仕組みづくりは現場のレベルに合わせて臨機応変にすべし!
「いや〜、何もないところから仕組みをつくるのって、根気のいることなのですね。あと、世間の常識から考えると、ビックリするくらいレベルの低いマニュアルになりそうなのですが…本当にこのようなもので大丈夫なのでしょうか?」──コンサルティングをはじめられた製造業の社長からのご相談です。
【仕組みづくりの基本はマニュアルから】
コンサルティングをさせていただくと、同じようなご相談をいただくことが結構あります。仕組みづくりの基本は、あなたの会社の現状に合ったマニュアルをつくることからはじまりますので、最初のマニュアルはレベルが低くて当たり前なのです。
現場で業務をしている担当者が、きちんと理解できるレベルまで落とし込んだマニュアルでなければ意味がありません。経営計画書と同じで、キレイに整っているだけでは活用されませんし、「お飾り」であればない方がマシです。
1.マニュアルとともに会社が成長する
マニュアルは一度つくったら終わりではありません。
活用していく中で、どんどんブラッシュアップしていきますし、担当者のレベルが上がってくれば当然にマニュアルのレベルも上がってくるものなのです。まさに、マニュアルとともに会社が成長していくのです。
私がご指導させていただく際には、「四則計算(足し算、引き算、掛け算、割り算)と日常会話ができる担当者向に、マニュアルをつくらせてください。」とお願いしています。
このように申し上げると、驚かれる社長もいらっしゃるのですが、マニュアルをつくる際には、一番習熟度・スキルの低い担当者に合わせなければなりません。そして、担当者のレベルの底上げができてきたら、それに合わせてマニュアルを改定していくのが正しいやり方なのです。
2.マニュアル作成のメリット・デメリット
そうすることで、どの従業員でも業務を正しくこなすことができるようになり、属人性を排除することができるのです。この属人性を排除することが、仕組みづくりの最重要ポイントであり、これができているのが大手企業、できていないのがわれわれ中小企業なのです。
はじめてマニュアルをつくるときには、それまで属人的になっていた業務内容を精査し、標準の業務内容を確定した上で、マニュアルに落とし込まなければなりませんので、結構大変な作業になります。このため、途中で従業員に反対されて頓挫するケースもあるくらいです。
でも、マニュアルを作成して、仕組みで会社を回せるようになってくると、誰でもその業務を担うことができるだけでなく、無駄な業務を撲滅することもできるので、非常に効率的に業務を行うことができるようになります。
さらに、社内の業務についてマニュアルという形の資産として残りますので、業績が拡大してグループ経営に移行することも簡単にできるようになります。
3.マニュアル作成で得られること
また、われわれ中小企業にありがちな、「○○さんがいないと、この業務が回らない…」、「この業務は特殊だから…」といったことがなくなるので、従業員が休みたいときに自由に休暇を取得させることができるようになります(長期休暇時の引き継ぎ方法についても、マニュアルに制定します)。
従業員全員が、無駄なく、自由に働ける環境を整える意味でも、マニュアルを作成することは非常に有意義です。最初は稚拙なものでもかまいませんので、何としてもつくらせるようにしてください。
最近では、DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されており、われわれ中小企業でも導入しなければならないと感じている社長が多いと思いますが、マニュアルを活用した仕組みづくりもできていないのであれば、DXは全く関係ありません。
そんな状態では、それ以前の「デジタライゼーション」や「デジタイゼーション」もできません。かえって、現場を混乱に陥れるだけですので、くれぐれもご留意ください。
なお、デジタル化の定義については、こちらのコラムを参考になさってください。https://www.musubu-consulting.jp/column17/
【仕組みづくりのポイント】
仕組みづくりは、会社を組織として効率的に回すための基盤です。そして、その仕組みを構築する際に最も重要なことは、現場のレベルに合わせて臨機応変に対応することです。
以下に、その理由と具体的な方法をご紹介します。
1. 現場の実態に即した仕組みが必要
仕組みづくりの目的は、現場の業務・作業を見える化&効率化し、組織全体の生産性を向上させることです。しかし、現場の実態を無視した仕組みを導入しても、本来の目的が達成されることはありません。現場のレベルに合わせて仕組みを調整することで、実際に活用されるものを作り上げることができます。
現場の実態に即した仕組みづくりは、以下のような具体的な手法やアプローチを通じて実現されます。
a. 現場の観察と情報収集
現場の業務・作業現場を直接観察し、従業員との対話を通じて情報を収集します。業務・作業のフロー、手順、問題点、改善の余地などを把握しましょう。また、定期的なミーティングやアンケート調査などを活用して、従業員の声を集めることも重要です。
b. 現場従業員の参加と意見の取り入れ
仕組みづくりには、現場の従業員が主体とならなければなりません。彼らの知識や経験を活かし、問題解決や改善策の提案に積極的に参加させましょう。チームミーティングやブレーンストーミングセッションなどを通じて、意見交換やアイデアの共有を促しましょう。
c. カスタマイズされたマニュアルの作成
一般的なマニュアルはあくまで参考として活用し、現場の特性に合わせたカスタマイズが必要です。業務フローや作業手順、品質管理のポイントなどを具体的に記載し、従業員がすぐに活用できる形式で提供しましょう。また、図解や写真などを使ってわかりやすくする工夫も大切です。
d. 実践とフィードバックのサイクル
仕組みを導入した後は、実際の業務・作業での試行錯誤とフィードバックを重視しましょう。従業員からの意見や改善提案を受け入れ、仕組みを改善していくプロセスを確立しましょう。継続的な評価と改善のサイクルを回すことで、より効果的な仕組みが構築されていきます。
e. 教育とトレーニングの充実
現場の従業員が仕組みを理解し、適切に活用できるようにするために、教育とトレーニングの充実が必要です。新入社員研修やOJT(On-the-Job Training)プログラムに加えて、以下のような取り組みを行うことが重要です。
★ロールプレイやシミュレーションの活用
現場の具体的な業務状況を再現し、従業員が実践的なトレーニングを受ける機会を提供します。実際の業務に近い形での練習や役割演じを通じて、仕組みの理解と適用力の向上を図ります。
★チーム内での知識共有
チームメンバー同士が持つ知識やノウハウを積極的に共有しましょう。定期的な勉強会や内部研修、ベストプラクティスの共有などを通じて、従業員全体のレベルアップを図ります。また、メンタリングやペアワークなど、上級者と初心者がお互いに学び合う機会も重要です。
★定期的なフォローアップとフィードバック
仕組みの効果や従業員の成果を定期的に評価し、フィードバックを行います。個別面談やグループディスカッションを通じて、従業員の意見や要望を受け止め、必要なサポートや改善策を提供します。また、成果や良い取り組みを共有し、従業員のモチベーションを高めることも重要です。
★外部の専門家やコンサルタントの活用
仕組みづくりにおいては、外部の専門家やコンサルタントの知見や経験を活用することも効果的です。業界や分野のベストプラクティスを取り入れたり、成功事例や失敗事例を学んだりすることで、より効果的な仕組みの構築が可能となります。
教育とトレーニングの充実は、現場の従業員が仕組みを理解し、活用できる力を身につけるための重要な要素です。継続的な学習と成長の機会を提供し、従業員の能力向上と仕組みへの関与を促進しましょう。
2. マニュアルは柔軟に作成する
仕組みづくりにおいては、マニュアルが欠かせません。しかし、世間の常識や一般的なマニュアルにこだわる必要はありません。現場の特性や業務のニーズに合わせて、独自のマニュアルを作成することが重要です。現場の作業だけでなく、考え方や意識の統一にも役立つマニュアルを作りましょう。
マニュアルの柔軟な作成は、現場のレベルに合わせた実際に活用できる形式や内容を提供するための重要な要素です。以下に具体的なアプローチをいくつか紹介します。
a. 現場のニーズと要求を把握する
現場の従業員や関係者とのコミュニケーションを通じて、彼らのニーズや要求を把握しましょう。作業の特性や課題、ベストプラクティスなどを確認し、マニュアルの内容やフォーマットに反映させるために、積極的な対話を行います。
b. 明確でわかりやすい表現を心掛ける
マニュアルは、誰でも理解しやすく、すぐに活用できるようにする必要があります。専門的な用語や専門知識を避け、分かりやすい言葉や図解、具体的な例を使って説明します。また、作業手順や手順の流れを明確に示し、ステップバイステップで追いやすい構成を心掛けましょう。
c. 適宜更新と改訂を行う
現場の状況や業務の変化に合わせて、マニュアルを適宜更新・改訂することが重要です。定期的なレビューやフィードバックの収集を行い、必要な情報の追加や削除、修正を行います。現場の従業員からの意見や改善提案を取り入れることで、より実践的で役立つマニュアルを作成することができます。
d. 複数の形式やメディアを活用する
マニュアルは、紙媒体だけでなく、デジタル媒体やオンラインプラットフォームなど、さまざまな形式やメディアで提供することができます。現場の特性や従業員の利便性を考慮し、最適な形式を選択しましょう。例えば、動画チュートリアルやインタラクティブなオンラインガイドなど、視覚的な情報やインタラクティブな要素を活用することで、より効果的なマニュアルを提供できます。
柔軟なカスタマイズや個別化の柔軟なカスタマイズや個別化の手法は、従業員の個々のニーズや能力に合わせたマニュアルの提供を可能にします。以下に具体的な方法をいくつか紹介します。
★マニュアルのモジュール化
マニュアルを複数のモジュールに分割し、必要な情報だけを組み合わせてカスタマイズできるようにします。従業員の役割や業務内容に応じて、必要なモジュールを選択して利用できるため、効率的な学習や活用が可能です。
★レベル別の情報提供
従業員のスキルや経験レベルに合わせて、マニュアルの情報をレベル別に提供します。初心者向けの基礎的な内容から上級者向けの応用的な情報まで、段階的に提供することで、従業員の成長に合わせた学習をサポートします。
★個別指導やコーチング
マニュアルだけでなく、個別の指導やコーチングを通じて、従業員の個々のニーズに応じたサポートを行います。マニュアルの内容を説明したり、実践的なトレーニングを提供したりすることで、従業員の理解度やスキルの向上を図ります。
★フィードバックと改善のサイクル
従業員からのフィードバックを収集し、マニュアルの改善や追加情報の提供を行います。従業員の意見や要望を取り入れることで、よりカスタマイズされたマニュアルを提供することができます。また、従業員の成果や活用の具体的な事例を共有することも、個別化の促進に役立ちます。
柔軟なカスタマイズや個別化の手法を取り入れることで、従業員一人ひとりのニーズに合わせたマニュアルの提供が可能となります。これにより、従業員の学習効果や仕事の効率性が向上し、現場のパフォーマンスを最大化することができます。
3. チームのまとまりを生む
仕組みづくりにおいて、マニュアルはチームのまとまりを生む効果もあります。現場の業務・作業や考え方を統一することで、全体の方向性や目標に対する理解を深めることができます。結果として、チームメンバー同士の連携やコミュニケーションが活性化し、効率的な業務遂行が可能になります。
現場のレベルに合わせた仕組みづくりを通じて、チーム全体が一丸となって目標に向かって働くことができます。
チームのまとまりを生むためには、以下の具体的な手法を取り入れることが重要です。
a. 共通のビジョンと目標の設定
チームメンバーが共有するビジョンや目標を設定しましょう。明確なビジョンはチームの方向性を示し、目標はチームメンバーに共通の目標意識を持たせます。ビジョンと目標はチームの統一感を高め、メンバーが協力し合う原動力となります。
b. 役割と責任の明確化
各メンバーの役割と責任を明確に定義しましょう。それぞれの得意分野や専門性を活かしながら、役割分担を明確にすることで、チーム全体の効率性が向上します。また、責任の明確化はメンバーの責任感を高め、協力と信頼の基盤を築きます。
c. コミュニケーションの促進
チーム内のコミュニケーションを活性化させましょう。定期的なミーティングや報告会、チーム内コミュニケーションツールの活用など、情報共有と意思疎通を重視しましょう。適切なフィードバックや意見交換を行うことで、メンバー同士のコミュニケーションを促進し、協力関係を築きます。
d. チームビルディング活動
チームビルディング活動を通じて、メンバー同士の信頼関係や連帯感を醸成しましょう。例えば、アウトドア活動やチームイベント、チームビルディングトレーニングなどを実施します。これにより、メンバー同士がお互いを理解し、チーム全体の結束力が高まります。
e. 成果の共有と評価
チームの成果を共有し、メンバーの貢献を評価しましょう。定期的な報告やプレゼンテーション、成果を反映した評価制度などを導入します。メンバーが自身の貢献を認められることでモチベーションが向上し、チーム全体のまとまりを生み出します。
これらの手法を組み合わせることで、チームメンバー同士の連携や協力関係を強化し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。チームのまとまりは、個々のメンバーが自身の役割や責任を理解し、共通の目標に向かって協力することから生まれます。また、オープンなコミュニケーションや信頼関係の構築も重要です。さらに、チームビルディング活動や成果の共有・評価を通じて、メンバーの結束力を高めることも大切です。チームのまとまりは日々の努力と継続的な取り組みが必要ですが、それによって生まれる効果は組織に大きな価値をもたらすことでしょう。
【まとめ】
仕組みづくりは現場のレベルに合わせて臨機応変に対応することが重要です。現場の実態を踏まえた柔軟なカスタマイズや個別化を行い、マニュアルや仕組みを現場で実際に活用できるレベルに落とし込んで作成することが求められます。
このためには、チームのまとまりを生むことや教育とトレーニングの充実が不可欠です。チームのまとまりを生むためには、共通のビジョンと目標の設定、役割と責任の明確化、コミュニケーションの促進、チームビルディング活動、成果の共有と評価が重要な要素となります。これらの要素を組み合わせることで、チームメンバー同士の連携や協力関係が高まり、組織全体のパフォーマンスが向上します。
また、教育とトレーニングの充実によって、従業員が仕組みを理解し、適切に活用できるようにすることが重要です。新入社員研修やOJTプログラム、外部講師やコンサルタントの活用、内部研修プログラム、オンライン教育プラットフォームの活用などを通じて、従業員の能力向上と成長を支援します。
さらに、柔軟なマニュアルの作成やカスタマイズも重要な要素です。
現場の実態に即した具体的な手順やツール、リソースの提供を行い、従業員が実際に活用できるマニュアルを作成することが必要です。従業員のフィードバックや改善のサイクルを回しながら、マニュアルの効果的な運用を図ることが求められます。
総括すると、仕組みづくりは現場のレベルに合わせて臨機応変に対応することと、チームのまとまりを生むこと、教育とトレーニングの充実、柔軟なマニュアルの作成が重要な要素となります。これらの取り組みによって、中小企業は効率的に組織を回し、競合的な市場で成功を収めることができます。
仕組みづくりは、中小企業経営者にとって非常に重要な課題であり、その効果は組織の生産性向上や競争力の向上に直結します。
現場のレベルに合わせて臨機応変に対応することは、現場の実態を把握し、具体的なニーズに応えるために必要不可欠です。マニュアルや仕組みは、単なるルールや手順書ではなく、現場で実際に役立つツールとして設計することが重要です。柔軟なカスタマイズや個別化を行うことで、従業員がスムーズに業務を遂行し、生産性を最大化することができます。
チームのまとまりを生むためには、共通のビジョンや目標の設定が重要です。チームメンバーが共通の目標に向かって協力し、役割と責任を明確化することで、チームの結束力が高まります。また、コミュニケーションの促進やチームビルディング活動を通じて、メンバー同士の信頼関係を構築し、協力と協力を促進することが重要です。成果の共有と評価によって、メンバーのモチベーションを高め、チームの成果を評価することも大切です。
教育とトレーニングの充実は、従業員の能力向上と成長に不可欠です。新入社員研修やOJTプログラム、外部講師やコンサルタントの活用、内部研修プログラム、オンライン教育プラットフォームの活用などを通じて、従業員の知識やスキルを向上させることが重要です。これにより、従業員は仕組みを適切に理解し、実践する能力を身につけることができます。
最後に、柔軟なマニュアルの作成は、従業員が仕組みを活用するための重要なツールです。マニュアルは常に改善され、現場の実態に合わせてアップデートされなければなりません。従業員のフィードバックと意見を積極的に収集し、改善のサイクルを回すことが重要なのです。従業員の実際の業務経験や課題に基づいてマニュアルを作成し、適宜修正や改善を行うことで、現場のニーズに合致した効果的なマニュアルを提供することができます。また、従業員がマニュアルを使いやすい形式でアクセスできるように、デジタル化やオンラインプラットフォームの活用なども検討するべきです。
柔軟なマニュアルの作成によって、従業員は仕組みをより効果的に理解し、実践することができます。マニュアルは組織内の共通の基準として機能し、従業員間の作業や考え方を統一する役割も果たします。これにより、チームのまとまりが生まれ、効率的な業務遂行と高品質な成果の提供が可能となります。
総じて、仕組みづくりは中小企業にとって成功を収めるための重要な要素です。現場のレベルに合わせて臨機応変に対応し、チームのまとまりを生み出し、教育とトレーニングの充実を図り、柔軟なマニュアルを作成することが必要です。これらの取り組みによって、中小企業は効率的かつ競争力のある組織を構築し、市場での成功を実現することができるようになります。
あなたは社長として、社内にどのような仕組みを構築しますか?
現場の実態を踏まえた柔軟なカスタマイズや個別化を行い、マニュアルや仕組みを現場で実際に活用できるレベルに落とし込んでください。 経営者であるあなたが積極的に関わり、属人性を排除した仕組みを構築することで、会社全体が仕組みで自動的に回る、強くて儲かる会社にしていきましょう。
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