二代目社長は「5つの期待」を捨てることで成長する
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
事業承継で二代目社長が創業者から事業を引き継ぐ際にはいろいろな壁にぶつかります。その壁を乗り越える際、「5つの期待」を捨てることで、壁を乗り越えやすくなります。
期待することの本質を突き詰めていくと、次の3つになります。
- 期待は自分の欲望の強要である
- 期待は条件付き評価につながる
- 期待は期待の連鎖を生む。
誰かに「これをやってほしい」「こうなってほしい」と期待するのは自分の自由です。一方、相手からすると、
- 「これをやってほしい」→他者の期待に応えて「これをやるかどうか」は自分の自由
- 「こうなってほしい」→他者の期待に応えて「こうなるかどうか」も自分の自由
です。
人の本質として、人は自分の問題解決にしか興味ありません。したがって、誰かに期待するのは自由ですが、期待は自分の欲望の強要であると自覚する必要があります。
また、期待するということは
- 「これをやってほしい」→「これをやってくれた」→評価として〇
- 「これをやってほしい」→「これをやってくれなかった」→評価として×
になります。
つまり、期待は条件付き評価につながります。一方で、人は誰しも他者から認められたいというのが本質。したがって、期待は相手との間で利害が相反する結果につながる可能性があります。
また、期待は期待の連鎖を生みます。
例えば、「これをやってほしい→これをやってくれた→評価として〇」となった場合、相手は「給料を上げてくれる」「昇給させてくれる」「役員にしてもらえる」といったように一定の期待をします。
その際、こちらとしては評価として〇であっても、すぐに給料を上げるほどではないと考えている際、「これをやってほしい」ということで「これ」をやったのに、給料を上げてくれないという不満が残ります。
たとえ上司と部下の関係であっても、人は他者を100%コントロールすることはできません。こちらの期待は相手の期待を生み、相手の期待に応えると、「給料を上げたのだから、今度は『あれ』をやってほしい」という新たな期待を生みます。
そして、二代目社長が事業を引継いだ際、捨てるべき期待の5つの対象は
- 先代社長
- 社員
- お客様
- 専門家
- 成果
です。
先代社長への期待を捨てる
二代目社長は先代社長に「認めてほしい」と期待していますが、先代社長はなかなか認めてくれません。
また、二代目社長は先代社長に「余計な口は出さないでほしい」と期待していますが、先代社長はついつい黙っておられずにあれこれと口を出します。
そして、二代目社長は先代社長に「もっと権限を与えてほしい」と期待していますが、創業者である先代社長はなかなか自分の権限を譲ろうとしません。
社員への期待を捨てる
二代目社長は社員に対して「日々業務改善してほしい」と期待していますが、社員の方は本能的に変化を嫌うので、自分の仕事のやり方を自ら変えようとはしません。
二代目社長は社員に「切磋琢磨して成長してほしい」と期待していますが、社員は自分のことを否定されたり、批判されたりする意見を避けようとします。
二代目社長は社員に「果敢に新しいことに挑戦してほしい」と期待していますが、社員は失敗することを恐れるので、背中を押されないと積極的に挑戦はしません。
お客様への期待を捨てる
二代目社長はお客様に「自社の商品を知ってほしい」と期待していますが、お客様はこちらが発信している情報を見てくれません。
二代目社長はお客様に「商品の良さや特徴を分かってほしい」と期待していますが、お客様はこちらが発信している情報を理解しようとしません。
二代目社長はお客様に「商品を買ってほしい」と期待していますが、お客様はこちらが発信している情報を基本的には信用しません。
専門家への期待を捨てる
二代目社長は税理士に「会社の数字についていろいろと相談したい」と期待していますが、税理士は税金の専門家であって、会社の売上アップに関する相談にのってくれるとは限りません。
二代目社長は弁護士に「リスクの少ない契約書を作ってほしい」と期待していますが、弁護士は法律の専門家であるため、弁護士の作った契約書が法律的には自社を守るものであっても、ビジネスチャンスを逃す内容になっていることもあります。
二代目社長は「資金繰りを改善したい」と期待して銀行員に相談しても、銀行員は融資の専門家であって、お金を回す専門家ではないので、その提案内容が必ずしも会社にとっての正解であるとは限りません。
成果への期待を捨てる
二代目社長は「早く成果を出したい」と期待していますが、成果はすぐに出ません。
二代目社長は「成果を出して認められたい」と期待していますが、仮に成果を出したとしても、認められるとは限りません。
二代目社長は「自分がやれば成果が出る」と期待していますが、担当者ではなく社長になった以上、自ら手を下した成果ではあまり意味がありません。
ただ、捨てろと言われても、なかなか難しいのは事実です。そして、「期待する」の反対語は「信じる」。
先代社長に対する期待を捨てて、自分が大切にする「心意気」を信じて、先代社長に一定のリスペクトを持って接する。
社員に対する期待を捨てて、会社の掲げる「ビジョン」を信じて、社員に対して心理的安全性を担保する。
お客様に対する期待を捨てて、会社の提供する「バリュー」を信じて、お客様の問題解決に徹する。
専門家に対する期待を捨てて、自分の「判断基準」を信じて、最終的に決断する。
成果に対する期待を捨てて、会社が日々実践する「ミッション」を信じて、ぶれずに本気度を示す。
表現を変えると、余計な期待は捨てて自分がコントロールできることに集中することで、新しいステージを開拓できるということです。
なお一人では難しいかもしれません。ただし、社外の第三者が伴走しながらサポートすることで、最初は孤立無援の状態でも、やがて、自分の個性を活かしつつ、周囲からもサポートされる孤立応援の状態へと進化させていくことは可能です。
「いろいろな葛藤があって、なかなか自分の思い通りに会社経営できていない」と日頃感じておられる二代目社長の方は一度お問い合わせいただければ嬉しく思います。
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