経営者として一段上を目指すと言うこと
コンサルタントとして創業者社長と話していると、ちょっと不思議な既視感めいた感覚に襲われることがあります。それは、社長の多くがステップアップの指標として意識する売り上げ規模のイメージが妙に共通している、ということです。ざっくり言うと、売上高が10億円の会社の社長は数年先の到達目標として30億円、30億円の社長は100億円を強く意識していると言う感覚でしょうか。
この感覚はもしかしたらもう少し普遍性のあるものなのかもしれないと思います。たとえば売上1億は、売れっ子の個人事業主が到達できる金額だと言われることがありますが、よほどの売り物がない限り、売上3億は仲間がいないと厳しい水準でしょう。そこから売上10億は、社内組織の充実が不可避になります。さらに30億を目指そうとするなら事業の多角化が王道と言えますし、100億の水準に到達しようとするなら人材の強化や技術力の向上が不可欠になってきます。そこから上は上場を目指すという展開が見えてくると思うのですが、前後して意識される課題は決まって海外進出だったりするわけです。
あくなき成長へのこだわり、は経営者として不可欠の資質だと思います。他方で人口減少や高齢化など、特に国内市場の側は成長しないことが当たり前の世の中になってくる中においては、売上高のグラフだけでは見えない成長機会までを意識する必要性があることをご認識いただきたいと思います。
見えない成長機会とは、縮小する市場から「あなたの会社こそはこの先も是非存続してください。」と認められることを意味します。そうすることで、認められていない企業に比べて確実に優位なポジションを占めることになるのですが、そうなるカギはたとえば従業員の幸福であり、環境や資源循環への貢献であり、それらにつながる情報公開であり社会への提案だったりするわけです。
社会への義務は納税することでしっかりと果たしている、それ以上の関りはなくても良い、という伝統的な考え方は、縮小社会において相対的に存在感を高める企業の経営者としては既に許されるものでなくなっていることを改めて認識いただきたいと思います。従業員の賃上げや、子育て支援に取り組む姿勢や、脱炭素へ向けた投資を積極的に進めるなどの意思決定も市場からの支持を取り付けることにつながるものなのです。
これら見えない成長機会のことをオルタナティブ(=替わりの)経済と呼ぶことがあります。考え方として良く知られているのが国連による持続的な開発目標SDGsですが、社会的インパクト経営や循環経済(サーキュラーエコノミー)、社会善を目指す企業の認証制度であるB-コープや金融業界で始まったGABV(価値を大切にする銀行のグローバルアライアンス)などの動きもみな震源地を同じくするものだと言うことができます。
これからの社会において、経営者として一段上を目指そうとするからには、売上高目標を高く置くことも重要ですが、オルタナティブ経済への目配りを忘れないことで市場からの受容性を高められるようになるという変化を意識することも同じように重要な課題となることを理解頂きたいと思います。
社会と市場からの受容性への意識を高めようとする経営者を、当社は常に全力で応援しています。
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