「やる気がある人」は1~2割が限界なのか?
「どの会社もレベルが低いな~」
「私がぶっちぎってやる!」
そんな野望を持ってチェーンビジネスを始めた社長もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし想定通りいかず
「あれ・・・、こんなはずでは・・・」
「やる気がある人達ばかりにすればうまくいくと思っていたのに」
「どうしてもその『やる気がある人達』が増えていかない」
「頑張っても1~2割どまり」
「これ以上増やしていくのは無理なのか・・・?」
そんな見えない壁の存在を感じはじめている経営者もいらっしゃるかもしれません。
その見えない壁は、破ろう、乗り越えようとする経営者をことごとくはね返してきます。
どんなに時間をかけても、これでもかとコストをかけ続けても・・・。
想定以上の厚さと高さを実感した経営者が、今後どうしていくのか?
その選択は大きく2つです。
「もう疲れた。あとは誰かに任せよう」と仲間に託す。
もしくは
「いや! どこかに壁を乗り越えられる手掛かりがあるはずだ。毎日ヘトヘトになってでも突き止めてやる」と体にムチ打って挑み続ける、です。
チェーンビジネスを行っている企業の中には稀に、ドンドン出店を重ねられ、既存店の利益も順調に上げていける規格外な会社が存在します。
傍から見ますと
「もしかしたら、あの会社はやる気がある従業員を1~2割より増やせたのでは?」
「一体どうやって?」
その姿はまるで、どの企業も乗り越えられなかった壁を簡単に乗り越えられ、すでに向こう側の楽園でひとり、謳歌できているかのように。
あまりの好調ぶりに「いや、たまたま好立地に出店できているだけでは?」とか「看板商品が今、たまたま注目されている時代なだけ」「いつか失速するに決まってる」などと見られるほど。
一体、何が違うのか?
それは、社長が「やる気のある人を増やしていこう」という路線から、働く人達誰もが「自分の得意ではない仕事でもやり抜こう」「徹底しなければ!」となっていく「仕組み」をつくってみよう、に切り替えた、です。
仕事は大きく2つに分けられます。
それは自分が得意な仕事か、そうでないか。
経営者にとって忌まわしい「従業員の手抜き、いい加減、妥協、実施しない」が生まれてくるのは、ほぼ後者です。
よって経営者としては、会社の誰もがやる気を出してもらうために、得意な仕事ばかりをうまく割り振ってあげたいところですが、100%とはいきません。
交渉が得意な営業マンでも、商品を熟知できていなければ契約に持っていけないように。
販売が得意なセールスマンでも、売場をキレイに保てていなければ、肝心のお客様がいらっしゃらないように。
自分が得意ではない分野の仕事を0にすることはできないからです。
よって重要なのは「誰もがやる気を出しづらい、得意ではない仕事にどう向き合ってもらうか?」です。
ある社長と私のエピソードです。
ビジネス上のお付き合いで、私は何度か社長のオフィスにお邪魔しているのですが、そこはビジネス書がズラリ。中にはタイトルを見ただけで眠くなってしまう専門用語や横文字だらけのものも数多く並べられています。
私が最初に感じた印象は「さすが〇〇社長。結果を出し続けられている理由の1つは、ここにある本を全て読んでいるからなんだろう」でした。
そしてある日、ふと質問してみたのです。
「社長はここにある本、全部読まれたのですか?」
社長の応えは意外でした。
「いや~まぁ読んではいますけど・・・理解しているかどうかと言われると・・・」
「私は専門的な本を読むと、頭が痛くなっちゃいますからね」
と笑顔でおっしゃっていました。
私はてっきり「社長は、あれこれ自ら本を買い漁っては読みまくり、知識に変えてはビジネスに結び付けている人」と思っていたのですが、実のところは「親しくなった方々からドンドン本をプレゼントされ、感想をお伝えする為にも無理して読んだ」・・・だったのです。
つまり、どんなに素晴らしい結果を出し続けられる人でも、自分が得意としない分野の仕事は存在するということ。
そして、その仕事自体にやる気満々なわけではないが、逃げたり、いい加減に処理するようなことはしないということです。
社長のように気が進まないながらも、自分が得意ではない仕事を頑張ってなんとかやり遂げた時、その出来栄えをその道のプロから見られたらきっとこう思われる事でしょう。
「レベルが低いなぁ」
「あれこれ指摘したいところが沢山あるぞ」
しかし、大きな結果を出し続けられる人はそんなことは気にしません。
いくら呆れられようが、笑われようが、けなされようが、それは想定内なのです。
「誰かに笑われるかもしれない」とわかっていても、その手を止める事はありません。
そしてその結果はその人の「気持ち」がこもっている為、完成度は低いにしても「雑」ではありません。
やがて苦労を重ねて「得意ではない分野の仕事」を終えた時、もう一方の得意分野の仕事の結果がひと際輝きを放ちはじめます。
それはまるで、商品部の人達よりも商品を知り尽くしたわけではないが、がんばって分析した営業マンが、次々に契約を決めていけるように。
売場を清掃業者のクオリティーまでには維持できていなかったとしても、がんばってクリンリネスを維持しているセールスマンが、その売場でバンバン売っていけるように。
そんな、自分の得意ではない分野の仕事でも、逃げずに、手を抜かずに、おぼつかない手つきながらも、温かい想いを込めてやり遂げられる人を、傍から見た人は「まるで、やる気の塊みたいな人だ」と見えるのです。
そしてそんな人達が集まる企業を、お客様やライバル企業が見ると、こう思ってしまいます。
「あの企業はやる気がある人達が10割に見える」
「社長は一体、何をどうやったんだ?」
ビジネスにおいて
「やる気がある人は1~2割が限界なのでは?」
それはそうかもしれません。
もしかしたら1~2割以上に上げていける経営方法も存在するかもしれません。
存在はするけど、単にどの社長も発見できていない、実現できていないだけなのかもしれません。
しかし、なぜ「やる気がある人を増やしていきたい」のでしょうか?
それは手段であって、ゴールではありません。
もし、そのゴールが「会社の業績を他社よりも大きく伸ばしていきたい」なのであれば、それを達成できる手段はいくつもあります。
今回ご紹介した、働く人達誰もが「自分の得意ではない仕事でもやり抜こう」「徹底しなければ!」となっていく「マネジメントの仕組み」をつくってみようは、私がお薦めする方法ではありますが、これも手段のうちの1つにすぎません。
社長が目指すゴールに到達できる「道」はいくつもあります。
その「道」という選択肢は多いに越したことはありません。
重要なのは、どの「道」が社長にとって、得意な「道」なのか? そうでない「道」なのか?
「これだよこれ、この『道』こそ私に相応しい」
そんな「社長にピッタリの道」はきっとあるはずです。
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