意図せずして力が抜け、アイデアが沸き上がる良質な瞬間の作り方
先日、とある会合で隣に座られた方とお話をするうち、なるほどな、というエピソードが出てきました。その方は経営者兼アーティストで、日々、芸術作品の創造に取り組んでおられます。かなりの年数同じことをやっておられるのですが、まだ新しいものを探求されていて、「でも最近はやれどもやれども新しいものが出てこない」と悩んでおられます。
「いくつ作っても前にも同じようなものを作ったような気がして、どうにもつまらない。自分も満足しないし、周囲も満足しない」と語られる。そんなとき、長年パートナーとして連れ添ってこられた奥様が一言「あなたの欲が深いからよ」と言われたそうです。察するところ「何かに執着しているから、壁が超えられない」というご神託が下されたようなのです。
これ、私たちにもありますよね。たとえば、見栄えの良いポートレートをとろうと思って、写真スタジオに撮影を依頼し、いろいろとポーズをつけてもらうのだけれど、不自然な表情の写真しか撮れない。写真を撮る側も、撮られるこちらも緊張していますから、何回シャッターを切ってもこわばった顔の連続なわけです。で、そんな緊張の時間がある程度続いた後に、意図せずして緊張が途切れることがある。それは緊張に疲れて意識のフォーカスが外れてしまったような時。そんなときに、びっくりするような良い表情が撮れたりします。
何事かにとらわれてアイデアをこねくり回していると、物事はどんどん複雑化していって、収拾がつかなくなり、最後はイヤになって投げ出してしまう。これではそもそも考え始めた意味がありません。頃合いの良いところでふっと息を抜いてみる、これも良いアイデアが下りてくるための技法の一つと言えます。
冒頭のお方も、ちょっと休憩と思ってお茶でも飲みながら、なんとはなしに作ってみたものが、後から見てみると、びっくりするような快作もしくは怪作だったりすると言われていました。意識のフォーカスがはずれた隙間に、何かが降ってくる、実際はご自分の頭の中のどこかのフタが空いて、何かが湧いて出てくるのでしょう。
ところで、世の中にはゼロから生まれるアイデアはないと言われています。新しいものは必ず何か古いものの組み合わせからできています。でも単なる組み合わせだけでは、新しさは生まれません。組み合わせに加えて、絶対に必要なのは「飛躍」です。
馬車を何台つなげても機関車にはならないのです。同じ移動の手段であっても、馬車と機関車の間には大きな飛躍すなわちギャップがあります。そしてその飛躍を生み出すのは「刺激」に他なりません。誰かの発想や何かの体験が刺激になって、混沌とした状況から一つの突出したアイデアが浮かび上がる。そういう体験をしたことのある方は多いのではと思います。
そういえば、アルキメデスの大発見もお風呂から湯があふれ出るのが刺激になったし、ニュートンのりんごも同じこと。本を読んで新しい知識を得るのも刺激になるし、他人の体験談も刺激になります。私たちコンサルタントも刺激の種をたくさん携えて、社長の頭の中の混とん状態に秩序を見つけるお手伝いをしています。
たくさんの経営者の皆さんが上手にコンサルタントを使って、会社の中の絡み合った問題を解決し、成長の道筋を見つけています。時間当たりの成果を表す「タイパ」という言葉がメジャーになってきた今だからこそ、視野に入れていただきたい方法です。
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