浄化槽にサヨナラする日(前編)
「浄化槽」最後の日
鹿児島の自宅ではずっと「浄化槽」を利用してきました。購入した敷地が下水道未整備地域だったのです。浄化槽設置の際には、下水道がある場合に比べて工事費用がかさみます。当時は鹿児島市から20万円程度の補助金も出ていました。
また、自宅周辺では数十年にわたって区画整理事業も進行中で、購入時は自宅敷地も計画区域内でした。これまでの進捗状況から見て「順当に進んで行ったとしても30年以上かかる」と踏んでいました。「70歳を超えてリタイヤする年齢で立ち退きになっても補償金もらえるし、それはそれでいいか」なんて言ってましたが、数年前に計画区域から外れてしまいました。
浄化槽が必要な地域でも、区画整理事業によって地域が再整備されると下水道インフラも設置されます。しかし、計画区域から外れてしまいましたので「このまま浄化槽と添い遂げるんだ」と思っていました。ところが、実際は逆でした。
最近、庭の竹の根っこが攻めてきて浄化槽を突き破ってしまったことがありました。竹の根っこのパワー恐るべし、こういうトラブルはよくあるのだそうです。かなりの修理代がかかりましたが、これも「致し方あるまい」と修理しました。と、その直後に下水道設置のチラシが入ったのです。自宅周辺は、区画整理の計画地域から外れたことで下水道設置時期が早まったのでした。
まずは、道路への下水管埋設工事があちらこちらで行われ、あわせて各家庭の引き込み口も地中に設置されます。そして、下水道事業受益者負担金なる一時金の通知がありました。これは、敷地の登記面積に応じて負担額が計算されるもので、1年4期で5年間の20回に分けて支払う方法と、負担金総額を一回で支払う方法が提示されます。初年度の第1期分の納期限までに一括払いをすると1割近く安くなりました。
そんなこんなで「浄化槽とサヨナラする日」が突然やってきたのです。
↑浄化槽とサヨナラするためには、20年間お世話になった枕木に手をつけねばなりません
↑コンクリート土間をカットする位置の墨出し中
↑既存の土間はタンパー(赤枠内)を使って菱形のガタガタ仕上げにしてあります
↑浄化槽の土間コン上部には「ガンコマサ」という自然土防草材(黄土色)で仕上げてありましたが、だいぶ剥がれてしまっています。
↑土間コンをカット中(水を流しながら切るので墨出しの線がよく見えません)
↑浄化槽内部の様子(竹の根っこがFRPを突き破っていました)
水道屋さんの配管工事にて
自宅の場合、浄化槽は道路から見えない奥のほうに設置されていました。メンテナンス業者泣かせではありますが、小さい土地で庭を楽しむための配慮でもあります。そのため、下水道に切り替える際の宅地内配管距離も長くなってしまいました。(当然、工事代もかさみます)
また、排水管を埋めるためにコンクリート土間や枕木の一部を一旦撤去する必要もあります。通常、配管設置後土を埋め戻してセメントで固めます。その場合、色も継ぎ目も目立ちますし、車が載っかる部分は割れも出やすくなります。自宅のようなタンパー模様の仕上げはより目立ちそうです。
そして、枕木に関しては一旦掘りおこすとまず再利用はできないはずです。数十年線路で使用されたかもしれない中古の材料を設置して、さらに20年経っている訳ですから。(自宅の枕木の変遷については、『枕木』が語りかけること をご覧ください)
さらに、道路際にある桜の木の根っこがかなり拡がっていると思われますので、配管ルートを出来るだけ桜の木から遠くした方が木のためにも良さそうと思い、やや遠回りするルートにしてもらったのです。
↑浄化槽内に流れていたパイプを道路まで延長します(浄化槽は清掃して空洞に土を充填します)
↑掘り返すと結構な土の量になります
↑ご覧のようにパイプ埋設のための掘削幅は小さいのですが、コンクリート平板が2列並ぶよう広めに土間コンをカット(写っているホースは浄化槽清掃用)
↑道路からの排水管接続口は割と深いところにあります
↑ひたすら掘っていたら境界杭が出てきました(何らかの造成が入った土地ではあるあるです)
↑配管後埋め戻し完了(↓の位置に点検口が設けられました)
↑配管後埋め戻し完了(土のうは車が点検口を踏まないよう置いていってくれました)
水道屋さんの手直しにて
今回、工事をお願いした水道屋さんは初めてお願いする会社でした。新築時からお世話になっている水道業者さんから「うちより慣れていて機械も揃っているから値段も安いよ」と、紹介してもらった会社でした。昔の仲間は「良心的」です。
事前の打ち合わせは社長であるお父さんと進めてきましたが、工事には息子さんがずっと来てくれていました。工事完了後、養生していた合板を片付けていると手直し部分が出てきました。少しだけ墨出ししたラインから外れて既存の土間コンクリートをカットしていたことが発覚したのです。
といっても、大きいところで30mm、小さいところで5mm幅という微妙な寸法です。「改めて道具持って切ってみます」と息子さん。後日持ってこられたのは最初に切ってもらった水を使うカッターではなく、『HILTI』ダイヤモンドブレードを装着した充電式カットオフソーでした。
『HILTI』といえば、職人の中では言わずと知れたブランド。電動工具のロールスロイスみたいなやつです。「親父が道具好きなもんで。すぐ買ってくるんですよ」と息子さん。早速、実際に切ってみると、超鋭角の三角形カットが一発で出来てしまいました。
その日、思ったよりあっさりできてしまったので、休憩しながら色々話していると「家のメンテナンスの事とか聞いてもいいですか?」と言われ、色々質問をもらいました。実はその息子さんご家族、シンケンの家を建てて住まわれているのでした。聞けば、シンケンの水道工事はされていないとのことでした。
息子さん:「自分の仕事では土やコンクリートばっかで木の加工のことなど全然知らないもんで。。。」「自分の家のことになると、からっきし何もできなくて。。。」
私:「倉庫の中、見ます?家のメンテナンス用の道具とか材料ありますよ」
息子さん:「うわー。見たいですー」
それから、残材の利用方法や木材の加工方法などの話で、ひとしきり盛り上がりました。
私:「シンケンの家のことなら、いつでも聞いてください」「20年経って色々自分でもやってみてますから」
息子さん:「ありがとうございます。助かります」「実は家建てる時、親父や周りにはえらく反対されて。家の手入れの事なんかは話題にしにくかったんです。。。」
私:「なんで取引している住宅会社で建てないんか!って感じでしたか?」
息子さん:「それ!それでした。」
この息子さん、純粋にシンケンファンだったのですね。このあとも「スシ食いねぇ、家シンケンだってねぇ」って感じでした。
↑コンクリート系最強ツール『HILTI』降臨
↑5mm→30mm幅の薄いカットを難なく一発でやってしまいました
↑この断面をご覧ください!この切れ味を。まるで木材カットのようです
かくして下水道を使用できる状態になりました。ここからが「革新」の部。次週は庭師さんの登場です。
浄化槽にサヨナラする日(後編)につづく
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