CES視察 VR/AR/MRはビジネス領域に到達するのか?
今回も1月に視察したCESの話題を続けます。CESは何しろ非常に広いビジネス領域において膨大な展示があふれかえっているので、一回視察に行くと話題(持ちネタ)が膨れ上がります。そんなこともあって、最新のトレンドを皆さんになるべく細かく紹介させて頂きたいという思いも強く、CESネタでのコラムが続きそうです。
前置きはともかく、今回のお話はVR/AR/MRです。これらの2文字略語になれていない方にも理解頂きたいので、ちょっと簡単に解説すると・・・
VR:Virtual Reality、つまり仮想現実の略語です。両目を覆うゴーグルをかけて遊ぶゲームがテレビでも流れていますが、視覚的に(もしくは耳にもイヤフォンを付ければ視聴覚的に)コンピュータが創り出した世界の中に入り込むことになります。
AR:Augmented Reality、つまり拡張現実の略です。身近で良い例が2016年頃から流行しているゲーム「ポケモンGO」です。スマホのカメラで風景を写すと、その中にキャラクターが現れ、そのキャラクターと対応するゲームです。現実に対してコンピュータ画像を拡張するので、このような名称が使われています。現実を見聞きできる状態なので、VRとは明らかに違い、没入感はありません。
MR:Mixed Reality、つまり複合現実の略です。ARが「現実の様子にコンピュータの絵が追加されている」というもので、ペタペタと貼られているイメージになりますが、MRでは「コンピュータが描いた絵が、現実の中に三次元で溶け込んでいる」という表現ができるものです。本当はそこには無いものが、あたかもあるように見えるというものです。
さて、これらの技術は当然日進月歩で、それぞれの商品が多数展示されていましたが、今回私は特にMRの発展や応用に目が行きました。というのも、何らかのデバイスを両目部分に装着することになるので、身体への負担がどうしても発生してしまうものですが、MRのデバイスについては「より自然に装着できる」様に改善された商品の展示が多かったからです。
例えば、TCLというメーカーのめがね型端末。少し古くさいめがねの様な印象のサンプルでしたが、レンズ部分はほぼ透明ですし、その中に投影される画像も空中にぽっかりと浮いている様な表示品質で、視覚的に負担を感じません。「まだ重い」という印象もありますが、前世代のものに比べると改善がかなり進んでいることを実感しました。この様なMR端末は両手が空きますので、両手作業をしている時に作業手順を表示したり、その解説の中に画像や動画を取り混ぜて作業ミスを無くす様に工夫することも可能となります。人間がどこを見ているか、おおよそは見当がつきますので、それに応じたコンテンツの表示も可能です。現在各社開発中ですが、このようなめがね型端末に、小型化した視線解析機能を追加することができれば、動く物体をどのように目が追っているかの情報をソフトウェアが得ることができ、それに応じた情報を表示することも可能となり、「今注視している、そのネジを締める」といったピンポイントの作業指示も可能になります。ここまで来れば、工場作業や現場作業の紙マニュアルはほぼ不要になりそうですね。
また、少し乱暴ですが、広い意味でのMRという意味で、裸眼ホログラムに関する展示も目を引きました。写真のデモは丁度公衆電話ボックスを少し小型化した様な箱状のディスプレイで、投影されている人物が話しをしているのですが、上部にあるカメラで見ている人の姿を認識しています。つまり、店頭に置いておけば、通りがかりの人に目線を送りながら(目線をはずすことなく)売り込み続けることが可能となるわけです。実際このデモを見た時、私も単純に通りがかっただけなのですが、目線をずっと送ってくるので、ちょっとドギマギしてしまいました。人間、目線を送り続けられると、無視できなくなるものです。店への呼び込みとしては結構使えるのではないかと思います。
店頭デバイスとしては、日本の展示会でも見ることができるファン型のホログラム装置も、かなり巨大化しスムーズに見えるものが展示されていました。扇風機の様なファンを回し、そこに映像を投影することで空中に浮かんでいる立体像に見せる、というものです。数年前に始めて見たものは小さくおもちゃの様なものでしたが、CESで見たものはまるで別モノでした。これもかなり目立ちますので、店頭展示で目を引くことは間違い無いでしょう。
後半少し脱線気味でしたが、軽量なめがね型端末や裸眼など、目に負担をかけないMRやホログラムは、近い将来広く普及するだろう、と確信するような展示が多く見かけられました。そもそもデバイスの値段は低く抑制できる原理のものですから、中小企業の用途としても色々と考えることができる様になってきていると思います。展示や現場活用などで「手の届く解決策」に繋がる用途が必ず見つかるはずです。このような新しいデバイスに「試しに飛びついてみる」ことも、企業のデジタル化の為には良いチャレンジなのです。
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