同族経営ほど事業承継で迷走しやすい理由
後継社長さんにとって、特に頭を悩まされる問題は、事業承継でしょう。
事業承継は、非常にデリケートな問題です。お金と人間関係が絡み合っていますから、うかつに周囲に相談することもできません。
地方都市の場合、あっという間に噂が噂を呼んで、収集がつかなくなることも往々にしてあります。とはいえ、誰にも相談せずに、問題を放置しておくわけにもいきません。
そのため後継社長は、何年も悩み続けるケースが多いのです。
まず「誰に相談するか?」が最初のキーポイントになります。ここで致命的なミスをしてしまうと、後々取り返しのつかない事態に陥ります。
例えば、税理士さんに相談すれば、税金中心のアドバイスになりますし、銀行の担当者に相談すれば、自行の商品・サービスの販売に繋がる話になりがちです。
もちろん全ての税理士さんや銀行の担当者がそうとは限りません。しかし、それぞれの得意分野の範囲内での話になりがちなことや、自社の商品・サービスの販売に繋げようと考えることも、ある意味自然な話です。
そのため、多くの社長さんが「自分にとって、最善の方法は何か?」がわからず、「本当の意味で第三者の目線に立って、100%社長の味方でアドバイスをする専門家」を探し求めています。
なぜなら、早い段階で問題の火種を解決しておかないと、船頭多くして船山登る・・・の状態に陥ってしまいがちだからです。この場合の「船頭」とは、他の同族ファミリー、外部の税理士・銀行などの利害関係者など、多岐にわたります。
では、なぜ「船頭多くして、船山登る」の状態に陥ってしまうのでしょう?
一番の問題点として、事業承継の時に最も重要な「優先順位」を間違えてしまうことが挙げられます。
同族経営にとって、最も重要なことを「事業の永続」つまり「潰れない会社づくり」と定義するならば、財務の盤石化は当然、加えて「社長のオーナーシップ」が欠かせません。
オーナーシップとは、自分の意思で会社の意思決定が出来るか…です。そのため、所有権である「株式」が大変重要なものになります。
理想は、社長が全株式を所有して、オーナーシップを発揮できる状態にすることです。ところが、多くの場合、株式は分散し、親族や兄弟が平等に株式を保有しています。
社長がオーナーシップを発揮できない場合、社長がM&Aなどの重要な意思決定をしようとしても、親族や兄弟が反対したり、意見が割れたりして、話が進みません。
厄介なのが、社長がオーナーシップを発揮できない状態は、「有事」の時に表面化する点です。
「有事」の時は、既に「時、既に遅し」の状態です。このタイミングで何か手を打とうと思っても、前に進むことは、残念ながらほぼないのです。
ですから、「有事」になる前に問題の火種を先に潰しておくことが重要です。そして、その問題の「優先順位」と「着手の順番」を間違えないことが成功の秘訣です。
例えば、代表取締役であったとしても、人事権を掌握するために最低限必要な持ち株割合を社長自らが掌握していなければ、いつでも代表取締役の役職を第三者に奪われる可能性があります。
あるいは、少ない持ち株数でも、親族で株式を持ちあっていたとしたら、いつ親族から高額の買い取り請求が来てもおかしくありません。その時になってから・・・では、遅いのです。
大切なことは、先代社長がお元気なうちに、親族間の関係が良好なうちに、先手を打っておくことです。
社長の仕事は、強く永く続く会社づくりをすることです。
あなたは今、社長としてどんな未来をつくりたいですか?
ダイヤモンド財務®コンサルタント 舘野 愛
コラムの更新をお知らせします!
コラムはいかがでしたか? 下記よりメールアドレスをご登録いただくと、更新時にご案内をお届けします(解除は随時可能です)。ぜひ、ご登録ください。