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第272話:社員を動かそうとするから動かない

SPECIAL

キラーサービス(特別対応の標準化)コンサルタント

株式会社キラーサービス研究所

代表取締役 

経営革新コンサルタント。イレギュラー対応を標準化することで、ライバル不在で儲かる、「特別ビジネス」をつくりあげる専門家。倒産状態に陥った企業の経営再建から、成長企業の新規事業立ち上げまで、様々なステージにある数多くの企業を支援。イレギュラー対応を仕組みで廻して独自の市場をつくりだす画期的手法に、多くの経営者から絶大な評価を集める注目のコンサルタント。

クライアント先の社長から「動きの鈍いうちの社員に火をつけてほしい」と言われることがよくあります。

「社長の私がいくらケツを叩いても彼らは一向に動かない。中川さんからガツンと言ってやってください」と。

こういった社長からの依頼を真にうけて本当にガツンとやってしまうとえらいことになります。

会社のトップであり自分の雇い主である社長から言われても社員の方が動けていないのにはそれなりの理由があるはずですし、そもそも「社長がどっかから連れてきたコンサル」にいきなりガツンと言われても反発心しか生まれないことでしょう。

そもそも、人が他人を動かせるはずもありません。リーダーというと人を引っ張るのが仕事のように捉えられがちですが、人を直線的に引っ張ろうとしても作用反作用の法則で同じ力で引っ張り返されるだけです。

「気合いだ!気合いだ!気合いだ!」と言って彼らと気を合わせられるはずもなく(そんなことは言いませんが 笑)、とにかく人を力でなんとかしようとするのは愚策です。

とはいえ「彼らが動くまで待つ」というのでは能がないですし、おそらく私はクビになってしまいますから、事業を伸ばすための現象を起こさねばなりません。

ではどうするかというと、彼らを動かすのではなく、彼らの動きをせき止めているものをひたすら探っていくことになります。

その「彼らにとってブレーキとなっているもの」がわかれば、あとはそれを消滅させるロジックを考えるだけです。

そういった「ブレーキを取り除くロジック」を見つけられればもう勝ったも同然で(勝ち負けではありませんが…)、そのロジックを基軸としたシンプルな戦略ストーリーを描くことができれば、彼らが動き出す準備は整います。

現に、うまくいくときは、そういった戦略を打ち出すと、現場の社員の表情がスッとまとまった感じになります。「あー、そっか、なるほど…」「それだったらいけるんじゃないか?」と、彼らの重い腰がむずむずしてくる感じになります。

そうなったらしめたものです。彼らを引っ張るのではなく、彼らが動きたい方向にちょこんと押すだけで、彼らはあれよあれよと(いい方向に)転がっていきます。自転するというわけです。

そう、動かすのではなく、「転がす」です。そこには重力が働いています。彼らを止めているものを崩してあげると、力を入れなくてもコロコロと組織が回り出すのです。

そして、どの方向に重力が働くかの答えは、その事業、その組織によって異なります。そこが経営はアートだと言われるゆえんであり、我々コンサルタントの腕の見せどころでもあります。

まとめると、社長が外部コンサルに伝えるべきは、「彼らにガツンと言ってやってください」ではなく「彼らをコロッと転がしてやってください」が正解です(笑)。

 

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