決断がもたらすもの
最近仕事でド田舎の(失礼)とある小規模な食品加工メーカーを訪問する機会がありました。話を聞くと出荷も堅調なので、生産設備の拡充を考えているとのこと。7年前に創業した女性社長の下で、後継者の娘さんが右腕として活躍されていました。そのほかには男性従業員が3名と、絵にかいたような小規模事業所でした。
この時代に食品加工か、と思われた読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、それよりも立派だなあと感心させられたのは、娘さんが学校を終えてから起業したというその決断力でした。中高年の、しかも特に強みとなる能力を持っているわけではない女性が起業を決断して、7年で拡張投資を検討する段階にまで持って行くという展開には、人に言えない苦労もあったことと思います。
創業時に借りたローンはすでに全額を返済し、拡張投資に向けて新たな計画を練り始めている段階だということでした。すべてに対して前向きな考え方をするオバさんパワーには全く脱帽しかありません。考えてみればその原動力になったのは、背景にある起業という決断だったわけで、「経営とは決断である」という名言を思い出させられる経験でした。
また同社の製造工程から出てくる原料の搾りかすは有機肥料の原料として人気があるそうで、生産設備拡充計画を作成する段階では、量が増えた後の搾りかすの販売先までしっかりと目配りをしなくてはいけません。
事業がステップアップする段階で求められるのは、何よりもこの「販売先」が見えているかどうかであることは、経営者であれば自明のはずなのですが、それがなかなかそうはなっていないのです。
かの一倉定先生は「社長がいるべきところは社長室ではない、それは常に客先である。」という名言を残されています。お会いした女性社長は、製品を安定的に買い上げてくれる客先を2件ほど抱えているとのことで、あまり客先をマメに訪問している雰囲気ではありませんでした。今の日本では見かけなくなりましたが、言ってみれば「作れば売れる」状態のため、どうしても製造プロセスに目が行ってしまうようでした。
これが思わぬ足かせにならないように、設備拡充と並行して社長には積極的に客先訪問と顧客開拓に励んでもらえるよう、コンサルタントとして計画づくりをお手伝いしてゆこうと思っています。
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