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小物システムの無秩序導入は害悪だ

鈴木純二
SPECIAL

顧客接点強化による成長型IT導入コンサルタント

ベルケンシステムズ株式会社

代表取締役 

顧客接点の強化を軸に、業績に直結するIT導入を指導するスペシャリスト。世に無駄なIT投資が横行するのと一線を画し、顧客の利便性向上、新規取引先、深耕開拓、利用促進…などを主眼に置いた、実益のIT活用と投資戦略を、各会社ごとに組み立てることで定評。

鈴木純二

最近、クラウド系のツールが流行しているためか、お客様のところにお邪魔すると実に様々なツールを導入されているケースが多くあります。会計システムはもとより、勤怠や労務管理クラウド、ワークフローサービス、グループウェア、顧客管理サービス等々、スタートアップが始めた珍しいものを含めると数々のサービスが世の中にあり、会社用のクレジットカードがあれば即日利用開始できます。

それぞれのサービスを見ると、かゆいところに手が届くような便利な機能を持っているものが多く、「これがあれば確かに便利になるな」とうならされるものが多数。しかし、それらを無計画に導入するととんでもないことが起こりえます。

先日もあるお客様のところにお邪魔して、導入されているシステムを確認させていただいていた際に、「勤怠打刻のシステムがあるのですが、そこに表計算で処理したデータを毎月入れています」というちょっと意味不明の説明がありました。せっかく手間がかからないクラウドシステムを導入したのですから、表計算で処理する必要性がどうして発生するのでしょう・・・

いろいろと事情を確認させていただいたところ、社員それぞれの雇用契約が異なるため、「同じ雇用契約を前提としている打刻システムでは一度の操作で月次操作ができない。仕方なく外部で一度データを整理してから打刻システムに設定するようにして回避している。」というお話でした。

雇用契約にバリエーションが存在する会社は存在します。それもたいていシフト勤務体制が絡んでいるので、時間や契約によって時給も変われば年休の与え方も異なる。総合的な労務管理ソフトであれば、たいていこれら全体をカバーすることができるはずですが、その会社で導入したのは打刻ソフトです。比較的単機能のシステムなので導入の判断も簡単だったのだと思いますが、データを運用することについて検討が足りていなかったということでしょう。実に残念です。

実際、このような事例は枚挙にいとまがなく、生産管理システムから仕入れデータを取り出し、それを加工してから会計システムに入れる、といったことをしている会社はかなり多いと思います。つまり・・・

機能的には一つのシステムで閉じているのに、それを運営するために必要な情報を他のシステムから得なければならない

ところが簡単にデータを渡すことができないため、人間が手加工している

という状態です。せっかく合理化のために導入したのにこの始末となるのは、ご担当者にも社長にも本意ではないでしょう。

では、どうやってこれら便利な小物システムを導入すれば良いのか?ですが、私は「全体の機能マップを書いて検討すること」をお勧めしています。「どのデータがどこから来て、それがどのシステムに入ってゆくのか」をざっくりでも絵に描くのです。フォーマットはなんでも構いませんが、あくまでシステムのことを考えるので、システムへのデータの入力元とシステムからのデータの出力先が見えるようにする必要があります。これらのデータが何も変換なくそのまま入れることができるのであれば、そのシステムを導入しても大丈夫だ、ということを意味します。「AとBから情報を抜き出し、Cに入れられるように手加工しなければならない」といったデータ操作が必要な場合がもしあれば、それは絶対にやめておいた方が良いです。様々なシステムのはざまで人間が小間使いの様に使われることになるからです。

つまり、どんな小物のシステムであっても、安価なものであっても「導入は計画的に!」ということに尽きます。

これら新しいシステムは、その宣伝だけを見ていると良いことづくめに見えますが、そのために社員が生産性皆無の仕事をしなければならなくなることは避けなければなりません。安易な導入判断はぜひ避けるようにしたいものですね。

 

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