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下僚に仕事を上手く渡す

SPECIAL

オルタナティブ経営コンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

カーボンニュートラル、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、社会的インパクト評価などへの対応を通じた現状打破と成長のための対案の構築と実践(オルタナティブ経営)を指導する。主な実績は、増客、技術開発、人財獲得、海外展開に関する戦略の構築と実現など。

会社が仕事を進める上で、経営者の判断に基づいて業務を進めるのは下僚の役割になることが多いと思います。判断に基づいて下僚に仕事を渡す段階で、決めるべきことをしっかりと決めておくことが仕事の成否を分けるカギになることを、どれだけの経営者が意識できているでしょうか。今日は以下の3点について、ついおろそかにしがちなミスを予防する重要性についてお伝えします。

1.責任を渡したのに権限を渡さない

業務の責任者として予算と締切を明示された下僚は、その範囲内で成果を上げるべく努力します。他方で、成果につながる技術を提供している外部パートナーからすると、技術の採用に関する意思決定が果たして下僚の権限なのか、それとも再度経営者に上がるのかが見えない分、事業参加に対するモチベーションが制約されてしまうことがあります。

下僚からすれば、最終の意思決定を再度経営者に上げることは何らおかしな話ではないのですが、それはあくまで社内手続きの話であって、共同開発のパートナーである社外の関係者から見れば全体のバランスを二の次に置いた対応であると見えてもおかしくありません。

残念ながら、下僚の目には「それも経営者の判断のうち」としか映らないので、下僚の側から手続き論を見直す動きは起こりようがないのです。かくて社外のパートナーは意思決定がなされるまで何もしないという事態に陥り、最終的に締切へのプレッシャーは高まるばかり、というような展開になります。

責任を渡すなら、その範囲での意思決定権限も下僚に付託することができれば、この部分は大きく改善されることでしょう。外部パートナーへの手続き論を説明する段階でそれがしっかりできていれば、空気感はだいぶ変わってくるはずです。

 

2.話しただけでビジョンを共有したつもりになる

「こんなことができれば良いよなあ。」「これは是非こうしたい。」など、改善後の絵姿を話し言葉で共有しておくことには経営者にとって大きな意味があります。ところが、それも人によって理解のレベル感にバラツキが生じることがあります。経営者との会話密度がその主な原因だったりするわけですが、経営者が期待する部分に思いをはせてくれる人とそうでない人の間には、発想法や資質も絡んで、どうしても段差のような違いが残ってしまいます。

メンドクサイと思われるかもしれませんが、ここはぜひ「書いたもの」でビジョンの共有を図る手間を取ってください。文章が得意でない方には、最近流行のChat GPTを活用することもお勧めです。書き物の生産効率が飛躍的に上昇します。

 

3.ここまでできれば・・という到達点を明確にしない

プロジェクト工学の考え方では、「勝利条件」というそうですが、「ここまでできれば良しとする」という到達点≒成功の判断基準を明示しておくことも重要な要素です。

始める前には予想すらできなかったあれこれが次々と発生し、プロジェクトは当初の想定とは全く違った方向へと走りだしたりします。そうなっても慌てないように、「一年後の勝利条件」みたいなイメージを始める前に共有しておくこと、これは経営者の重要な責務だと言えます。それをせずにプロジェクトをスタートさせることは、最初から予期せぬトラブルによる失敗のリスクを抱え込んだまま走り出すこととほぼ同値だとすら言えるのです。

ビジョンを可視化し、到達点を明示したら責任と権限を同時に渡す。下僚に対してここまでしっかりと仕切れる経営者は、決めるべきことを決めることによって、勝利の女神が微笑んでくれる確率を引き上げる努力をしている、と言えるのです。

 

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