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専門家と上手に付き合うコツ

SPECIAL

「信託」活用コンサルタント

株式会社日本トラストコンサルティング

代表取締役 

オーナー社長を対象に、「信託」を活用した事業承継や財産保全、さまざまな金融的打ち手を指南する専門家。経営的な意向と社長個人の意向をくみ取り、信託ならではの手法を駆使して安心と安全の体制をさずけてくれる…と定評。

「社長が分からなくなるのも無理もないですよね」と経営コンサルタントのCさん。懇親会の席上で、ポロリと本音が漏れました。

 

1.専門家の数だけ正解がある

中小企業の経営支援をしているCさんは、地方銀行の支店長などを経験した後、コンサルタントとして独立しました。偶然にも同じセミナーに参加していたので、終了後に仲間と一緒に飲み会です。四方山話をしていた時に、興味深い話がありました。

 Cさんが支援先企業の社長と話していた時のことです。打ち合わせが終わる頃になって、社長さんがポツリと一言。

「銀行の提案も、税理士の言っていることも正直なところよく分からない。」

取引銀行から提案された内容がしっくりこなかったので、顧問の税理士に連絡してみたそうです。税理士としては銀行の提案に反対みたいだけど、どうにも理由がはっきりしない。モヤモヤが解消されないままになっている、ということでした。

よく聞く話ですし、提案営業の「あるある」ですね。ちなみに、銀行業界にいたときに、同じ経験をしてます。業界事情を良く知るCさんは事情を聞いて、社長の質問に本音で回答。打ち合わせが更に1時間伸びたそうです。

銀行としてもお客様のお役に立つ提案をして、ビジネスメリット得るのは営業の基本でしょう。ただ、自社の商品、サービスを売るための手段としてのコンサルティング営業になることもあります。

社長にしてみれば、金融機関や専門家(あるいは両者)から「あなたの課題はこれで、こういう解決策はどうか?」と言われれば、心が揺れます。提案の裏を取る(確認をする)ために、専門家に確認したら、また違うことを言われてしまうと混乱しますよね。

 

2.そもそも適切な課題設定だったか?

課題や問題に対応する専門家の世界には「解のきまっている王道」と「状況によって解の変わる微妙ゾーン」があります。人間の活動がネット社会に移行するにつれ、「王道」情報の価値は減少したように見えます。

そして、専門家の間でも見解が分かれる可能性がある「微妙ゾーン」が、専門家としての腕の見せ所ですが、ここで2つのポイントがあります。一つは、問題の所在が正しく診断されているか、です。もう一つが、相談された専門家が適切か、です。

この点については、お医者さんの世界がわかりやすいですね。まず、患者となる人は体調不良や、健康診断などで問題点を認識します。次に、必要に応じて精密検査をして、その結果を受けて、専門の医師が対応することになります。

医者の世界ではセカンドオピニオンは当たり前のものになっていますし、そもそもセカンドオピニオンのための情報も膨大だったりします。情報が多い故に選択が難しくなっているのではないでしょうか。

Cさんが相談を受けた件に戻ります。金融機関の提案書には、課題が設定されており、その解決策が提案されています。ここでの問題は、そもそも課題の前提と社長の考えとの間に、そもそもずれがあったということです。

一見、魅力的な提案であっても、結果として会社経営や家族に悪影響を与えることもあります。特に、同族会社(ファミリービジネス)は「経営」「家族」「株主」というサブシステムが複雑に絡み合う構造なので、注意が必要ですね。

 

3.専門家と上手に付き合う

何かの課題に対するソリューションを求めるよりも確認すべきことがあります。繰り返しになりますが、課題設定が適切か、課題に対応する人が適任か、ということです。

医師の世界ほどではありませんが、税理士の世界でも専門があります。大きく分ければ、フローにかかる税金(所得税、法人税、消費税など)と、ストックに係る税金(相続税・贈与税、固定資産税など)に分かれます。さらに、業種、業態などにより、さらに専門は細分化されます。

実は、税金の専門家に相談したはずが、実は専門外だった、ということが起きています。法人の申告が中心の税理士からすると資産税の世界は専門外であっても、オーナー社長に「分かりません!」とは言いづらいものです。

結果として、当たらんとも遠からず的な回答になりますので、社長の痒いところに手が届きません。だからこそ、専門に応じた専門家必要という話になるのですが、実はここで話は終わりません。

専門家は専門分野のプロです。専門分野のベスト尽くすのが本来の役割であって、専門外のことは考慮外です。つまり、専門分野内の部分最適であって、専門分野外のことも含めた全体最適について十分に考慮されていない可能性があります。

医者の世界でも「手術は成功。患者は死亡。」という譬え話があります。「無理に手術をするよりも、対処療法的な…」と全体観を持って診療をしてくれる「一般医」とか「かかりつけ医」がいてくれた方が良いですよね。

部分をいきなり取り出して、処理するのではなく、全体観を持って課題を捉える。次に、対応を検討する。対応方法の王道を踏まえて、微妙ゾーンは専門家の意見を求める、という流れです。

医師の世界でも総合診療医という考え方がありますから、士業の世界でも各士業を取りまとめるファシリテーターの役割を担う人が必要になります。海外では、「プロセスコンサルタント」という分野が確立されています。

 

<まとめ>

同族会社(ファミリービジネス)というシステムは、「経営」「家族」「株主」の3つのサブシステムで構成されます。この全体観の中に課題をどう位置づけるのか、という見方をするのも一案だと考えます。

税務面のメリットを考えて採用した対策が、思わぬ結果とつながることがあります。経営にダメージを与えてしまう、いざ相続となった時に親族の間で揉めてしまう、なども良くある話です。時として、良い提案こそ対策時に多少の税金は出てしまうものです。

オーナー経営者にとって必要なのは、そもそもの現状の課題を整理してくれる総合診療医のような存在ではないでしょうか。海外では職業として確立しているプロセスコンサルタントという役割が求められていると感じています。

オーナー社長が専門的な問題に一から対応することはお勧めできません。必要なことは、ファミリーとビジネスに関する課題(多くの課題は大なり小なり両者に影響を与えることになります)を相談できるパートナーではないでしょうか。

 

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