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人の力で差をつけているチェーンには、仲間の監視業務が無い

SPECIAL

チェーン企業のマネジメントの仕組み構築コンサルタント

株式会社ピアーズ

代表取締役 

マネジメントの仕組み構築のスペシャリスト。
これまで20年以上チェーン事業に身を置き、実際に15の組織のリーダーを務め、200以上の経営に関わり売上、利益を上げてきた経験を持つ。チェーン事業の売上が兆単位の企業や創業40年以上の歴史を持つ企業にさえマネジメント面の仕組みが1つも存在していない事に疑問を持ったことから、チェーン事業に共通するマネジメント面の仕組み構築方法を体系化。その効果は大きく、マネジメントの半ば自動化と質の向上により、クライアント企業は利益2~3倍増、業種によっては仕組み実装の初月から数値を跳ね上げさせる指導を展開している。

「暇だからって、手を抜きまくっているのでは?」

ある社長がこっそりお店を視察しに行った時の心境です。

 

しかしそのお店ではお客様がほとんどいらっしゃらない曜日、時間帯なのに、店員達はまるで混雑時に出すスピードのごとく足早に、手早く仕事をこなしていたのです。

社長はほっとひと安心、と思いきや

 「いや、この店だけかもしれない」

心配性の社長は、拭いきれない不安を抱きながら次の店舗に向かいました。

 

別に社長には、どうしても店舗を視察しなければならない理由などありませんでした。

いつでも会社に戻って自分の仕事を進めてもいいのに、

問題がある都度、エリア長を指導する形でもいいのに、

何故かわざわざ不安を抱きながらも自社の店舗視察を続けたのです。

 

さて、次に社長が訪れた店もアイドリングタイム。

店員の様子はいかがなものか?

今度のお店は問題店。

接客の質が低く、これまで幾度もトラブルを生みだしてはお客様、経営陣を悩ませ続けてきている店舗です。

 「もしかしたら、がっくりどころか腹が立ってしまうかもしれない・・・。」

社長は、たとえライバルチェーンであっても、暇だからとおしゃべりに夢中になっている従業員達を見るとイライラしてしまう方なので、不安で仕方ありません。

 

恐る恐るのぞいてみた社長の目に映ったのは、不安とは真逆の光景。

その店の店員達も、お客様がほとんどいらっしゃらないにも関わらず、まるで混雑時に出すスピードでテキパキ仕事を見つけては、おしゃべりもせずに黙々とこなしていたのです。

 

またほっとした社長。

そして更に社長を驚かせたことがありました。

それは接客態度や、売場づくりでもなく、清掃の徹底度でもありません。

仕事のチョイスでした。

 

接客業の仕事には、大きな結果を出そうとする際

「傍から見ると『一体君は何をやってるんだ? サボってんじゃない。 すぐ通常業務に戻りなさい』と指摘されかねないイレギュラーな仕事」

が存在します。

 

この仕事の怖いところは、大きな結果を出せたとしても、下手をすると実施した本人の評価が下がってしまうところにあります。

よって誰からも敬遠されがちな仕事ではありますが、そこの店員はお客様が少ないアイドリングタイムを選んで、上手に進めていたのです。

 

 「みんな頑張ってるな、安心した」

社長は今度こそ視察を切り上げ、会社に戻るのかと思いきや

 「いやっ! いやいやいや、たまたま続いただけかもしれない・・・」

もし社長の付き添いがいたとしたら、きっと「社長、もういいんじゃないですか?」「会社に戻りましょう」となっていたことでしょう。

社長はその日、何度も不安を抱きつつも、次から次へと店舗の視察を繰り返しては安心を得ていたのです。

 

 「伊東さん、私の求めていたのはこれなんですよ」

 「私はこの・・・なんと言いますか・・・納得?・・・といいますか安心? 安眠かな?」

 「コレがず~っと前から欲しかったんです!」

 

 

チェーンビジネスは働く人の数が多くなる分、経営者は人に関する問題をいくつも抱えることになります。

その1つに挙げられるのは「忙しい時と暇な時の従業員の動き」です。

客商売ですから、時にはどんなに準備万端で構えていても、臨まぬ「暇な時」はやってきてしまいますし、逆に「何でこんなにお客様がいらっしゃるの?」「もう勘弁して」と「キャパを超える混雑」もやってくることがあります。

そんな時こそお店のリーダーの手腕が試されるところではありますが、問題なのは、コントロールしなければならないのが「人」だという点です。

 

人ではなくモノであれば何も問題はありません。

モノの価値が下がってしまうことにならなければ、混雑度には強引に扱ったり、後回しにしてしばらく放っておいたりするなど、臨機応変なコントロールが可能です。

後になってからいくらでも何とかできちゃうからです。

 

しかし「人」はそういうわけにはいきません。

 「暇だから帰ってくれ」     とか

 「混んでるから今すぐ店に来い」 などできません。

もし、そんな扱いを続けていようものなら、店舗運営はもちろん、やがて会社の経営にまで大きな問題が発生してしまうことになるでしょう。

よって、チェーンビジネスにおいて他社よりも業績を上げていくには、いかに混雑時、閑散時に人のエネルギーを上手に発揮させられるか?は、とても重要なのです。

しかし、会社として何も手を打っていなければ、閑散時にはノロノロダラダラ動かれ、おしゃべりに夢中になられたり。

そして混雑しはじめると、経営者にとっては「待ってました!」という歓迎すべき時なのに、店舗では

 「何でこれを準備しておかなかったんだ!」

 「前のシフトの人達は一体何してたの?」

 「〇〇さん、そんな事いいからまずこっちをお願いします!」

あたふたと、ロスに次ぐロスが発生してしまいます。

これでは、せっかくいらっしゃってくれたお客様をがっかりさせてしまうことはもちろん、最悪「もういいや、帰ろう」「二度と来るもんか」など、とても経営者が直視できない現実が日々繰り返されてしまう事になるでしょう。

 

 

ある会社の例です。

混雑時のロス、閑散時の手抜きを問題視していた社長は

 「なぜ暇な時に十分に準備しておくという簡単な事ができないのか?」

その対策として、ある高額なシステムを導入したのです。

 「これでロスも手抜きも減るだろう」

 

その結果は失敗でした。

仕事が楽になったからと、手抜きが逆に増えてしまったからです。

社長はますます疑問を抱きました。

 「閑散時に手を抜いたら混雑時に苦しむのは自分達なはず」

 「こんな簡単な事が何故わからないんだ?」

 

一方、冒頭でご紹介した社長は順調に業績を上げられています。

新たなシステムも導入してませんし、新たな人手も増やしていません。

既存の社員、スタッフのエネルギーを混雑時、閑散時に上手に配分できています。

 

なぜこのような違いが現れるのでしょうか?

 

 

その要因の1つに挙げられるのは社長が「社員やスタッフ達をどう見ているか?」にあります。 

業績を上げていってる社長は、社員やスタッフ達をこう見ています。

 「彼らは私の分身だ」

人の本気をいつまでも引き出せない社長は、社員やスタッフ達をこう見ています。

 「彼らは単なる労働力だ」

 

こう言いますと「我が社は前者だ」とおっしゃる社長が多いことでしょう。

しかし現実は、口ではそう言ってても、社内のマネジメントの形が「あなた達は単なる労働力なんですよ」となってしまっている会社ばかりなのです。

 

例えば会社組織には「社員やスタッフが不正や怠慢に走ってしまう事を防ぐための監視業務」が存在します。

さて、この業務は「君達は社長の分身なんだぞ」と言ってる会社の社員やスタッフ達に必要と言えるのでしょうか?

 

ここで会社の業績を上げたいと願っている経営者に質問です。

 「あなたがもし、社員やスタッフの立場だったとしたら、暇な時があったら手を抜こう、ダラダラしよう、おしゃべりに没頭しようとしますか?」

 

 

何が言いたいのかと言いますと、社員やスタッフ達が「社長の分身」なのであれば、彼らを監視するための業務など必要無いのです。

なぜなら上昇志向の社長であれば、暇な時が訪れても「手を抜こう」とか「ダラダラしよう」「おしゃべりに没頭しよう」などするわけがないからです。

そんな時間あるのならば

 「やった、やっと空き時間ができたぞ」

 「この時間をどう有効活用しようか?」

と考え、常に貪欲に結果に結び付けようと行動にうつしているはずではないでしょうか?

 

では、社員やスタッフ達を「彼らは私の分身だ」と見て、業績を上げていってる会社には監視業務が無い代わりに何があるのか?といいますと

 「いかに社長の想いをうまく伝えられるか?」

そんな仕組みがいくつも存在しています。

 

ただ単に「いいか、君達は私の分身なんだぞ」と言ってる会社とは違います。

言ってるだけではなく、仕組みがいくつもあるからこそ、たとえまだ学生という卵の殻がおしりについている新入社員であっても、たとえ採用されたての高校生スタッフであっても、そして自分の立ち位置に満足していて、更に努力しようとしない堅物のベテランであっても、誰もが

 「この空き時間を使って何かできないか?」

 「次に暇があったらこうしよう」

などと構えてくれるのです。

その結果、いざお店に想定以上の混雑が訪れても「もっと来い!」「もっと続いてくれ」といわんばかりに次々にお客様を笑顔にしていけるのです。

 

 

先日、ある社長が私にこうおっしゃいました。

 「伊東さん、Yさんはこんなこと言ってましたよ」

 「私はさすがYさんだな~って思いましたね」

面白いのは、その社長にはかつてYさんがビジネスにおいて迷っていた時、上手に道案内した過去があることです。

つまり社長はYさんの人生の師匠に当たる人なのです。

普通、そんな師匠が言わば教え子に対して「さすが」など評価するでしょうか?

そして、その評価を第三者である私にまでわざわざ言うでしょうか?

 

自分の分身を上手に増やしていける社長には、時に

 ・分身から驚かせられ、

 ・感動させられ、

 ・しかもそれを他人に伝えたくなるほど

そんなとてつもない結果を生み出してくれる時がやってくるのです。

 

 

御社はいかがですか?

 働く人達、誰もが「社長の分身」となっていますか?

 それとも、単なる労働力と見て、より強烈な「監視」に力を入れようとしていますか?

 

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