社長は元気!でも、社員には元気がない。そんな会社で起きていることとは?
この日はM社のコンサルティングの第一回目です。気になる事象があったので会社を訪問することにしました。
事務所に入るとすぐに感じることができます。
M社長が言われていた通り、覇気がありません。
そこには10名ほどの社員がいましたが、その表情に明るさはありません。二人の若い社員がぼそぼそと話をしています。雰囲気が悪いというわけではありませんが、元気が無いのです。
M社長が、向こうから小走りにやってきました。
「先生、今日は、遠路はるばるありがとうございます!」
元気溌剌のM社長と覇気の無い社員、このギャップの理由を知りたかったのです。
変化することが、エネルギーレベルを高く保つコツです。
変化をするということは、エネルギーを消耗する行為です。
その消耗が、次のエネルギーを呼び起こします。
それも消耗した以上のエネルギーをです。
変化しないと消耗するエネルギーが無い分、楽(らく)そうに思えます。
しかし、実際には、消耗が無い分、次のエネルギーが呼び起されなくなります。
その結果、徐々にエネルギーを生み出す力もその器も小さくなっていくことになります。
これは、スポーツで考えると理解できます。
ランニングした直後は疲れていますが、回復後は、より気力も体力も漲ることになります。
逆に、走らなくなると、楽ですが気力も体力も衰えていくことになります。
変化するからこそ、エネルギーが生まれるのです。
エネルギーレベルが高い人とは、「変化し消耗することで、元気になる」というサイクルを持った人だと言えます。
これが我々の周囲にいるエネルギーレベルの高い人の正体です。
変化するからこそ、エネルギーレベルを高く保つことができます。
これは、個人だけでなく、組織にも当てはまります。
組織も変化するからこそ、エネルギーレベルを高く保つことができるのです。
世の元気のある会社は、絶えず変化をしています。変化しているからこそ元気のある組織なのです。そこに例外はありません。
変化していない、だけど元気である、そんな会社は存在し得ないのです。
冒頭のM社長は、非常にエネルギーレベルの高い人です。
やはり、絶えず新しいことに取り組んでおり、自分を変化させています。
読者やセミナーに参加することで新しい知識、新しい考え方に触れています。経営者の勉強会に参加し、立派な人に会っています。
海外視察にも行きます。そして、新たにロードバイクを始めました。
人一倍動いて、人一倍元気なのです。そして、自分を変えています。
M社長自身も、それを解っていました。
「新しいことに取り組んでいないと、自分はダメになります。それを課すようにしています。」
その一方で、M社の社員達には元気がありません。職場全体のエネルギーレベルは非常に低い状態にあるのです。
私が変化と元気の関係を説明すると、M社長は、すぐに気づきました。
「彼らは、変化していません。変化をしていないから、彼らの元気が無いのですね。」
M社は、社員を「変化の渦」に巻き込めていない会社だったのです。
何かの問題が起きると、M社長が駆け付け、確認し、指示を出します。仕組みの改善が必要な時には、その案の作成から導入までM社長が推進します。毎日の朝礼や会議を仕切るのもM社長です。
変化はすべて社長がやってくれます。社員は、毎日同じ作業を同じレベルでこなせばよいのです。
この環境の中で、社員には、変化を起こすことも、変化することも求められません。
やはり変化が無ければ、エネルギーは湧いてきません。益々それは下がることになります。
創業から今日まで15年、M社はそれでやってきたのです。
その状況に、M社長も何もしてこなかったわけではありません。彼らを変えるために、色々な取組みをしてきました。
社内で勉強会をしたり、外部の研修に行かせたりしました。また、会議では意見を強く求めました。改善提案も出させるようにしました。
しかし、それらが根本的な解決策になることはありませんでした。
彼らは、変わらないのです。
それどころか、M社長が「何かやる」と言うと、露骨では無いにしろ「抵抗感」という空気を醸し出すようになっていました。
その状況にM社長は、焦燥感を強く持つようになっていたのです。
これは、年商数億企業で非常に多いケースです。
年商数億の社長は、巻き込みが苦手なのです。
会社が小さい規模の時には、自分が変化し、会社の仕組みを変えていけばよかったのです。
しかし、これ以上の成長発展をするためにはそのままではいけません。
社員が変化し、社員の手によって仕組みが作り変えられる必要があります。
そうでなければ、社員が変化(成長)することもなく、会社の成長も遅々として進まなくなるのです。
何としても彼らを変化の渦に巻き込む必要があります。
そのためには、彼らに「変化」の仕事を与える必要があるのです。
しかし、その時に注意することがあります。
それは、その変化がコントロールされているということです。
それは、会社として、坦々と、今日も明日も、今期も来期も変わらずに、変化を続けている状態がつくられていなければなりません。
その仕組みを作っていくのです。
それは、複数の仕組みの繋がりによって成り立ちますが、その代表格はやはり経営計画書になります。正確に表現すれば「経営計画書の運用」となります。これこそが、最も効率良く、その状態を実現します。
経営計画書には「未来」のこと、すなわち「変化」について記載されています。
その正しく作られた経営計画書を会社として運用していくのです。
各部門、各班、そして、各担当が日常の業務をこなしながらも、業務の工夫や仕組みの改善に取り組んでいるという状況をつくりだすのです。
その運用をコントロールするのが、経営計画書であり、その運営になります。
正しいつくりの経営計画書とその正しい運用により、会社の変化をコントロールすることができます。
その中で、社員は変化を求められます。その結果、社員のエネルギーレベルは高い状態に保たれることになります。その結果、彼らも会社も成長し続けることになるのです。
その状況は、社長により作られた仕組みによって成されます。
くどい様ですが、間違っても、社長個人の力で、彼らに「変化」を与えようとしてはいけません。それをすれば、彼らは強い抵抗感を示すようになります。
それ以上に、その取組みの起点は、いつまでも社長に残ることになります。社長が言い出さないと変化が起きない、それではダメなのです。それでは、いつまでも社長は現場を離れることができなくなります。
このサイクルをつくりましょう。
社長が勉強し変化(成長)する。
会社としての変化の目標を決定する
変化をコントロールする仕組みにより、変化の命令を組織に伝える
その中で社員は、仕組みを「変化させる」ことを求められる
そのために社員は、変化(成長)する。
その結果、会社は成長発展する
その結果として、会社はエネルギーレベルの高い状態に保たれることになる
社長のエネルギーレベルと社員のエネルギーレベルに、乖離がある状態ではダメなのです。
社長の変化(成長)が、会社の変化(成長)に連動していない状態ではダメなのです。
社長が元気、社員も元気、その状態を仕組みでつくる
それを作り出すことができます。
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