従業員が自ら考え、対話し、行動する「自走する組織」づくりに必要なこととは?
「私の経営する会社とのギャップが大きすぎて、自走する組織のイメージがうまくできないのですが・・・理屈としては、十分に理解できますし、従業員が自ら考えて、(部門内や部門を縦断して)対話し、行動してくれれば、経営者として何も言うことはありません。でも、我が社の現実は、社長である私が動かなければ誰も動かないのです。どうすれば、自走する組織づくりができるようになるのでしょうか?」──とある卸売業を営む社長からのご相談です。
このようなご質問は、結構多くいただきます。
というのも、中小企業の社長の多くは、どの従業員よりも営業活動をして稼ぎ、より多くの事務処理を行い、トラブルが発生すればクレーム処理まで対応するという「スーパーマン」のような活躍をされています。
それに対して、従業員はというと、決まりきった事務・業務をこなすことだけで、率先して稼いだり、より多くの事務処理を行なったりはしません。トラブルが発生すれば、社長に助けを求めて終わり。なぜ、そのようなトラブルが起きたのか、どのように事務・業務を改善すればトラブルを撲滅できるのかなどは考えることもないというのが一般的なのではないでしょうか?
ご相談いただいた社長のような状況とは真逆の、従業員が自ら考え、対話し、行動する組織を「自走する組織」と呼んでいます。当社では、営業利益率12%超を実現するための儲かるビジネスモデルと、自走する組織づくりをしたい企業を支援させていただいております。
儲かるビジネスモデルについては、日々経営に携わっておられる社長なのでイメージしやすいのですが、自走する組織となると・・・
自走する組織を一言で表現すると、「従業員がやるべき事務・業務が明確になっており、仕事に人が割り当てられていることで、さらに効率的なやり方などがないかを自ら考え、その考え方で実際の効果が得られるのか、関連する部署に迷惑をかけないか、職場の同僚などと対話・相談し、実際に行動していく組織」となります。
こういう話をすると、「うちの会社で、そんな夢見たいなこと、できるわけないですよ!?」という社長が多いのですが、きちんと社内環境を整えれば十分にできるのです。
【「自走する組織」づくりに必要な3大ポイント】
次の3つが、自走する組織づくりに必要なことです。
①心理的安全性の確保
②従業員の心理的欲求を満たす
③目的(=Why)、目標(=What)、手段(=How)の共有
では、順番に内容を確認していきましょう。
①「心理的安全性の確保」が最重要!
一番のポイントは、「心理的安全性の確保」です。
これがなければ、いくら頑張っても自走する組織づくりはできません!
「心理的安全性」とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のことです。言葉で表すと、簡単そうですが、実際に「心理的安全性の確保」をしようとするとなかなか難しいものです。
組織行動学を研究するエドモンドソンが1999年に提唱した心理学用語で、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義しています。
子供にもわかりやすく説明するとすれば、「北風と太陽」といったところでしょうか?!
北風のように、階層別のランクづけをおこない、権限を規定することで従業員を牽制、トップダウンで管理することで、従業員を「経営者の思い通り」に動かそうとしても従業員(特にZ世代)は動きません。
太陽のように、「心理的安全性」を確保することで、従業員が組織の中で自分の考えや気持ちを自由に発言でき、「こんなアイデアが浮かんだけど、どうかな?」など自由闊達な雰囲気の中で、チームワークも自然と強くなっていくのです。
この「心理的安全性」については、Google社が2012~2015年までの4年間に行った生産性向上のためのプロジェクト「プロジェクトアリストテレス」で、その有効性が検証されています。
このプロジェクトの研究成果で、チームや組織の生産性向上には心理的安全性が重要であるということが結論付けられたことにより、世界中の企業が心理的安全性に注目するようになりました。最近では、心理的安全性についての書籍も多数出版されるようになってきましたので、ご参考になさってください。
②従業員の心理的欲求を充足する
時代は着実に変わってきています。
会社の最高経営責任者であるあなたが、本気で従業員がやる気に満ちる場をつくるために努力するのか否か?!
全従業員があなたの言動を見ています。そして、本気で会社を変えるつもりなのかそうでないのか、動物的感覚で判断し、判断した結果が「口先だけ」ということになれば、従業員の立場としては危なすぎて何もしないという結論になるのは当然です。
太陽のように、「心理的安全性」を確保するとともに、人間の基本的な心理的欲求である自律性(=自分自身で選択して行動したい)、有能感(=自分が有能であると感じたい)、関係性(=人と理解しあい、支えあっていると感じたい)の3つの心理的欲求が満たすことで、従業員の「やりたいという強い内発的な動機」をつくりだすことで、はじめて若い世代は動くのです。
こういう組織論をお話しすると、「社長として、従業員の状況やモチベーションはきちんと把握している自信がある。」とおっしゃる社長が多いのですが、社長であるあなた以上に、従業員はあなたのことを見ています。
なぜなら、社長であるあなたよりも決定的に弱い立場なので、社長の状況を常に確認・把握していなければ、とても安心できないからです。
きちんと働いているのかどうか、上司が部下を管理する手立てがないので、パソコンにちゃんと向かって入力している時間を計測してみたり、メールのやり取りの相手が誰かを特定してみたり、必要もないのに会議を開催したり、報告を求めたり・・・などということは、金輪際なさらないようにしてください。
③目的(=Why)、目標(=What)、手段(=How)を共有する
そして、社長であるあなたが考える理想の会社にするために、「何のために(=目的:Why)」 、「何を目指して(=目標:What)」、「どのように達成するか(=手段:How)」を全従業員と共有することで、自ら考え・対話・自走するようになるのです。
これができるようになってくると、従業員が会社組織での自分の役割を全うするために、必要となる役職・責務を担うようになります。そうすることが、効率的であると認識するからであり、社長であるあなたが「北風と太陽」の「太陽」となって、そのように仕向けなければならないのです。
これができれば、従業員がこれまで以上に活躍できる組織になり、飛躍的な成長・発展をしていくことが可能になります。
従業員が活躍できる組織づくりのポイントは以上3つとなりますので、是非実践してみてください。
この3大ポイントをおさえて、社長であるあなたが「北風と太陽」の「太陽」を実践することで、従業員が自ら考え・対話・自走する組織をつくりあげることができるのです。
びっくりするくらいの効果がありますので、是非ともチャレンジしてみてください。
【これまでの組織との違いについて】
これまでのマネジメントは、大量生産・大量消費を担うため、生産設備をフル稼働させ、いかに労働生産性を向上させるかが重要でした。「社長の思い通り」に従業員を動かすことが必須であり、計画・牽制・管理する組織が組織として求められていたのです。
「社長の思い通り」に従業員を動かすために、階層別のランクづけを行うだけでなく、権限を規定することで従業員を牽制、トップダウンで管理することで、従業員を「経営者の思い通り」に動かすことができる組織を目指してきました。
このため、滅私奉公して馬車馬のように働くことが美徳とされ、日本独自の終身雇用などと相まって「企業戦士」という言葉が持て囃されました。テレビコマーシャルでも、「24時間戦えますか?!」というキャッチコピーが使われていたくらいです・・・
ところが、現代社会では知識労働者が最重要の資産となっており、従業員全体の労働生産性ではなく、知的生産性をいかにして向上させるかが会社発展の鍵を握っています。
やる気に満ちた従業員の生産性は、満足していない従業員の3倍というデータがあることからも分かる通り、21世紀に求められる組織モデルは、従業員が「やる気に満ちる職場・組織をつくる」ことです。
現代に求められているのは、従業員がやる気に満ちて自ら考え・対話・自走する組織なのです。
従業員評価の基準をこれまでのような業績などの成果ではなく、自ら考え、動けるようになるようにすること、そして従業員の心理的安全性を確保することにより顧客第一主義を実現する土台をつくらなければならないのです。
その上で、社長であるあなたが「社長の夢」を実現するため、「何のために(=目的:Why)」 、「何を目指して(=目標:What)」、「どのように達成するか(=手段:How)」を全従業員と共有することで、組織全体で対話を促しながら、従業員の幸せを追求することで自走する組織をつくり上げることができるのです。
【まとめ】
これまでのマネジメントは産業革命後のものがベース。
大量生産・大量消費を担うため、「社長の思い通り」に従業員を動かすことが必須であり、計画・牽制・管理する組織が求められ、組織生産設備をフル稼働させ、いかに労働生産性を向上させるかが重要視されてきた。
ITなどの情報革命が起こっている現代では、知的生産性をいかにして向上させるかが会社発展の鍵となっており、従業員がやる気に満ちて自ら考え・対話・自走する組織という、これまでと正反対の組織が求められています。
180度の方向転換をしなければならないため、社長であるあなたが先頭に立って変革を起こさなければ、何も変わりません。
従業員に変革を求めるには、変革しても大丈夫であるという「心理的安全性」が確保されていなければ、いつクビにされるかわからないので怖くて何もできなくて当たり前なのです。
社長として、心理的安全性を確保するとともに、従業員の心理的欲求である自律性(=自分自身で選択して行動したい)、有能感(=自分が有能であると感じたい)、関係性(=人と理解しあい、支えあっていると感じたい)の3つの心理的欲求を満たすようにしなければ、従業員はやる気になりません。
心理的安全性を確保し、従業員の心理的欲求を満たした上で、社長であるあなたが「社長の夢」を実現するため、「何のために(=目的:Why)」 、「何を目指して(=目標:What)」、「どのように達成するか(=手段:How)」を全従業員と共有することで、組織全体で対話を促しながら、従業員の幸せを追求することで自走する組織をつくり上げることができるのです。
そして、現在の会社で自走する組織づくりができるようになれば、新規事業で新しく子会社を設立したり、M&Aで企業買収することで、グループ経営に転換することも十分可能になってきます。
グループ経営に転換することで、これまでの数倍から数十倍の規模に成長できるようになり、現在の売上高が10億円規模であれば、50億円から100億円規模のグループ企業に成長させることが視野に入ってくるのです。
あなたは社長として、どのように自走する組織づくりをされようとしていますか?
自走する組織づくりに必要な3大ポイントを、最高経営責任者として実践していただくことで、従業員とともに成長することで、環境の変化にも強く儲かる会社にしていきましょう。
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