リスク」です。どんな会社でもたいていの場合は特定の業務が特定の人に依存してしまっています。複雑でノウハウが必要なことほど特定の社員への属人性が高くなってしまい、その社員がボトルネックになった場合に問題が顕在化します。なにも、加工などの「技術」のことを言っているのではありません。事務作業一つとっても、高度で複雑な属人化をしてしまっている会社は多く、その担当者が休んでしまったりするととたんに業務停止になるリスクをかかえています。
事務業務の属人性については、ほとんどの社長の盲点になっており、なかなか気が付くことが難しい問題ではありますが、業務プロセスを可視化するとその問題点が如実に表面化します。
業務の属人性が気になっている場合には、「会社のIT化は今!」と言えます。
2.セキュリティに心配は無いか?
これも中小企業の場合はなかなかその必要性を感じず、かなり危険な状態が放置されているケースが多いことで有名です。しかし、例えば大手の顧客から情報セキュリティ診断に入られた場合など、突然そのリスクが顕在化します。
問題は、セキュリティリスクの存在が顕在化したとき、急に対応しようとしても難しい場合がある、ということです。電子ファイルの漏洩のリスクが問題の場合、漏洩しないようにするためには、業務運用面とシステム技術面の両方で対策を取らねばならず、費用も社内工数も無視できないほど大きくなる可能性があるからです。「計画的に備える」べきことを短期間にやろうとすると、それは大きな負担になることはご理解いただけるかと思います。
セキュリティに対して漠然とした不安感を感じられている場合には、「会社のIT化は今!」と言えます。
3.社員採用に障壁になっていないか?
昨今の人材採用難の時代…。社内の業務がアナログで、2重・3重入力は当たり前、紙での運用が社内常識、といった旧態依然とした会社習慣だと、デジタルネイティブな若手には敬遠されるケースが出てきています。社内の情報は社内チャットで手軽にやり取りできる、何かの申請はイントラネットですぐにできる、スマートフォンの活用についても進んでいる、といった状態を少しでも作らねば、これらの人たちには評価してもらえません。さかんにテレビCMを打って、若手を募集していた地方の中堅企業で、「入社したらあまりに古臭くて驚いた。すぐに辞める決心がついた。」といった若手の声を実際に聞いたこともあります。社員向けにも最低限のデジタル化は進めていないと、この様なリスクが顕在化し得ます。
「若手の採用が必要だ」と考えられている場合には、「会社のIT化は今!」と言えます。
いかがでしょうか?IT化はいつ始めるべきかについて解説してきましたが、他にもきっかけはあるかもしれません。代表的な3例を例示しましたが、それに多少でも関係するようであれば、「いま!」の印です。手遅れになるまえに対処することをお勧めします。
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