同族社長が相続対策で大切にすべきこと
会社は、事業が永続する限り100年でも200年でも続きます。一方で、人間には寿命があります。さみしいことではありますが、こればかりは致し方のないことです。
これから迎える夏の暑い時期や冬の寒い時期などは、誰にとっても体力的に厳しい時期です。特に、ご高齢の先代社長世代の方々は、体力的に持ちこたえるのが難しい時期でもあり、例年「相続」が発生します。
相続が発生してからご相談をお受けすることがあります。しかしながら、相続が発生した後では、対策の選択肢が限られているため、「もっと早く相談していただけたら…」と残念に思うことが多々あります。
特に、同族企業の事業承継は、単純に「社長が交代する」という話ではなく、水面下には、株式や事業用資産の承継、古参社員や親族従業員の扱いなど、実にデリケートで一筋縄ではいかない問題が潜んでいます。
さらには、同族会社ならではの特性もあります。だからこそ、出来る限り問題の芽が小さい段階で、デリケートで複雑な問題と向き合い、課題解決のための一手を打つことが重要なのです。
この点を安易に考えて物事を進めてしまうと、後々手痛いしっぺ返しが待ち受けています。中でもよくある失敗例が、税金のことだけを考えて進めてしまうケースです。
事業承継の場面では、どうしても税金の問題があります。重要なのは、税金だけが問題ではないという視点を社長自身が持つことです。
大変厳しい表現になってしまいますが、社長自身が無策なまま顧問税理士に依存していると、後々取り返しのつかないことが起きます。
実際に、当社にも、「顧問税理士の話を鵜呑みにしたら、経営が苦しくなった…」「顧問税理士の間違ったアドバイスのせいで、ひどい目にあった…」という社長さんが数多く訪れます。
全ての税理士がダメというわけではありません。大切なことは、そもそも社長が税理士の専門領域を正しく理解しているか、です。
「税理士はあくまでも税金の専門家」であり、多くの税理士は、税金の立場からアドバイスをしています。
ですが、事業承継の局面においては、税金の問題はあくまでも表面的に見える問題の一部です。それが全てではありません。
いかに親族間での争いを未然に防ぎ、財務的により良い状態で承継するにはどうすべきかなど、他にも解決しなければならない問題があることに社長が気づいているか、です。
それに、多くの税理士は「財務」を知りません。財務を知らないまま「税金」だけ考えたアドバイスを鵜吞みにしたら、どうなってしまうか…ということです。
もちろん誰に相談するかは、社長が自由に決める話です。ですが、そもそも論の話で、相談相手を間違えている…、これではどうしようもありません。
税理士は、「過去」のお金の流れをみて税金の計算をする「税金の専門家」です。
したがって、会社の「未来」のお金のことを相談しても、正しい答えは返ってこないのです。事業承継の話は、過去だけでなく「未来」を見据えての意思決定なのです。
対して、財務は、「財産管理の実務」です。つまり「未来」に向かって、社長と会社にお金が残る仕組みづくりをすることです。あくまでも、税金は支払うものであるのに対し、財産は、残して増やすものです。
会社を守り、社員や家族の生活を守れるのは、ただ一人「社長だけ」です。会社のリーダーであり、家族のリーダーでもある社長こそ、財務の視点から会社の未来を考えて、事業承継・相続対策も先手先手で実行すべきなのです。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。
あなたは今、社長としてどんな未来をつくりたいですか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。